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1学期編 ~中間試験~

第50話

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「そろそろいいか?」
「あっ、うん。ごめんね。でも、ありがとう。」
「いや、瑞希がこれで落ち着いたならいい。だが、男子にあまりこういうことはしない方がいいと思うぞ?」
「ううん、こういうことをするのは蒼雪君にだけだよ?」

彼女はそう言って俺の方を見上げると、ウインクをして、そのままクッションにではなく俺のベッドに座り込んだ。

「さすがに私だって、誰にだってこういうことすわけないよ?蒼雪君ならって思ってしているんだもん。」
「どういう意味だ?」
「な―いしょっ!どうする、そろそろ下に行こうか?」

彼女は笑いながら意味院な様子でいたが、露骨に話をそらしてきたのでこれ以上は追及しない方がいいのだろう。

「話すことがもうないならそれでもかまわない。」
「うん、じゃあ行こっか?」

瑞希はそう言うと立ち上がり扉の方へと移動をした。
あちこちせわしなく移動をして落ち着きがないように思えたが、先ほどのように沈んだ雰囲気からから考えると、この時間は無意味ではなく彼女のためになったのあろう。

俺も彼女に続いて、立ち上がり部屋の扉を開けてみんながいるだろうリビングへと移動をした。


「…ん、おかえり。どこ行ってた?」

俺たちがリビングへと戻ると、正悟は舞依の監修のもと勉強をさせられていた。
そして、しばらく部屋にいなかった俺たちがどこに行っていたのか疑問に思ったようで首をかしげながら聞いてきた。

「俺の部屋でちょっとな。わからないところがあったようだが、ここでは聞きにくかったから俺の部屋でやってた。そうだな?」
「え、うん、そうだよ。ちょっとわからないところがあったんだけど、さっきやったばかりのところで理解できなくてここで聞いちゃうと申し訳ないなって思って。」
「…ふーん、そっか。」

舞依は何かを感じたのかそれ以上は追及しようとはせずに、正悟と一緒に勉強を再開した。
キッチンからは皐月はこちらを意味深な目で見つめ、千春は興味ないという雰囲気を醸し出しながら隠しているつもりだろうが、何度もこちらをチラチラと見てくるので気になっているのが丸わかりだった。

俺はそんな千春の様子に気づかないふりをして、キッチンへと移動をした。
瑞希は勉強道具を置いていた場所へと移動をしてそこで教科書を見直していた。

「今はどういう状況だ?何か手伝うことはあるか?」
「そうね。今はもうほとんど終わっているから今から手伝えることはほとんどないわ。」
「強いてあげるなら、そろそろテーブルの方の用意をしてほしいってことかしら?」
「それなら、向こうの用意をしてくるとしよう。」
「お願い。それと、その…。」
「大丈夫だ。後で伝えられる範囲で教えるからそんな不安そうな顔をするな。」
「ごめんなさい。」
「謝ることじゃないさ。」

俺はそう言うとテーブルの方のセッティングをしに行った。
俺が用意をし始めたのを見ると瑞希も手伝ってくれて、チャンスだと思った正悟は立ち上がろうとしたところを舞依に止められて区切りのいいところまで続けさせられるということもあったが、俺たちは夕飯の用意をして食べた。



「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま~。」

食べ終えてから、片付けは正悟と舞依がすることになり、俺たちはリビングで座っていろいろなことを話していた。

片付けが一通り終わってから、夜の部の勉強をすることになったので適当に話していたが、話題はやはり最近噂になっていた俺のことについて話すことが多かった。
こういった状況では自分のことを話さざるを得ないが、あまり深く話して空気を微妙にするわけにもいかないのでかなり言葉を選んで話していた。

片付けを終えた正悟たちがリビングに来ると、少しの間は雑談をしていたが、話が一区切りすると先程のグループに分かれて勉強を開始した。

正悟は嫌そうな顔を隠そうともしなかったが、今回集まった理由から考えて勉強をしないといけないことはわかり切っているうえにこれ以上舞依に負担をかけないようにするにはやるしかないので適当に言い包めてやらせた。


しばらくの間は勉強を続けたが、夕飯前の勉強会の時点で何度も寝かけていた瑞希は夜も厳しそうだったので21:30頃から風呂の用意をして風呂の用意ができ次第交代で入ることになった。

