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9章:同棲生活スタート
29話
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「そうと決まったら、ささっと片付けて買い物へ行きますか」
今すぐにでも動き出したい。早く二人だけの空間に二人だけの物が欲しかった。
「うん。早く片付けて買いに行こう」
気分が上がると、やる気が満ちてきた。動かす手が早くなり、作業効率も上がった。
気がついたら片付けも終わっていて。今すぐにでもお店に駆け込みたくなった。
「あまり遅くならないうちに荷物の整理ができてよかった。これなら今から買いに行けそうだな」
時間を気にしていたわけではないが、あまり遅い時間なら日を改めて出かけた方がいい。
それに時間に余裕がある時の方がゆっくりお買い物ができる。できればゆっくりお買い物がしたい。
今日はまだ時間がある。電車に乗っていけば行ける場所にお店があるので、今から向かえば全然余裕だ。
「そうだね。行けそうだね」
「それじゃ早速支度して、お店へ向かいますか」
「うん。そうだね。そうしよう」
慌てて二人で支度してお店へと向かった。少しでも時間を有効活用したかった。
「電車で向かえばすぐだから、電車で行こう」
私達が住んでいる街は、学生寮のアパートやマンションが多く、スーパーやコンビニ以外のお店だと飲食関係しかない。そのため電車で隣街まで向かわないと、大型施設などのお店はない。
ぶっちゃけ家賃も安いし、物価も安いので、住みやすさには抗えない。学生にとっては住みやすい街ナンバーワンだ。
あと数年はこの街でお世話になるつもりだ。学生の身分で贅沢はできない。
だからお買い物をするってなると、隣街に行くことが多い。友達と遊ぶ時もそうだ。
愁とのデートも隣街に出かけることが多い。最近は引っ越しの準備もあったため、お家で過ごすことが多かったが…。
それもそれで悪くない。お家でまったりデートも好きだ。
私達のデート事情はさておき、出かけるとなると隣街まで行く…というのが私達の間では定番となっていた。
今日は久しぶりに隣街まで行くので、ワクワクしている。
お買い物自体も久しぶりだ。今まで引っ越しのために節約してきたので、余暇に回すお金は我慢していた。
せっかく隣街まで行くので、時間と予算が余ったら新しい洋服が欲しい。帰りに軽くお茶してから帰るのも悪くない。
久しぶりのお出かけに完全に浮かれていた。ただの買い物に過ぎないが、それだけでも浮かれてしまう自分が単純だなと思った。
「そうだな。久しぶりに隣街に行くな…」
愁も引っ越しの準備をしながら、大学とバイトの両立をしていたため、遊びに出掛けている時間がなかったのであろう。
どうやらお互いに久しぶりに出かけることが楽しみなようだ。完全に浮かれていた。同棲したてなので仕方がない。
「私も久しぶりに隣街に出かけるよ。ここ最近、出かけてる余裕なんてなかったもん」
「確かにそんな余裕なかったよな。俺、引っ越しと同時に新しいバイト先も探してるから本当に余裕がなかった」
まさか愁が裏で引っ越し以外にも頑張っていたなんて…。知らなかった彼の苦労話を知り、彼のことを支えたいと思った。
同時に私も頑張らなきゃなと思わされた。いつ自分のやりたいことが見つかるのか分からないが、見つけようと模索するのは大事だ。
できれば見つかってほしいが、見つからなかった時はその時になったら考えればいい。とりあえず就職して、その後に見つけるでもいい。
どんなタイミングでもいい。できれば学生のうちに見つけられたら就活するのに困らないだけだ。
そう思えたら一気に気が楽になった。そう思えた瞬間、なんだかすぐにやりたいことが見つかりそうな予感がした。
「そうだったんだね。探すのって大変…?」
「大変だよ。一応、知り合いのツテを当たってるけど、バイトさせてもらえるかどうか分からないからね…」
実際、まだ税理士にはなれていない。まだ目指している段階だ。
私にはよく分からないが、色々バイトをするだけでも厳しいのであろう。
