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入学編 ~特別試験~

第42話

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翌朝、目が覚めるといつも通り6時だった。
体内時計がこの時間に起きるようにセットされていた。
前日は夜間に散歩をしていたということもあって起きれなかったに過ぎない。

俺は顔を洗ってから朝食の用意をした。
朝食を食べながらニュースを付け天気を確認し、端末を見て何か連絡が来ていないか確認をした。
天気は今日も晴れで洗濯物を干していても大丈夫そうだと判断した俺は朝食を食べ終わると、前日までの衣類を干した。

(今日は何をするかな…。)
俺は7:30頃には一通りやろうと思ったことを終えてしまい手持ち無沙汰になってしまった。

特にやることが思いつかなかったので部屋に戻り、持ってきた小説を再び最初から読み始めた。
(新しい本を昨日買っておくべきだったな。)
俺はそんなことを思いながら今日の予定に本屋に行くことを考え始めた。

30分ほど経つと、今日もメッセージの受信を知らせる通知が部屋で鳴った。
確認をしてみると、試験の結果による個人評価をしたので自分の評価を確認するようにとのことだった。

俺は、さっそく自分のホームにアクセスしようとしたところ、アクセスが集中していて直ぐにアクセスできないとのことだった。
(全員が一斉にアクセスしてサーバーが負荷に耐えられなかったのか…。)
学園側が思ったよりも一気にアクセスをしたようでしばらくはサーバーが不安定になりそうだった。
アクセスができないことが分かったので俺は再び読書に戻ろうとしたところ、千春から着信が来た。

「もしもし?」
「もしもし、今少しいいかしら?」
「ああ、問題ない。」
「それならよかったわ。評価は見れたかしら?」
「いや、既にアクセスできなかったよ。」
「貴方もそうなのね。私も確認しようとしたのだけど最終的にアクセスはできなかったわ。」
「そうか。それで、相棒のことか?」
「ええ、そうよ。ポイントを確認してからにしたかったのだけれど見れないなら仕方ないわ。それで、まだどうするかは判断しかねるけれど、今のうちに住居を見ておくのはどうかしら?相棒についてはポイント次第というだけで前向きに検討してくれているのよね?」
「そうだ。相棒を組むなら早い方がいいと昨日も集まった男子でも話していたしな。それに少なくとも意識をしている相手から言われたんだ、相棒を組むなら千春がいい。」
「……っ!」
「どうした?」
「い、いえ、何でもないわ。(蒼雪君が急にそんなことを言うなんて思わなかったわ…。)」
「?そうか、ならいいんだが。」
「ええ。えっと、どこまで話したかしら…、そう、これから一緒に居住区にある家を観に行かないかしら?ポイントの予算がどれだけになるかはわからないけれど一つの指標にはなると思うわ。」
「そうだな。俺は今からでもいいが準備に時間がかかるかもしれないし、9時か10時頃に待ち合わせか?」
「9時でも問題ないわ。私もやることがない状態だったもの。待ち合わせはどうしようかしら?相棒用の住居は学生寮よりも居住区の商業地区寄りだったわよね?そうなるとちょうどいい待ち合わせ場所は…。」
「それなら、この居住区の中心辺りはどうだ?行ったことはないが噴水などがあって広場のようになっているらしい。待ち合わせにもよく使われると書いてある。」
「何処からの情報かは分からないけれど、そうしましょう。」
「了解だ。じゃあ、また後で。」
「ええ。また。」

俺たちはそう言って通話を終えた。
通話を終えると、俺は簡単に身だしなみを整えて部屋を出る準備をした。

準備を終えると、徒歩でどれくらいかかるかわからないということと、空いている住居を確認しながら行くということで時間もかかると思い早めに部屋を出た。

道中に気になるめぼしい物件を確認したが、学園に近い物件は比較的安いポイントになっていることが分かった。
しかし、ポイントが安い分だけ家は中心部寄りの建物よりは小さかったりしていた。
また、比較的まだ安めということもあって、既に住んでいる先輩もそこそこいた。
中心部に近づくほど家やマンションは、大きい建物や高そうな建物が多かった。
居住区には店の類はほとんどないが、どうやら学生が自分たちで営業しているようなカフェやコンビニ、個人店があったりもした。
(学生がすでに営業をしていたりもするのか…。)
俺は歩いていると新発見もできて有意義な時間だったと感じた。

噴水の元へは寄り道も多かったことから、待ち合わせ10分前に着いた。
(まだ、千春は来ていないか。待たせないで済んでよかったな。)
おれはふと昨日の正悟とのやり取りを思い出し、苦笑した。

それから間もなく、俺は端末を弄って待っていると、千春が広場へ現れた。
着いたときは俺がまだ来ていないと思ったのかキョロキョロと探していたが、俺の姿を確認するとこちらに向かって歩いてきた。

