俺たちの共同学園生活

雪風 セツナ

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入学編 ~特別試験~

第6話

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 港へ向かう途中にあったベンチで俺たちは弁当を早々に食べ終えると、道中も街灯や端末のライトを頼りに俺たちは問題について考えていた。
「んー、わかんねぇな~。何か手掛かりがあればいいだけどな。何かわかったか?」
「いや、まだだ。」
「だよな~、そう簡単に…」
「だが、わかりそうなものもある。」
「マジか!どれだ?」
食い気味にそう聞いてきた。
「おそらく⑦は③と同様の考え方でいいのかもしれない。」
「同様の考え方?」
「“数多の文字が眠りし”はまだ考えているところだが、地下というのはそのままの意味で地下一階とかだろうな。」
「数多の文字かぁ…、あっ、それって本とか資料のことじゃないのか?本とかだったら多くの文字が書かれているから合ってるんじゃないか?そして本がたくさんあるとこと言えば図書館だろ!」
「俺もそう思ったんだが、“眠りし”とあるだろう?本だと本当に眠っているといえるのか不確定でな。眠っていると考えると現在は読まれていない本か資料があるとしか思えない、地図だけだとそういう本があるかどうかまでは分からないんだ。もしかしたらこの組み合わせで一つを意味するなら本や資料じゃない可能性も捨てきれない。」
「なるほどな~、だったらこのあと行ってみるか!」
「は?」
「わからないんだったら行って確かめればいいんだよ!俺の直感がそうすべきだと言っている!」
俺に向かって笑いながらそう言ってきた。確かにただ考えるだけではなく、実際に行ってみることで分かることもあるだろう。
「一理あるな。そうするか。」
俺はとりあえずそう返事をしておいた。
「そうと決まれば、港の次は図書館だな!」
「ちなみにどちらの図書館に行くつもりだ?」
「どっちってどういうことだ?何か所かあるのか?」
「気づいてなかったのか?おそらく俺たち生徒が使うための図書館が学内に一つ、島の居住区におそらく管理者やこの島で働く人たちのための図書館が一つ、計二つある。」
「まじか、知らなかった。それなら、学内のだろうな。俺たちが使う可能性が高いのはどう考えても学内の方だし。」
「おそらくな。」
 そういうことで港の後は図書館に向かうことになった。図書館に向かうことを考えると、港に寄ってしまうと多少遠回りであることは否めないが当てがない以上仕方がないことだと割り切ることにした。
 
 体育館と港では、歩いて1時間以上の距離があるためまだ着くのには時間がかかりそうだった。道中では数人の人たちとすれ違った。おそらく夜間は休む人たちか校舎のどこかにスタンプがあることがわかったクラスの人たちなのだろう。体育館と校舎と合宿所はそこまで離れているわけではない。合宿所へこの時間から戻るということは、夜の間に問題を解いておこうという考えなのかもしれないしただ休みに来ただけなのかもしれない。この時間で校舎に行くならば本来閉まっていてカギを開けてもらわないといけないところだが、この試験期間中は開けておいてくれるから夜間でも探索できることになっている。すれ違う人たちを見るとクラスメイトとはすれ違っていないと思われる。まだどこかのスタンプがある場所にいるのかもしれない。君島率いるグループにしても彼らが向かった方向はわからないから、案顔違う方向から戻っている可能性もなくはない。考えている間も煮詰まれば周囲を観察して違うことを考えていた。
 