順番を決めるときに色々と話し合うことになったが、取りあえず短くて済むだろう俺と正悟が入ってから女性陣で決めてもらうように言った。

風呂が全員終わるまでは勉強をして、全員上がってから区切りがよくなるまでは勉強をすることになったが、風呂の交代やドライヤーの時間の関係上グダグダになってしまったので、風呂に入り始めてからはそこまで進むことはなかった。


「さて、もう眠そうにしている人もいるから今日は終わりだ。明日も朝からやる予定だからしっかりと寝てくれ。眠くない人は好きに自分でやっててくれ。」
「おう!」
「…正悟は復習を終えるまで移動もさせない。」
「ひどくね!?」
「…そこまで元気ならまだやれる。」
「ハハハ…。」
「ごめんなさいね、私たちからお願いしたことでもあるけど、この娘はもう限界みたいだから。」

そういって彼女は瑞希の隣で彼女を立たせているが、瑞希はもう瞼がくっつきそうで立っているのもやっとという様子だった。

「ここまで無防備になるとは思ってなかったわ。」
「いいんじゃないかしら?4人で狭いかもしれないからそこは勘弁してちょうだい。さあ、早く彼女を寝かしてあげましょう?」
「そうね。先に2階へ上がらせてもらうわ。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。ゆっくり休んでくれ。」

そういうと、千春が先導して皐月を案内して2階へと上がっていった。
階段からは瑞希にしっかり歩くように呼び掛けている声が聞こえてきたりもしたが、無事に部屋まで行けたのだろうか?

そんなことも気になったが、リビングにいる正悟と舞依も気になったのでしばらくは彼女たちの勉強を見ていたが、俺も早く休もうと思ったので、

「それじゃあ、俺も部屋に戻る。」
「おう~、先に寝ててくれ…。これが終わったら俺も行くから。」
「…おやすみ。」
「おやすみ。」


俺も自分の部屋へと移動をした。
部屋には先程瑞希を招いた状態のままテーブルとクッションがあったのでそれらを片して正悟の布団を敷きなおした。

コンコンッ

俺がちょうど布団に入ろうかと思ったところで扉をノックする音が聞こえた。
俺が返事をしてから扉を開けると、千春が立っていた。

「ごめんなさい。休むところだったかしら?」
「ああ、ちょうどな。先程のことか?」
「ええ…。」
「立ち話もアレだから一先ず部屋に入ってくれ。」

俺は千春を部屋に入れて適当に座ってもらうと、先ほどのことから話せることを伝えた。

話したと言っても、男子関係の騒動は一応という形で収まったが、情緒不安定なところがあったことぐらいしか話せることはなかった。
その中でも言葉を選んで彼女のプライバシーに関わることはぼかしたのでかなり短かくまとめた。
もちろん俺と瑞希がいちゃついていたことは話さなかった。
誰も話さなければバレることはないと思ったのと、これで千春と瑞希の中が拗れてしまうのは面倒だと思ったからだ。


(浮気を黙っている夫はこんな心境なのだろうか…。)

俺は話しているうちにそんなことを考えてしまった。

千春は一通り話しを聞き終えると、一応納得はしたと言っていたがそれでお時間はかかりすぎじゃないかと言ってきた。

「もちろんこれしか話していないわけじゃない。多少は彼女を落ち着けるために雑談もしていた。」
「それでも遅くないかしら?」
「…何か俺たちが隠していると?」
「そんな気がしているだけよ。私の思い違いかもしれないけれど、黒宮さんの雰囲気が2階に行く前と後で違っていたわ。」
「それは話をしてすっきりしたからだろう?」
「いいえ。それだけじゃない。女の勘よ。」
「そう言われてもな…。」


俺は打ち明けるべきではないと思い、隠し通すつもりでいたが思っていたよりも食い下がることなく追求し続けるので困っていた。

「…まぁいいわ。あなたから話せないなら明日黒宮さんに直接聞くわ。」
「そうしてくれ。俺から話していいことはどこまでなのかは俺の判断ではここまでだからな。だが、少なくとも千春に対してやましい気持ちは俺にはない、とだけは伝えておく。」
「…わかったわ。こんな時間にごめんなさい。私も部屋に戻るわ。」

千春はそう言って俺の部屋から出ていった。

(話すべきだったのだろうか?)

俺は胸の中にモヤモヤしたものを抱えたまま布団に入って寝ることにした。
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