根拠もなく大丈夫なんて言えないが、愁なら夢を叶えることができると思う。そう確信できるくらい、実現力があると私は信じている。
「そっか。私は愁がやりたいことを叶える力があるって信じてるから。安易に大丈夫なんて言っちゃいけないかもしれないけど、大丈夫だと思う。愁ならなんとかなるよ」
気休めでしかないし、却って相手を傷つけてしまう場合もある。
でも今の愁には気休めでも大丈夫って言葉が必要だ。その言葉一つだけで心が救われたと思う。
誰だって優しい言葉が必要な時は必要だ。私は愁の心に寄り添いたいと思い、私なりに寄り添った。
その想いが届いていたらいいな。届いていることを願った。
「そう言ってくれてありがとうな。幸奈にそう言ってもらえるとめちゃくちゃ背中を押されて。前向きな気持ちになれる」
愁に想いが届いていたことを知り、私も心が救われた。
新しいことに挑戦する時は、誰しも不安な気持ちになる。
「それなら良かったよ。そう言ってもらえてこちらこそありがとう」
お礼にお礼を言うなんておかしいかもしれないが、そう思ってもらえているということが私には嬉しかった。
「いえいえ。こちらこそ」
お互いにお互いを支え合う。これから先もこうやって二人で支え合っていけたらいいなと思った。
「やべ。もう電車が来るぞ」
急がないと間に合わない。これはもう少し歩くスピードを上げた方が良さそうだ。
「ちょっと歩くスピードを上げますか」
「そうだな。そうしよう」
駅までスピードを上げて歩いた。なんとかギリギリ間に合った。
「良かった…。間に合った」
「だな。本当に間に合って良かった」
これを逃しても十分に一本出ているので拘る必要はなかったが、十分駅のホームで待つのが嫌だったので、急いでここまでやって来た。
「そうだね。もう電車が来るね」
電車がもうすぐやって来るアナウンスが鳴った。
電車が来ると分かると、ホームで待つ人々は整列し始める。乗り遅れないように。
私達も列に並んだ。ちゃんと順番を守って乗る。
ワクワクしながら電車を待った。ゆっくりと電車は停まり、扉が開いた瞬間、まず先に乗っていた人が降車し、待っている私達が後から乗車した。
車内は運良く空いており、席に座れた。
扉が閉まるアナウンスと音楽が鳴り、扉が閉まった。
ゆっくりと発進していく。心地良い揺れに若干、眠気が襲う。隣に愁が座っているので、安心して寝てしまいそうだ。
「幸奈、眠いの?」
既にバレていた。さすがに隣街なので、次の駅で降りるので寝てはいられない。
「うん。実は…。でも次だからさすがに起きてるよ」
「そっか。少し距離があるから寝てても大丈夫だぞ」
そっと私の頭に愁の手が触れた。その手が優しくて。私の胸に温かい気持ちが込み上げてきて。愁の優しさに包まれているなと感じた。
「お気持ちありがと。でももうすぐ着くから起きてるね」
まだ寝るには早い。今日はまだこれからだ。せっかく久しぶりに隣街へ行くのだから、寝るなんて勿体ない。
「そっか。でもあんまり無理すんなよ」
今度は頭をポンポンしてきた。言葉以上に愁の手の温度からより愁の愛情が伝わってきた。
「うん。ありがと。愁もね」
荷解きもまだ終えていないが、同時に荷物の整理も始めているので、お互いに少し疲れている。
それでも気晴らしに気分転換をするのも悪くない。引っ越しのことでゆっくりする時間もなかったので、たまにはこういう時間も必要だ。
「おう。もう着くな」
愁がそう言うと、車内アナウンスが流れた。一駅分ってこんなにもあっという間なんだなと感じた。
「幸奈、行くぞ」
愁が先に立ち上がり、私に手を差し伸べてきた。私はその手を掴んだ。
そしてそのまま手を掴み、私を起き上がらせてくれた。手を繋いで一緒に降車した。
「それじゃ早速、ショッピングモールへと向かいますか」
「そうだね。向かおう」
駅を出てすぐの所にショッピングモールがある。お互いに何度か足を運んでいるため、お店の場所は知っている。
なので迷わずにお店に向かう。上手くいけばスムーズに買い物が済むであろう。
そうとなれば、愁と少しぶらぶらする時間も作れそうだ。