 「蒼、わかりそうなのもあるって言ってたけど、他に何か考えがあるのはあるか?俺はようやく一つ分かったかもしれない。」
 少し歩いていると、そわそわした様子で正悟が俺にそう言ってきた。
 「そうなのか?」
 「おう!④の問題だ!」
 「その問題か、アルファベットと数字の関係について考えていたところだ。」
 「それなんだけどさ、隣にある漢字の位置を表しているんじゃないか?」
 「………なるほど。思ったより単純だったんだな。俺は問題を難しくとらえていたな。」
 「だろ?アルファベットは縦列、数字は横列を指している。そう考えるとC-3は『男』、E-4は『子』、B-1『学』、A-4『生』、D-3『寮』がある。続けて読むと男子学生寮だ!どうだ、これは当たってると思わないか?」
 そういいながら、興奮した様子で俺に詰め寄ってきた。問題を自力で解けたことに喜んでいるのだろう。
 「ち、近いぞ、解けたことが嬉しいのは分かるが落ち着いてくれ。」
 「お、おう、悪い。けど、やっと自力で解けたんだからな?これが嬉しくないわけがないだろ!」」
 「わかった、わかった。だが、これが答えだとするとにもあるかもしれないな。」
 「ん?何がだ?」
 「気づいてないのか?ということは、当然しか入れない。女子が自力ではスタンプを押しに行くことはできない。こんな不平等な試験はしないはずだろう?」
 「っていうと、あれか。残った問題の中に女子しか入れない場所が答えになっているかもしれないのか?」
 「おそらくそうだろう。」
 「じゃあ、どこかで協力してくれる女子を探さないといけないのか。」
 「全てのスタンプを集めるのであればそうするしかあるまい。まぁその時になったら考えよう。」
 「そうだな~、今は何もできないしそうするか~」
 俺たちは問題の答えを考えるだけではなく、協力者を探すことも前提に行動しなければならないことになった。まぁ見つからなければちょうど連絡先ももらったことだし、君島に連絡して誰か女子を借りればいいだろう。
 
 そんなことを話していると港に近づいてきた。さすがに夜の港だけあって辺りは暗かったが照明もあったのでその光の範囲は明るかった。
 「さ~て、港のスタンプはどこだ~?」
正悟はそう言ってスタンプを探しに先に行ってしまった。しょうがない奴だと思ったが、俺は歩いて追いかけていくことにした。

 港に到着すると、辺りには他の人たちもおらず、間違えたか?と思いながらも周囲を何度か見渡した。どうしたものか、と考えていると、そういえば正悟の姿も見えないと思いどこまで行ったのか探すことにした。港なだけあって広いがすぐに見つかった。どうやら、俺たちが乗ってきた船の近くを探していたらしい。
「おーい、蒼!ここだ!ここにあったぞ!」
どうやらスタンプも見つけていたようだった。スタンプは俺たちが下船をするときに本人確認をする手続きをしていた場所に置かれていた。
「ここにあったのか。」
「おう!おそらくここだぜ!」
「ん、?どういうことだ?他のスタンプでも見つけたのか?」
なぜか限定するような表現を用いて言ってくるので疑問に思った。
「ああ、さっき、スタンプがすぐに見つからなくて、船の中にも入れそうだったから入るとスタンプが置かれていてさ。最初はこっちか!と思ったがそれだと港じゃないと思って階段を下りるのに足元が暗くて端末のライトをつけて照らしたらこっちを見つけたってわけさ!」
「なるほどな、一致する場所のスタンプを押せとはこういことか。」
鮫島先生が言っていた言葉の意味をここでようやく理解した。おそらく階数等の細かい指定が問題に書かれていたりするのは同じ施設、または近い場所に他のクラスが探しているスタンプがあるからなのかもしれない。確認する他クラスの相手がいないから確証はもてないがおそらくこの推測は外れていないと思う。
「とりあえず、スタンプを押そうぜ!」
正悟はそう言って、自分の用紙にスタンプを押した。
「ほら、蒼も。」
そう言って、俺にスタンプを渡してきた。
「どうも。」
俺は、軽くそう言って自分の用紙にスタンプを押した。スタンプには「よくできました」と横文字で書かれていた。しかしよく見てみると、
「ん?」
「どうした、蒼?」
「いや、スタンプを見てみたのだが、よくできましたの後に一文があるだろ?」
「本当だ、え~と、“日々の努力は欠かせませんね”?ん~、何が言いたいんだ?」
「さあな?おそらく残りのスタンプにも何かメッセージが書かれているんじゃないか?」
さすがにこの一つだけで何を表しているのかはわからなかった。
「なんにせよ、これで一つ目のスタンプだな!この調子でいこうぜ!」
「そうだな。」
俺はそう言って次のスタンプの在処についてどうすべきか考え始めた。


現在時刻22:20  18:00までおよそあと19時間 現在集めたスタンプ1
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