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13度:初めての年越し
56話
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そして翌朝。彼の寝息と温もりを感じながら目を覚ました。
「京香さん、おはようございます」
元旦の朝から恋人の爽やかな温かい微笑みで目覚める。とても最高の朝だ。
「おはよう、慧くん」
いつもなら冬休みなんて特にやることがないため、朝早くに起きずに昼近くまで寝ていた。
それが私の中での当たり前だった。だからこそ初詣がとても楽しみである。
「初詣行くの楽しみですね」
そういえば初詣に行くのはいつ以来だろう。
忘れてしまうくらい、久しぶりに初詣に行く。
「楽しみだね。早く支度しないと…」
時間があるので焦る必要はないが、とはいえどもあまりゆっくりしすぎると初詣に行く時間が遅くなってしまう。
そうすればその分、人混みも激化するに違いない。人混み自体は仕方ないが、できれば人混みがそんなに酷くない時を狙いたい。
「俺は朝食の準備をしておきますので、京香さんはゆっくり支度をしてください」
正直、こちらは身支度に時間がかかるので、その間に朝食を作ってもらえるのは助かる。
こういう時、効率良く時間を使えるのは大事だ。こうやって気を遣ってくれる彼氏に感謝した。
「それじゃお言葉に甘えて…。朝食は慧くんに任せたよ」
「はい。お任せください。…とはいえども今日は元旦なので、お雑煮を作ろうかなって思ってます」
元旦の朝といえばお餅だ。お雑煮派またはお汁粉派。
私はどちらも好きなので、どちらでも嬉しい。
「美味しそう…。早く食べたい……」
お雑煮を想像するだけでお腹が空いて、口の中で涎が溢れた。
「俺もお腹が空いてきました。早く食べたいので、早く作っちゃいますね」
先に慧くんがベッドから起き上がった。私も慧くんに続いてベッドから起きた。
慧くんはそのままリビングへと向かい、キッチンで料理を始めた。
私は洗面所へと向かい、支度を始めた。まずは顔を洗い、汚れを落として綺麗にした。
そしてそのままスキンケアをし、肌の調子を整えた。
今度は口腔内を綺麗にするために歯を磨いた。ご飯を食べた後ももちろん歯を磨くが、食べる前にも軽く口の中を綺麗にしておく必要がある。
寝ている間に色んな菌が繁殖するので、起きてすぐに口腔環境を綺麗にしなくてはならない。
普段は時間がないので、口を軽く濯ぐくらいだが、今日はお休みなためいつもより時間があるので、いつもより丁寧にケアをさせてもらった。
洗面所でやれることは終わったので、一旦寝室へと戻り、寝巻きから外へ出かけられる服へと着替えた。
着替えを終えたので、メイク道具を持ってリビングへと向かった。
テーブルの上に鏡を置いて、自分の顔を見ながらメイクをしていく。
メイクは毎朝やっているので、もう慣れたものだ。いつも通りのメイクをしていく。
十五分くらいでメイクを終え、一旦メイク道具を片付けるためにまた寝室へと戻った。
今度はヘアアイロンを手に持って、リビングへと戻った。ストレートアイロンで髪を綺麗にストレートにしていく。
最近、美容院でストレートパーマーをかけたばかりなので、手直しをするといっても軽く直すくらいだが…。
ヘアセットは五分ぐらいで終わった。時間に余裕を持って支度を終えたので、私も朝食の準備を一緒にやることにした。
「慧くん、支度が終わったから手伝いにきたよ」
「ありがとうございます。でも実はもうお皿に装うだけなんですけどね…」
お餅も焼き終え、スープも既に出来上がっている…。
あとは焼いたお餅をスープの中に入れ、具材と一緒にお皿に装るだけの状態だ。
「それじゃお皿に装うね。お皿、これでいい?」
鍋の近くに二枚のお皿が既に準備されている。それを手に取り、慧くんに確認を取る。
「それで大丈夫ですよ。お願いします」
任されたので、私がお皿に装った。
まずはお餅を先に入れ、その後に温かいスープを注ぐ。
「ありがとうございます。あとは俺に任せてください」
上から必要な具材を入れていく。鶏肉、かまぼこ、にんじん、大根、三つ葉…など。
具沢山のお雑煮に心が躍る。早くお雑煮が食べたい。そう思い、装い終わったお皿に手を伸ばす。
「もう運んでもいい?」
「いいですよ。運んでください」
許可をもらえたので、お雑煮が装われたお皿をリビングのテーブルの上まで運んだ。
「運んでくださり、ありがとうございます。それじゃいただきましょう」
慧くんが箸と飲み物を運んでくれたので、食べる準備は整った。
「そうだね。いただきます」
「いただきます…」
お互いにちゃんと手を合わせて、いただきますと言ってから食べ始めた。
まずスープから口をつけた。既に匂いから美味しさが漂っていたので、とても楽しみにしていた。
いざ口をつけた瞬間、口の中に一気にスープの旨みが広がり、匂い以上に美味しいと感じた。
