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Part1 第二章

第二十三話 仕掛けの過程

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 エレナを堂々と仕掛けるのは分かったがそれまでの過程だ。ただ単に仕掛けるだけは面白くない。ならせめてこの城にいる人にエレナのもう一つの顔を見せてやりたい。最初は二人っきりの時に仕掛けようかと思ったが何か足りない気がする。エレナの部屋に入れてエレナが驚いた、終わり。なんて面白くないもの。折角、大きな爆弾を仕掛けるのにすぐに終わらしたくなんてないわ。

 私の事を皆はお人好しだ、なんて言うけどそうでもない。こうやってエレナを陥れたい気持ちが溢れてくる。レオナルドはきっとエレナのもう一つの顔を知らないだろう。なら知らしめてやりたい。こんな事を思うのは騎士として不謹慎だろうか。今は悪役令嬢としての血がたぎる。
 もっと前世の記憶が蘇っていたら、これより大きい爆弾を仕掛けれたかな、と思うが五年もたった今だがあまり思い出せない。だが唯一思い出せたことはこの乙女ゲームーー『私の波乱の恋の行方は…Part1』には題名通り続きがある。続きもプレイした記憶はあるにはあるが内容にモヤがかかっていてはっきりとした記憶は未だに思い出せてない。
 そもそも前世の記憶は私が不自由なく暮らせるために思い出しただろうから特に無理やりでも思い出そうとしなかった。だって確かPart2には私は出なかったと思うから。もともとPart1で殺される運命だったから当然よね。だけど現実にはノアは山から降りずネルソン王国には来なかった。そこには疑問を何度か持ってしまった。どこかで何か変わってしまったのではないか、と思ったがゲームの内容をあまり思い出していない限り違いがよく分からなかった。

 それよりもこの『ある人』を呼び出してどうするかだ。決行日にも勿論、騎士団長としての魔物討伐と言う仕事がある。だってこの国には魔物の討伐をしにきたもの。当然だわ。
 決行日に行く魔物の討伐をする場所は魔物が少ない、とアダムが言っていたから昼過ぎには終わるだろう。そのことを考えると終わるのは14時くらいだろうか。この時間のエレナは何をしているのだろうか。

「ねえ、明後日の14時頃のエレナは何をしているか調べてくれないかしら?」

 私が問いかけた人物は手紙を届けてくれた雇っている人物だ。この雇っている人物はフェイスと言う名前で女性だ。とてもお仕事には忠実で信用出来る。

「それなら既に調査済みです。こちらのメモ帳に全て書いているのでお確かめ下さい」

 流石。仕事が早い。メモ帳を見ると一つ一つ予定が書かれていて驚いた。それにーートイレの時間まで……。妙な所まできっちりしている。トイレの時間は今までの平均の時間だろうか。平均を求められるくらい知っているってそれはそれで怖い。
 大まかな流れとしては

7時 起床
8時 朝食
9時ー12時 書類整理
13時 昼食
14時ー18時 城下に行く
19時 夕食
20時ー22時 レッスン・勉学
23時 就寝

 よくここまで…。所々を見ると、この時間にはこの人に会うとか御手洗に行くとか好感度を上げるために使用人と何を話しているかとかが書かれている。
 どうやって知ったのか知りたいが恐ろしいことを言ってきそうだからやめた。

 次のページを見るとエレナだけでなくレオナルド、国王陛下、王妃、使用人の動きが全て書かれていた。レオナルドは他国のお茶会、国王陛下はレオナルドと一緒に他国のお茶会、王妃は城にいると書かれていた。
 勿論、エレナと同じく何時に何をしているか書かれていた。レオナルドと国王陛下は明日の朝の7時30分に出発と書かれていてその時にエレナも門までついて行くとのことだった。この二人が帰るのは出発してから四日後で他国のお茶会に行くだけで行き帰り合計三日はかかるとのことだ。この時は勿論、ネルソン王国の騎士も十数名連れていくようだが、あまり連れていかないようで理由も手帳に書かれており〝国王陛下が自分の身は自分で守ると言っている〟とのことだった。何かカッコイイ。

 それはそうと王妃だが国王陛下の代わりに四日間は国を纏めるみたいで国王陛下よりもこの時の国は隙が無くなる、と言うことだ。当時私が王妃になろうと頑張っていた時はこの人を目標にしていて本当に素晴らしいお方で国王陛下より優秀だ。この国の政治はこの方に任せたら?と言う声も何度か上がったことがある。実質、この城で一番強い。国王陛下よりも強い。そんな強い女性に当時は憧れていた。それに当時は良くしてくれた人の一人だ。噂では王妃とエレナの仲は悪い、とも言われていてこの四日目はギスギスすると使用人の中ではこの話がもちきりだ。
 明日には国王陛下とレオナルドがいなくなり王妃が国の政治を纏める。この時を狙うしかない。さて、決行日の二日後が楽しみだわ。
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