それが実現できるように、少しでも時間を効率良く使おうと思おう。そうとなったらチンタラしている時間が勿体ない。少しだけ歩くスピードを速めた。
今すぐにでも動き出したい。早く二人だけの空間に二人だけの物が欲しかった。
「うん。早く片付けて買いに行こう」
気分が上がると、やる気が満ちてきた。動かす手が早くなり、作業効率も上がった。
気がついたら片付けも終わっていて。今すぐにでもお店に駆け込みたくなった。
「あまり遅くならないうちに荷物の整理ができてよかった。これなら今から買いに行けそうだな」
時間を気にしていたわけではないが、あまり遅い時間なら日を改めて出かけた方がいい。
それに時間に余裕がある時の方がゆっくりお買い物ができる。できればゆっくりお買い物がしたい。
今日はまだ時間がある。電車に乗っていけば行ける場所にお店があるので、今から向かえば全然余裕だ。
「そうだね。行けそうだね」
「それじゃ早速支度して、お店へ向かいますか」
「うん。そうだね。そうしよう」
慌てて二人で支度してお店へと向かった。少しでも時間を有効活用したかった。
「電車で向かえばすぐだから、電車で行こう」
私達が住んでいる街は、学生寮のアパートやマンションが多く、スーパーやコンビニ以外のお店だと飲食関係しかない。そのため電車で隣街まで向かわないと、大型施設などのお店はない。
ぶっちゃけ家賃も安いし、物価も安いので、住みやすさには抗えない。学生にとっては住みやすい街ナンバーワンだ。
あと数年はこの街でお世話になるつもりだ。学生の身分で贅沢はできない。
だからお買い物をするってなると、隣街に行くことが多い。友達と遊ぶ時もそうだ。
愁とのデートも隣街に出かけることが多い。最近は引っ越しの準備もあったため、お家で過ごすことが多かったが…。
それもそれで悪くない。お家でまったりデートも好きだ。
私達のデート事情はさておき、出かけるとなると隣街まで行く…というのが私達の間では定番となっていた。
今日は久しぶりに隣街まで行くので、ワクワクしている。
お買い物自体も久しぶりだ。今まで引っ越しのために節約してきたので、余暇に回すお金は我慢していた。
せっかく隣街まで行くので、時間と予算が余ったら新しい洋服が欲しい。帰りに軽くお茶してから帰るのも悪くない。
久しぶりのお出かけに完全に浮かれていた。ただの買い物に過ぎないが、それだけでも浮かれてしまう自分が単純だなと思った。
「そうだな。久しぶりに隣街に行くな…」
愁も引っ越しの準備をしながら、大学とバイトの両立をしていたため、遊びに出掛けている時間がなかったのであろう。
どうやらお互いに久しぶりに出かけることが楽しみなようだ。完全に浮かれていた。同棲したてなので仕方がない。
「私も久しぶりに隣街に出かけるよ。ここ最近、出かけてる余裕なんてなかったもん」
「確かにそんな余裕なかったよな。俺、引っ越しと同時に新しいバイト先も探してるから本当に余裕がなかった」
まさか愁が裏で引っ越し以外にも頑張っていたなんて…。知らなかった彼の苦労話を知り、彼のことを支えたいと思った。
同時に私も頑張らなきゃなと思わされた。いつ自分のやりたいことが見つかるのか分からないが、見つけようと模索するのは大事だ。
できれば見つかってほしいが、見つからなかった時はその時になったら考えればいい。とりあえず就職して、その後に見つけるでもいい。
どんなタイミングでもいい。できれば学生のうちに見つけられたら就活するのに困らないだけだ。
そう思えたら一気に気が楽になった。そう思えた瞬間、なんだかすぐにやりたいことが見つかりそうな予感がした。
「そうだったんだね。探すのって大変…?」
「大変だよ。一応、知り合いのツテを当たってるけど、バイトさせてもらえるかどうか分からないからね…」
実際、まだ税理士にはなれていない。まだ目指している段階だ。
私にはよく分からないが、色々バイトをするだけでも厳しいのであろう。
根拠もなく大丈夫なんて言えないが、愁なら夢を叶えることができると思う。そう確信できるくらい、実現力があると私は信じている。
「そっか。私は愁がやりたいことを叶える力があるって信じてるから。安易に大丈夫なんて言っちゃいけないかもしれないけど、大丈夫だと思う。愁ならなんとかなるよ」
