上 下
103 / 162
1学期編 ~中間試験~

第54話

しおりを挟む
昼食を終えた俺たちは、再び2手に分かれて勉強を開始した。
俺は午前中に参加していなかったので何処までやったのか確認しつつ、一緒に勉強をしている舞依と瑞希の調子を見て進めた。
2人のペースは特に問題なく、むしろ午前中の分も巻き返す勢いも見られたため、当初の予定よりは早いペースで一周を終えることができた。

「よし、これで一通り範囲を浅くだが網羅で来たな。」
「…うん……、終わった。」
「…つ、疲れた~。まさか2日間で本当に終えるなんて思ってなかったよ。」
「2人は少し休憩していていいぞ。」

俺がそう声をかけると、瑞希はその場で後ろに倒れこみそのまま目を瞑って休んでいた。
舞依は一息つくと、瑞希のとなりで同じように休んでいた。
どうやら一緒に勉強をしていた時間も長いということで距離もだいぶ近づいていたようだ。

俺たちのグループは終わったが、まだ千春たちのグループは時間がかかりそうだった。
というのも、やはり正悟に時間がかかってしまっているからだ。
ペースとしては問題ないのだが、正悟が疑問を抱える頻度が多いのでその度に止まってしまうのだ。

「どうだ、調子は?」
「まだかかりそうね。」
「…悪い、俺が足を引っ張っているのはわかっているんだけどよ。」
「誰にでも得手不得手はあるから気にするな。」
「ああ…。」
「皐月はどうだ?」
「私は問題ないわ。」
「皐月さんは蒼雪君に苦手なところを見てもらってもいいのよ?本来はそれが目的だったはずでしょうし。」
「いいのよ。ここまで来たから最後までやりましょう?」
「わかったわ。」
「邪魔をしたようだな。こっちは休憩が終わり次第それぞれの苦手分野に手を付け始める。」
「よろしくね。」


俺は千春たちの進行の確認を終えると、舞依と瑞希が休憩していることを確認して自分の部屋に戻った。

そして、机からこれから必要になるだろう教科書類を手に取った。

(何が原因で俺は倒れたのだろうか?)

俺は机から教科書を取る時に目に入ったベッドを見て俺は今朝のことを思い返していた。
ベッドは意識を取り戻したときにそのまま降りてきてしまったので整えてられていなかった。
いつもなら整えてからリビングへと移動をしているので、なぜかと考えた時に今朝を思い出すきっかけになってしまった。

(皐月から俺の行動を諭されてどうふるまうべきか考えて、それで…。)

しばらくその場で考えこんだが、その時の自分がどのような思考に至ったのか思い出すことはできなかった。

「あれ、ここにいたんだ。ノックもしないでごめんね。」

俺の姿が見えなかったことで、瑞希は俺がどこに行ったのだろうか探しに来たようだった。

「いや、何も言わずに移動をしていたんだ。気にしなくていい。」
「うん。今朝みたいなこともあって心配になって。けど、なんともないならよかった。私も舞依も休憩したからもう大丈夫だよ?」
「わかった。すぐに行こう。」