まず出汁がスープの旨味を引き立たせており、絶妙なバランスで配合されている。
それでいて味噌の味も美味しくて。味噌と出汁がお互いの良い味を引き出し合っている。
「…美味しい」
スープだけでもいいから、おかわりしたい。それぐらいとても美味しいスープだ。
「自分で作っておいていうのもなんですが、本当に美味しいです。いつもより良い出汁と良い味噌を買ったからかもしれません」
慧くんの言う通り、良いものを使えばいつもより良い味にはなるかもしれないが、それ以上に慧くんの料理の腕が上手だから、より美味しい料理が作れたんだと思う。
「それもあると思うけど、慧くんの料理の腕が上手だからだよ」
どんな食材でも、慧くんの料理の腕があれば美味しい料理が作れると、私は信じている。
「京香さんにそう言ってもらえてなによりです。これからも腕に縒りをかけて料理させてもらいますね」
今でも充分、彼の料理は美味しい。更に磨きをかけるなんて、本当に彼は素晴らしい人だ。
「私も一緒に頑張りたい。でもそれ以上に慧くんの料理が美味しいから、食べられる喜びもあるんだよね」
食いしん坊と思われたかもしれない。事実なので否定できない…。
「俺もそれは同じ気持ちです。京香さんと一緒に料理をするのも楽しいですが、俺が作った料理を美味しそうに食べる京香さんの顔を見られるのも嬉しいんですよね」
好きな人が自分の幸せそうな姿を見て、幸せだと感じてもらえる。それだけでとても嬉しかった。
「そう言ってもらえて嬉しい。ありがとう。これからも慧くんのご飯、たくさん食べさせてもらうね」
甘えさせてくれる彼に、とことん甘える。美味しい料理に胃袋も心も完全に掴まれている。
普通、胃袋を掴むのは男女逆な気がするが。女性だってこうして胃袋を掴まれることがある。
それぐらい胃袋を掴まれたら、男女関係なしに恋人の料理の腕に虜になってしまうのであった。
「こちらこそ振る舞わせていただきますね」
お正月の朝ならではの美味しい料理を堪能し、出かける前に英気を養えた。
「そろそろ出かけましょうか。準備は大丈夫ですか?」
ちゃんとトイレも行ったし、リップも塗ったので、問題ない。
「大丈夫だよ。出かけられるよ」
「それじゃ行きますか。近場にある神社でも大丈夫ですか?」
神社に拘りがあるわけではないので、私は慧くんさえ良ければそれで構わない。
それにわざわざ人気の神社にまで行くのは人混みが多そうで。できればそれは避けたい。
それなら近所の方がいい。近所の神社だってそれなりに混んでいそうだが、近所ならすぐに帰って来れそうなので、その方が気が楽だ。
「大丈夫だよ。近所の神社に行こう」
私がそう言うと、いつも通り手を繋いで神社まで向かった。
神社に着くと、案の定人が多くて。小さな神社とはいえども、地元住民で溢れ返っていた。
「結構人が多いね…」
「ですね。初めて来るので、ここまで人が多いのは知らなかったです」
いくら近所とはいえども、全く足を伸ばさない場所もある。
私だって自分の家の近所でまだ足を運んだことがない場所がある。
何かきっかけがないとなかなか足を伸ばせない。たまにはこうやって二人で知らない場所へ足を運んでみるのもいいなと思った。
「そうなんだ。なかなか一人だと足を運ぶ機会がないよね」
「そうですね。なかなかないですね。でもこうして京香さんと一緒に来ることができて嬉しいです」
それはこちらも同じ気持ちだ。慧くんと色んな場所へ一緒に行くことができて嬉しい。
「さて、早速参拝しましょうか」
「そうだね。そうしよう」
参拝の列に並ぶ。神社の人混みの大半は参拝する人の列で占めているといっても過言ではない。
だからといって待てないほどの行列ではないので、並んで待っていたらあっという間に自分達の番が回ってきそうだ。
「京香さん、参拝が終わったらおみくじを引きませんか?」
神社といえばおみくじ。子供の頃、神社に行ったら必ずおみくじを引いていた。
それは大人になった今でも同じで。おみくじを引くのは今でも心が躍る。
「いいよ。私も引きたいなって思ってたところ」
慧くんもおみくじを引きたいと思っていたことに安堵した。
なんだかおみくじを引きたいなんて子供みたいで。なかなか自分から引きたいなんて言い出せなかった。
「本当ですか?それなら是非、おみくじを引きましょう!二人で大吉が引けることを願ってます」
慧くんの言う通り、本当にそうなればいいなと思った。
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思ったよりも慧くんは欲まみれのようだ。この爽やかな顔からは想像できない。
「そうなの?たくさんあるんだね」
「そりゃありますよ。まず今年も変わらずに京香さんと幸せに過ごしたいですし、それに京香さんと同棲もしたいですし、今年の大型連休には旅行に行ったりとか、色々なことを京香さんと一緒に叶えたいです」
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