気休めでしかないし、却って相手を傷つけてしまう場合もある。
でも今の愁には気休めでも大丈夫って言葉が必要だ。その言葉一つだけで心が救われたと思う。
誰だって優しい言葉が必要な時は必要だ。私は愁の心に寄り添いたいと思い、私なりに寄り添った。
その想いが届いていたらいいな。届いていることを願った。
「そう言ってくれてありがとうな。幸奈にそう言ってもらえるとめちゃくちゃ背中を押されて。前向きな気持ちになれる」
愁に想いが届いていたことを知り、私も心が救われた。
新しいことに挑戦する時は、誰しも不安な気持ちになる。
「それなら良かったよ。そう言ってもらえてこちらこそありがとう」
お礼にお礼を言うなんておかしいかもしれないが、そう思ってもらえているということが私には嬉しかった。
「いえいえ。こちらこそ」
お互いにお互いを支え合う。これから先もこうやって二人で支え合っていけたらいいなと思った。
「やべ。もう電車が来るぞ」
急がないと間に合わない。これはもう少し歩くスピードを上げた方が良さそうだ。
「ちょっと歩くスピードを上げますか」
「そうだな。そうしよう」
駅までスピードを上げて歩いた。なんとかギリギリ間に合った。
「良かった…。間に合った」
「だな。本当に間に合って良かった」
これを逃しても十分に一本出ているので拘る必要はなかったが、十分駅のホームで待つのが嫌だったので、急いでここまでやって来た。
「そうだね。もう電車が来るね」
電車がもうすぐやって来るアナウンスが鳴った。
電車が来ると分かると、ホームで待つ人々は整列し始める。乗り遅れないように。
私達も列に並んだ。ちゃんと順番を守って乗る。
ワクワクしながら電車を待った。ゆっくりと電車は停まり、扉が開いた瞬間、まず先に乗っていた人が降車し、待っている私達が後から乗車した。
車内は運良く空いており、席に座れた。
扉が閉まるアナウンスと音楽が鳴り、扉が閉まった。
ゆっくりと発進していく。心地良い揺れに若干、眠気が襲う。隣に愁が座っているので、安心して寝てしまいそうだ。
「幸奈、眠いの?」
既にバレていた。さすがに隣街なので、次の駅で降りるので寝てはいられない。
「うん。実は…。でも次だからさすがに起きてるよ」
「そっか。少し距離があるから寝てても大丈夫だぞ」
そっと私の頭に愁の手が触れた。その手が優しくて。私の胸に温かい気持ちが込み上げてきて。愁の優しさに包まれているなと感じた。
「お気持ちありがと。でももうすぐ着くから起きてるね」
まだ寝るには早い。今日はまだこれからだ。せっかく久しぶりに隣街へ行くのだから、寝るなんて勿体ない。
「そっか。でもあんまり無理すんなよ」
今度は頭をポンポンしてきた。言葉以上に愁の手の温度からより愁の愛情が伝わってきた。
「うん。ありがと。愁もね」
荷解きもまだ終えていないが、同時に荷物の整理も始めているので、お互いに少し疲れている。
それでも気晴らしに気分転換をするのも悪くない。引っ越しのことでゆっくりする時間もなかったので、たまにはこういう時間も必要だ。
「おう。もう着くな」
愁がそう言うと、車内アナウンスが流れた。一駅分ってこんなにもあっという間なんだなと感じた。
「幸奈、行くぞ」
愁が先に立ち上がり、私に手を差し伸べてきた。私はその手を掴んだ。
そしてそのまま手を掴み、私を起き上がらせてくれた。手を繋いで一緒に降車した。
「それじゃ早速、ショッピングモールへと向かいますか」
「そうだね。向かおう」
駅を出てすぐの所にショッピングモールがある。お互いに何度か足を運んでいるため、お店の場所は知っている。
なので迷わずにお店に向かう。上手くいけばスムーズに買い物が済むであろう。
そうとなれば、愁と少しぶらぶらする時間も作れそうだ。
それが実現できるように、少しでも時間を効率良く使おうと思おう。そうとなったらチンタラしている時間が勿体ない。少しだけ歩くスピードを速めた。
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