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8章:新しい一歩と将来への不安…
23話
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そう伝えると、愁が安心した表情を浮かべた。ずっと緊張していたのであろう。彼女のお家に初めて来て。慣れない環境で緊張しない人間なんていない。
私も逆の立場だったら、ずっと緊張しっぱなしだったと思う。私からしたら愁はまだ落ち着いている方だ。私よりも冷静に物事を見てくれている。
「そっか。分かった。それじゃ幸奈ん家に帰ろう」
愁は私に優しい笑みを向けてくれた。それだけで私は家に帰る緊張が解けた。
「うん。そうだね。帰ろっか。それでもう一度、親と話そう」
最初から同棲を認めてもらえるとは思っていない。何度も粘って説得するつもりでいた。
でもいざ反対されるとショックの方が大きくて。親の反応を受け入れられなかった。
でも今はもう大丈夫。また反対されても、親の気持ちを受け入れることができると思う。愁が私の気持ちも、親の気持ちも受け止めてくれたから。
私ももっと大人になりたい。好きな人に追いつきたい。もっと良い女になりたい。そう思った。
「おう。そうだな。もう一度、話そう」
覚悟を決めて、家に帰ることにした。手はずっと繋いだまま…。
*
家に着いたので、再びインターホンを鳴らした。
鳴らしてすぐに応対してくれた。今度は父が出てくれた。
『はい…』
「お父さん。私。幸奈です」
「はい。今、開けます」
そう言ってから、父はすぐに玄関のドアを開けてくれた。
私達は、「お邪魔します…」と言ってから、家の中へと入った。
「母さんと二人で話したんだが、二人の同棲を許可します」
お父さんがサラッと告げた。私達は拍子抜けした。まだ話し合うつもりで帰って来たから。
「え…?いいの?本当に?」
あまりにもサラッと告げるから、信じられなかった。まだ反対されている方が信じられた。
「本当だよ。父さんは愁くんの誠実な態度に、自分が昔、母さんと結婚する時に挨拶しに行った時のことを思い出してな。まだ若いのに、しっかりしてるし。父さんは愁くんに幸奈を任せてもいいって思えた」
お父さんの気持ちを聞いて、今日のお父さんの対応に納得した。
お父さんは昔の自分と愁を重ね合わせていたみたいだ。だから娘の彼氏に優しい対応ができたみたいだ。
「そう言って下さり、ありがとうございます。お父さんにそう言ってもらえて光栄です。絶対に幸奈さんを悲しません。苦労させません。幸せにします」
これじゃまるで、結婚の挨拶だ。まだプロポーズされていないが、されたような気がした。
いつかプロポーズしてくれるのかな。そんな淡い期待を胸に抱いた。
「娘をよろしくお願いします」
父は深々と頭を下げた。母も遅れて後から頭を下げた。
「はい。こちらこそよろしくお願い致します」
私達も一緒に深々と頭を下げた。同棲を認めてもらえたことに対する敬意を込めて。
これで第一関門はクリアした。あとは愁の両親にご挨拶するのみだ。今度は私の方が緊張感が走る。粗相がないようにしなくてはという焦りもあるし、彼氏の親に挨拶なんて初めてだからドキドキしている。
こんな気持ちを先に愁が味わっていたのかと思うと、改めて愁の落ち着いた対応力に感心した。同じように落ち着いた対応はできないが、迷惑はかけないようにちゃんと挨拶ができたらいいなと思った。
「但し、なるべく帰れる時に二人で顔を出しに帰って来ること。それが父さんからの提案だ」
きっとお母さんの気持ちも考えた上で、お父さんは双方に利点がある案を考えてくれたんだと思う。
私もずっと実家に帰って来ないでいたので、お父さんに反論できない。きっかけがないと帰って来なかったと思うから。
これを機に愁を引き連れて、実家に帰ろうと思う。
