恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

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11度:初めて記念日(慧目線)

39話

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京香さんとお付き合いを始めて、もうすぐで半年を迎える。
京香さんは恋愛経験が少ないため、とても貴重な記念日となる。
大好きな京香さんに喜んでもらえる、素敵な記念日にしたい。
そんな特別な記念日にするには、サプライズで記念日をお祝いするのはどうだろうか。
もし成功したら、京香さんに喜んでもらえるに違いない。
あまりコソコソするのは得意ではないが、サプライズで記念日をお祝いしたいので、内緒で準備を進めることになる。不審がられないようにしたい。
なかなか難しいミッションではあるが、成功させたら二人にって最高の思い出となる。
そう思うと、絶対に成功させたいという気持ちが芽生え始めた。今から早速、プランを練る。
定番なのは高級レストランを予約して、夜景をバックにワインを飲みながら、美味しい料理を食べる。そして、プレゼントも用意しておき、渡す。
果たして京香さんが、こういったサプライズを喜んでくれるのか分からない。
俺は好きな人のためなら、なんだってしたい。金額なんて関係ないし、喜んでもらえることが重要だ。
何が喜んでもらえるかなんて分からない。まだ京香さんのことを知っているようで、知らないことの方が多い。
本当は直接、本人に聞いた方が早いが、サプライズなのでそれができないからこそ、自分で最大限考えなければならない。

でも京香さんなら、俺が京香さんのために用意したサプライズを喜んでくれると思う。
もちろんそれに甘えて、サプライズの準備を怠りたくはない。俺なりに最高のサプライズを用意して、京香さんに喜んでもらいたい。
そう思えば思うほど、京香さんに喜んでもらいたい気持ちが高まり、俺は必死に色々調べた。
調べたら余計に不安な気持ちが芽生えたりもしたが、自分なりに精一杯頑張ることにした。
準備期間中はワクワクした気持ちと、喜んでもらえなかった時のことを考えてしまう自分がいて。気持ちが不安定だった。
それを京香さんに悟られないように、上手く隠しながら一緒に過ごした。
こういう時、彼女が鈍感でよかったと思う。変に誤魔化す必要がないし、自然体で過ごすことができる。

そんなこんなで、なんとか自分のできる範囲内で準備を頑張った。
調べて気になったお店を予約し、特注で発注したケーキを用意した。
それ以外にも準備したサプライズがあるが、それは当日までのお楽しみということで…。
記念日は幸いお休みの日なので、ちょうどその日にお祝いできるのは、俺としては願ったり叶ったりだ。
京香さんは記念日とか意識するのだろうか。俺が勝手に舞い上がっている可能性が高い。

よく誕生日や周年記念を祝う人はいるが、半年記念を祝う人なんて、なかなかいないであろう。
それでも俺は祝いたい。大好きな人とお付き合いすることができて、俺は幸せだ。その気持ちを好きな人と分かち合いたい。
京香さんなら分かってくれると思う。一緒に分かち合ってくれるはず。
そんな淡い期待を胸に、俺は当日まで準備を進めた。もちろん事前にその日を約束し、予定を空けておいてもらった。
やれることはやったので、あとは当日を無事に迎えるのみとなった…。


           *


そして半年記念日当日…。
ドキドキしている自分がいた。サプライズが上手く成功するか不安だし、そもそも俺が用意したサプライズを京香さんに喜んでもらえるかどうかも不安だ。
でもそれ以上に京香さんと一緒に過ごせることが嬉しくて。不安な気持ちより楽しみな気持ちの方が勝っていた。
そんなドキドキした気持ちのまま、俺は車に乗って、京香さんとの待ち合わせ場所に向かう。きっと驚くであろう。俺が車に乗って迎えに行くのだから。
普段、通勤には電車を使用している。車で行く距離ではないのもあるが、駐車代がかかってしまうため、金銭面も考慮して電車で通勤している。
そもそも車を所持している段階で、お金がかかるわけだが。車は何かあった時のために必要なため、一応、所持している。
何かない方がいいのだが、こうして大切な人とお出かけする時に役立つので、車を所持していてよかったなと実感している。

車のエンジンをかけ、京香さんとの待ち合わせ場所へと向かう。
そんなに遠くない場所にあるため、目的地にはすぐに着いてしまう。
数十分車を走らせていると、あっという間に目的地に着いた。
俺は待ち合わせ場所の近くにある駐車場に車を一旦、停めた。
そして、そのまま俺は京香さんと待ち合わせ場所へと向かった。待ち合わせの時間より早めに着いたので、まだ京香さんは来ていない。京香さんより先に着いたことに安心する。
できれば女性を待たせたくない。男が先に着いていたいと昔からそう思い、行動している。
京香さんはしっかりしているため、待ち合わせの時間より早めに来ることが多い。とはいっても、五分前から十分前にやって来ることが多いが…。
なので、俺はそれよりも少し早めに来る。男の方が支度に時間がかからないため、無理なく早めに来ているといった感じだ。
待つこと五分。京香さんがやって来た。俺を見つけた瞬間、慌てて俺の元へと駆け寄ってきた。

「ごめん。待たせちゃったよね…?」

こちらとしては待たされるのが役目なので、仮に本当に遅刻されたとしても何も思わない。
そもそも京香さんはちゃんと時間内に来ているので、問題ない。

「大丈夫ですよ。ちゃんと時間内に間に合ってますので」

俺の言葉を聞いて、京香さんは安心していた。京香さんは真面目なため、ちゃんと時間を守れたかどうか気になるのであろう。
そんな真面目なところも好きだが、たまにはそんなに気にしないでもらえると嬉しいなとも思う。

「そっか。それならよかったです」

いつか京香さんが俺相手なら待たせてもいいと知ってほしい。京香さんなら待たせてもらえる方が嬉しいと。

「京香さん。今日は連れて行きたい所があるんです。俺に付いて来てください」

今日は俺が最初から最後までリードしたい。京香さんを楽しませたい。今日のデートが忘れられないデートになるように。

「うん。いいよ。どこへでも付いていくよ」

京香さんは今日、どこへ行くか知らない。いつも通りのデートを想像しているはず。
これから起こる様々なサプライズにどんな反応を示すのか、今からドキドキしている…。

「そう言ってもらえて嬉しいです。それじゃ早速、俺に付いて来てください」

俺は京香さんの手を取り、歩き始めた。
まずは駐車場へと向かう。その時点でいつもと違うので、京香さんは驚くはず。

「あれ?今日は車なんだね」

熱海旅行以来、京香さんを車に乗せたことはない。普段、殆ど車に乗らないため、久しぶりに車を運転する。
とはいっても、ここ最近はサプライズデートのため、事前に練習のために少しだけ運転していたが。練習の時以外は運転しないため、運転していないに等しい。
そんな状態で車を運転するので、少し緊張している。無事に何事もなく最後まで運転できることを願った。

「はい。今日は車で移動したくて」

別に電車でも構わない場所にあるが、今日は特別な日なので、俺の格好付けのために車で移動したかっただけに過ぎない。
いつか運転にもう少し自信が持てたら、京香さんを乗せて遠出してみたい。
まだ俺にはそんな自信がないため、今は無理せずに自分にできる範囲内でやれることを頑張ろうと思う。
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