「おはよう、待たせてしまったかしら?」
「おはよう。昨日同様そんなに待っていない。俺が少し早く来すぎたところだ。」
「そう、それならよかったわ。先ほどまで端末を弄っていたようだけれど、評価の確認はできたのかしら?」
「残念ながら未だにできていないな。しかも、今は完全にアクセスできないようにされている感じだ。」
「そうなの?」

千春は俺の指摘に驚いた様子でいて、自分でも端末を使って確認をしていた。

「…あなたの言うようにアクセスできないわね…。」
「一度落ち着いたころに使えるようにするんじゃないか?」

俺がそう言うと、ちょうどメッセージを受信した。
俺たちからすると都合のいいタイミングに来たと思い、確認をしてみると、俺の推測通りだった。

『現在集中アクセスによりサーバーを維持できませんでした。申し訳ありませんが、いましばらくの復旧をお待ちください。また、今後のことですが、サーバーが復旧次第連絡をします。また、一斉アクセスの負荷を軽減するため、時間を空けてクラスごとに連絡をします。』

推測から外れたのはクラスごとに時間を分けて連絡をするということだ。
連絡の時間を分ける手間は増えるが、一斉にアクセスをされる負荷に比べれば優しいものだろう。

「学園からの連絡は確認したわね?」
「ああ、したところだ。しばらく時間がかかるようだな。」
「ええ。まぁ仕方ないわ。そんなことよりも、どこから観ていこうかしら?」

千春にどこから観ていくか聞かれ、少し悩んでしまった。
どの程度の評価が付いたのか目安がなくては観て回る範囲が広いからだ。

「千春は建物の価格帯は把握しているか?」
「ええ。なんとなくだけれどね。あなたもここに来る途中に少しは観ているとは思うけれど。」

千春は俺に確認をするかのように言ってきたので、俺は頷いてから、

「俺もある程度気になった建物や、指標になりそうな建物の価格は見てある。だが、あくまで半分だな。ここより商業区側がどうなっているかはわからない。」

居住区の衷心より学園側の半分は推測したとおり、学園に近いほど低い価格の物件になっているが、その法則が居住区の中心から商業区域側にも当てはまるかは確認できていないが故の発言だった。

「そうね。私もまだこちら側の価格帯は把握していないわ。」

千春は商業区域側の居住区を見ながらそう言ったので

「それなら、まずはこちら側の価格を確認しながら見ていくことにしよう。」

俺がそう提案し千春が合意したので、しばらく商業区域側に向かって歩きながら確認をしていった。



1時間ほど歩いて確認をしていったが、ほとんどの建物は学園側と同じ法則が成り立っていた。
ほとんどというのは、大部分は離れるほど価格は安くなる稽古にあったが学園側ほど価格が低くないことで変化が緩やかだったからだ。
また、俺たちは済むならマンションにするか一軒家にするか道中で話し合った結果、一軒家の方がいいということになったのでそちらを主に確認した。

一通り見ていくと、途中からは商業区域に近づくにつれて、個人用の家も現れた。
相棒用の家よりは小さいところもあれば、兼用、個人から相棒で引き継げる物件もあって様々だった。
さすがに商業区まで歩いていくのは疲れるということもあって、個人用が多く現れるようになってから広場の方へ引き返すことにした。
帰るときは道を変えて気になる建物がないかお互いに確認をしながら進んでいった。

広場に戻るとかなり時間も経っていた。

「どうだった?気になる建物はあったか?」
「そうね。いくつかはあったわ。蒼雪君はどうかしら?途中でも意見を聞いたけど、改めて確認しておきたいわ。」
「そうだな。気になるところはいくつかあったが、決め手には欠けている。」
「私も同じ意見だわ。まだポイントも確認できていないし、どちらにせよ判断材料が不足しているわ。」

俺たちは互いに気なった物件について3か所ずつ候補を伝えあったところ、偶然1軒だけ一致したところがあったのでそこを有力候補とすることにした。

「もうすぐお昼の時間になると思うけれど、どうしましょうかしら?」
「それなんだが、一つ気になる店を見かけたんだ。そこに行ってみるのはどうだ?」
「…貴方が気になるお店があるなんて言うと思わなかったわ。いいわ、そこに行ってみましょう。」

千春が同意してくれたので、今朝広場に向かっている道中で見かけた学生が運営していると思われるカフェに向かった。
千春にはあえて何も説明せずに案内したが、女子学生寮から向かっている道中にも学生が運営していると思われる店はあったようで、そこまで驚いてはいなかった。

「貴方が気になるとはこのことだったのね。」
「ああ。学生が主体として運営しているんだ、気にならないわけがないだろう?」
「そうね。行ってみましょう。」

千春に促されて俺たちはそのカフェに入っていった。
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