「分かった。その案、受け入れるよ。愁、それでいい?」
愁は嫌な顔をせずに、「いいよ」と言ってくれた。
お父さんは愁の言葉を聞いて、安心した表情を浮かべていた。父親として、自分の娘を任せる相手がちゃんとした相手であれば、安心して任せることができる。
きっと挨拶をしに来た段階で、父はもう覚悟を決めていたと思うし、改めてこういった約束事を守り、娘の家族も大事にできるかどうか確認したかったのであろう。
それがちゃんと確認でき、良好な関係を築き上げられることが分かり、父はもう言うことがないみたいだ。安心して娘を任せる父親の顔をしていた。
「お家が決まったら連絡してね。お祝い送るから」
これからは包み隠さずに、彼氏のことを家族にも報告しようと思う。
いつか親戚になるかもしれないから。家族ともっと仲良くなってほしいし、家族にももっと愁の良さを知ってほしい。
そうやってお互いのことを知っていけたらいいなと思った。
「うん。ちゃんと決まったら連絡する」
改めて親の存在の大きさを知った。そしてこれからは親に感謝し、それを行動に移して親孝行ができる娘でいようと誓った。
「…せっかく来て頂いたから、今日はこのまま泊まっていきなさい。愁くん。お酒は飲めるかい?」
父は将来の義理の息子と既にお酒が飲みたいみたいだ。
でも残念ながら、まだ私達は二十歳ではない。あと数ヶ月したら二十歳を越える。その時がくるまでのお楽しみだ。
「すみません。まだ二十歳ではないため、飲めないです。でもお注ぎします」
愁はお父さんの傍に駆け寄り、コップにビールを注いだ。
父は愁が注いでくれたビールを、とても美味しそうに飲んだ。そんな父を見て、早く愁と結婚したいと思った。
「これからよろしくね、愁くん」
父が一言告げた。こんなふうに娘の彼氏を受け入れ、認めてくれる父が私は誇らしかった。
「はい。末長くよろしくお願いします」
本当に末長く続くことを願った。今夜は長い夜になりそうな予感がした。
*
あれから月日が経過し、愁のご両親にも無事に挨拶を済ませた。
うちの両親とは違い、挨拶をして、同棲の報告をした瞬間、すぐに認めてもらえた。
しかも愁のお母さんは、私を優しく迎え入れて下さって。とても好意的で。それが嬉しかった。
すぐに愁のお母さんと意気投合し、仲良くなった。うちのお父さんみたいに、「息子をよろしくね」と言われた。
私は、「任せてください。こちらこそよろしくお願いします」と答えた。
するとお母さんの方から、連絡先を交換しようと提案して下さり、その場でお母さんと連絡先を交換した。
愁曰く、お母さんは娘が欲しかったみたいで。息子の彼女を紹介されて、とても嬉しかったとのこと。
そんな話を聞いてしまったら、もっと仲良くなりたい!と思い、今では積極的に交流を持ち、愁のお母さんと連絡を交わしている。
連絡の内容は主に愁のこと。私の知らない愁の話や、幼い頃の写真などを愁に内緒で送ってくれている。私はその写真を大切に保存し、たまに眺めている。
そんなこんなで、挨拶は無事に済み、一段落している。
しかし、まだ肝心の一緒に住む家が決まっていない。挨拶が済んでから見つけようと二人で決めていたので、これから物件を探しに行くところだ。
学校とバイトを両立しながら、二人で物件を探し、自分達に合う物件を頑張って探している。それもあと少しで落ち着きそうだ。何個かいい物件を見つけたから。その物件に足を運び、実物を見るのが楽しみだ。
最初はどうなることかと思ったが、無事に同棲を認めてもらえた。一気に肩の荷が軽くなった。
これから先、大変なことの方が多いと思う。学生同士の同棲だから余計に…。
それでも今は楽しみの方が勝っていて。この先の未来がどうなるかなんてどうでもいい。今の私達は楽しく生活できればそれだけで幸せで。
早く社会人になって、愁と結婚したい。そして、また両親に挨拶をし、二人の将来を認めてもらえるように、私達は今の暮らしを大切にし、一緒に歩んでいこうと思う。