俺は1度手に取った教科書類を机に置いてからベッドを整えて、教科書類を忘れることなく持ってリビングへと戻った。


リビングへ戻ると舞依と瑞希は準備万端という様子で待っていた。

「お待たせ。」
「ううん、大丈夫だよ。私たちが教えてもらう側だしね。」
「…蒼雪はゆっくりでもいい。」

俺は2人の苦手としているところを重点的に教え始めた。

勉強を再開して1時間が経つと、千春たちの方も1周が終わったようで休み始めていた。
そこから少しして皐月も合流して、代わりに舞依が正悟の面倒を見始めた。

千春は夕飯の用意を早くから始めてくれたので、俺は2人に集中して教えることができた。


「夕飯の用意ができたわ。そろそろテーブルの上を片付けて手伝ってくれないかしら?」

勉強をしているさなかでキッチンからいい香りがしてくると、千春が俺たちに対してそう言ってきた。


「わかった。」
「はーい。」

俺たちはそれぞれ返事をすると、テーブルの上を片付ける人、キッチンで盛り付けを手伝う人、運ぶ人とそれぞれ自分たちで判断して夕飯の手伝いをした。


「いただきます。」
「「「「「いただきます。」」」」」

俺たちは夕飯の間、会話を楽しみながら食べていた。

「こうやってみんなで夕飯を食べる機会って減ったよね。」
「そうね。多くの学生は寮で一人暮らしをしているか、相棒を組んでいたとしても2人でしかいないものね。」
「確かに夕飯は1人かしら?」
「俺が寮にいた間もそうだな。それか、近くの部屋のやつと一緒に食べていたかな。時々だけどよ。」
「やっぱりそうやって考えるとみんなで食べる機会は減ったよ~。家族で食べてた時が懐かしいな…。」

瑞希はみんなで食事をしていたからか家族を懐かしく思っていたらしい。
瑞希がそう言ったしんみりとした空気を作り出したので、他のメンバーも家族と食事をしていたことや団欒、思い出を振り返っているようだった。

俺も俺を引き取ってくれた人たちを思い出して懐かしく思っていた。
もう2月近く経つにもかかわらずこのような心境に至っているのでまだこの島での暮らしに本当に馴染んでいるわけではないのだろう。

俺たちはホームシックになりかけていると、

「ごめんね!ちょっとしんみりさせちゃったね。」

瑞希は急に声を上げて今の空気を換えようとしていた。

「いいのよ。瑞希も寂しくなっちゃったのね。」

そう言って皐月は瑞希の頭を撫でていた。
瑞希はみんなの前でそうされて恥ずかしそうにしていた。

「でも、この島にきた当初のことも思い出したわ。初心を忘れないようにしないといけないわね。」
「ああ。そうだな。」
「そうだな~。最初の白崎は蒼に突っかかっていたしな。」
「あ、あの時は、まだ蒼雪君のことも知らなかったし仕方ないじゃない!」

正悟が俺と千春と正悟が初めて会ったときの船での出来事で、千春をからかったので千春は恥ずかしそうに言い返していた。

その時の出来事を知らなかった皐月や瑞希には正悟が改めて説明していた。
その場にはいなかったが以前話を聞いていた舞依は静かにその話を聞いていた。

千春としては話されたくなかったようで終始正悟を睨みながら恥ずかしそうにしていた。
話を聞いた2人は、最初はそんな感じだったのかと俺たちの出会った時を面白そうに聞いていた。


夕飯を終えた俺たちは片づけを一通りすると、4人が帰るのを見送った。

「ありがとう!この2日間でかなり復習できた!」
「ありがとう。私までお世話になっちゃたからいずれ何かお礼をさせてちょうだい。」
「そんなことしなくてもいいのに。けれど、何かあればまた言ってちょうだいね。こうしてみんなで勉強するのも悪くないと思ったわ。」

「…ありがとう。」
「サンキュー!後は家でも頑張ってみるから!」
「本当に頑張ってくれよ?どうなるかはわからないが評価が下がるような真似だけはしないでくれ。学生の本分は学業だからな。」
「耳の痛い話だけど、わかってるよ。」

「じゃあな!」
「「「「おじゃましました。」」」

俺と千春は4人を見送ると、風呂の用意をしてそれから自室で勉強をしてから休むことにした
この2日間は正悟や千春、瑞希が部屋に来たこともあっていつもと違った日常だったと改めて思い返していた。

試験まで残り4日。この休日はうまく使えたのかはわからないが、有意義に過ごすことはできた。
俺たちはできる対策をしてきているのでこの行動が試験の結果に結びつくように願うばかりだ。

(明日以降の授業では試験に向けて特別に何か時間があるわけではないので、その時間で聞いたキーワードを逃さないようにしなければいけないな。)

俺はそう言ったことを考えながら眠りについた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか? ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。 ●田中真理 雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
青春
 杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...