「幸奈、物件見に行くぞ」
「はーい。今、行きます」
今はまず、物件を探すところから。今日見つかるといいな。そんな期待を胸に膨らませながら、不動産屋さんに赴いた。
私も逆の立場だったら、ずっと緊張しっぱなしだったと思う。私からしたら愁はまだ落ち着いている方だ。私よりも冷静に物事を見てくれている。
「そっか。分かった。それじゃ幸奈ん家に帰ろう」
愁は私に優しい笑みを向けてくれた。それだけで私は家に帰る緊張が解けた。
「うん。そうだね。帰ろっか。それでもう一度、親と話そう」
最初から同棲を認めてもらえるとは思っていない。何度も粘って説得するつもりでいた。
でもいざ反対されるとショックの方が大きくて。親の反応を受け入れられなかった。
でも今はもう大丈夫。また反対されても、親の気持ちを受け入れることができると思う。愁が私の気持ちも、親の気持ちも受け止めてくれたから。
私ももっと大人になりたい。好きな人に追いつきたい。もっと良い女になりたい。そう思った。
「おう。そうだな。もう一度、話そう」
覚悟を決めて、家に帰ることにした。手はずっと繋いだまま…。
*
家に着いたので、再びインターホンを鳴らした。
鳴らしてすぐに応対してくれた。今度は父が出てくれた。
『はい…』
「お父さん。私。幸奈です」
「はい。今、開けます」
そう言ってから、父はすぐに玄関のドアを開けてくれた。
私達は、「お邪魔します…」と言ってから、家の中へと入った。
「母さんと二人で話したんだが、二人の同棲を許可します」
お父さんがサラッと告げた。私達は拍子抜けした。まだ話し合うつもりで帰って来たから。
「え…?いいの?本当に?」
あまりにもサラッと告げるから、信じられなかった。まだ反対されている方が信じられた。
「本当だよ。父さんは愁くんの誠実な態度に、自分が昔、母さんと結婚する時に挨拶しに行った時のことを思い出してな。まだ若いのに、しっかりしてるし。父さんは愁くんに幸奈を任せてもいいって思えた」
お父さんの気持ちを聞いて、今日のお父さんの対応に納得した。
お父さんは昔の自分と愁を重ね合わせていたみたいだ。だから娘の彼氏に優しい対応ができたみたいだ。
「そう言って下さり、ありがとうございます。お父さんにそう言ってもらえて光栄です。絶対に幸奈さんを悲しません。苦労させません。幸せにします」
これじゃまるで、結婚の挨拶だ。まだプロポーズされていないが、されたような気がした。
いつかプロポーズしてくれるのかな。そんな淡い期待を胸に抱いた。
「娘をよろしくお願いします」
父は深々と頭を下げた。母も遅れて後から頭を下げた。
「はい。こちらこそよろしくお願い致します」
私達も一緒に深々と頭を下げた。同棲を認めてもらえたことに対する敬意を込めて。
これで第一関門はクリアした。あとは愁の両親にご挨拶するのみだ。今度は私の方が緊張感が走る。粗相がないようにしなくてはという焦りもあるし、彼氏の親に挨拶なんて初めてだからドキドキしている。
こんな気持ちを先に愁が味わっていたのかと思うと、改めて愁の落ち着いた対応力に感心した。同じように落ち着いた対応はできないが、迷惑はかけないようにちゃんと挨拶ができたらいいなと思った。
「但し、なるべく帰れる時に二人で顔を出しに帰って来ること。それが父さんからの提案だ」
きっとお母さんの気持ちも考えた上で、お父さんは双方に利点がある案を考えてくれたんだと思う。
私もずっと実家に帰って来ないでいたので、お父さんに反論できない。きっかけがないと帰って来なかったと思うから。
これを機に愁を引き連れて、実家に帰ろうと思う。
「分かった。その案、受け入れるよ。愁、それでいい?」
愁は嫌な顔をせずに、「いいよ」と言ってくれた。
お父さんは愁の言葉を聞いて、安心した表情を浮かべていた。父親として、自分の娘を任せる相手がちゃんとした相手であれば、安心して任せることができる。
きっと挨拶をしに来た段階で、父はもう覚悟を決めていたと思うし、改めてこういった約束事を守り、娘の家族も大事にできるかどうか確認したかったのであろう。
それがちゃんと確認でき、良好な関係を築き上げられることが分かり、父はもう言うことがないみたいだ。安心して娘を任せる父親の顔をしていた。
「お家が決まったら連絡してね。お祝い送るから」
これからは包み隠さずに、彼氏のことを家族にも報告しようと思う。
いつか親戚になるかもしれないから。家族ともっと仲良くなってほしいし、家族にももっと愁の良さを知ってほしい。
そうやってお互いのことを知っていけたらいいなと思った。
「うん。ちゃんと決まったら連絡する」
改めて親の存在の大きさを知った。そしてこれからは親に感謝し、それを行動に移して親孝行ができる娘でいようと誓った。
「…せっかく来て頂いたから、今日はこのまま泊まっていきなさい。愁くん。お酒は飲めるかい?」
父は将来の義理の息子と既にお酒が飲みたいみたいだ。
でも残念ながら、まだ私達は二十歳ではない。あと数ヶ月したら二十歳を越える。その時がくるまでのお楽しみだ。
「すみません。まだ二十歳ではないため、飲めないです。でもお注ぎします」
愁はお父さんの傍に駆け寄り、コップにビールを注いだ。
父は愁が注いでくれたビールを、とても美味しそうに飲んだ。そんな父を見て、早く愁と結婚したいと思った。
「これからよろしくね、愁くん」
父が一言告げた。こんなふうに娘の彼氏を受け入れ、認めてくれる父が私は誇らしかった。
「はい。末長くよろしくお願いします」
本当に末長く続くことを願った。今夜は長い夜になりそうな予感がした。
*
あれから月日が経過し、愁のご両親にも無事に挨拶を済ませた。
うちの両親とは違い、挨拶をして、同棲の報告をした瞬間、すぐに認めてもらえた。
しかも愁のお母さんは、私を優しく迎え入れて下さって。とても好意的で。それが嬉しかった。
すぐに愁のお母さんと意気投合し、仲良くなった。うちのお父さんみたいに、「息子をよろしくね」と言われた。
私は、「任せてください。こちらこそよろしくお願いします」と答えた。
するとお母さんの方から、連絡先を交換しようと提案して下さり、その場でお母さんと連絡先を交換した。
愁曰く、お母さんは娘が欲しかったみたいで。息子の彼女を紹介されて、とても嬉しかったとのこと。
そんな話を聞いてしまったら、もっと仲良くなりたい!と思い、今では積極的に交流を持ち、愁のお母さんと連絡を交わしている。
連絡の内容は主に愁のこと。私の知らない愁の話や、幼い頃の写真などを愁に内緒で送ってくれている。私はその写真を大切に保存し、たまに眺めている。
そんなこんなで、挨拶は無事に済み、一段落している。
しかし、まだ肝心の一緒に住む家が決まっていない。挨拶が済んでから見つけようと二人で決めていたので、これから物件を探しに行くところだ。
学校とバイトを両立しながら、二人で物件を探し、自分達に合う物件を頑張って探している。それもあと少しで落ち着きそうだ。何個かいい物件を見つけたから。その物件に足を運び、実物を見るのが楽しみだ。
最初はどうなることかと思ったが、無事に同棲を認めてもらえた。一気に肩の荷が軽くなった。
これから先、大変なことの方が多いと思う。学生同士の同棲だから余計に…。
それでも今は楽しみの方が勝っていて。この先の未来がどうなるかなんてどうでもいい。今の私達は楽しく生活できればそれだけで幸せで。
早く社会人になって、愁と結婚したい。そして、また両親に挨拶をし、二人の将来を認めてもらえるように、私達は今の暮らしを大切にし、一緒に歩んでいこうと思う。
「幸奈、物件見に行くぞ」
「はーい。今、行きます」
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