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9度:旅行デート
28話
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覚悟を決めた。どんなに抵抗しても、一緒に入ることは変わらない。
だったら潔く一緒に入る方が早い。抵抗すればするほど、より恥ずかしさが増すだけだ。
「それならよかったです。早速、お風呂に入る準備を始めしょう」
慧くんはそう言ってから、すぐにお風呂に入る準備を始めた。
私はただ立ち尽くしながら、それを眺めていることしかできなかった。経験がないから、こういった時にどうしたらいいのか分からない。
それに対して、慧くんは慣れているのか、てきぱき動いている。
その慧くんの様子が、より私の心の不安を煽った。
「準備が整ったので、先に入って待ってますね」
“先に入って待ってます…”。今の私にはその一言がプレッシャーでしかなかった。
あまり待たせるわけにはいかない。待たせすぎてしまうと、慧くんが逆上せちゃう。
かと言って、ささっと準備を済ませて、慧くんが待っているお風呂場に入る勇気はまだない。
覚悟を決めたものの、いざ一緒に入ろうと思うと、まだ心の準備ができていないような気がしてきて。ここから逃げ出したい気持ちに駆られる。
必死に自分の気持ちを抑えている。さすがに逃げるわけにはいかない。だって先に入って待っている慧くんの元へと向かわなければならないから。
そう思ったら、こんなに迷っている自分がバカらしく思えてきた。せっかく恋人との初旅行なんだから、思いっきり楽しまないと損だ。
一緒にお風呂に入るなんて、温泉じゃないとできない。散々見られているのだから今更だ。慧くんだって恥ずかしいに決まってる。
そもそも裸を見られることに抵抗がない人の方がいないと思う。それこそ見られて悦ぶ人なんて変な人だけだ。
そういった趣向はお互いにない。だからこそ、余計に恥ずかしい。
それでもこういった時間はとても大切で。慧くんの温もりを感じられることが心地良くて。幸せだ。
ドキドキしながらも、身に纏っている衣服を一枚ずつ脱いでいく。
全てを脱ぎ終えた私は、タオルを一枚手に取り、そのままお風呂へと向かった。
「…お待たせ」
扉を開け、中に入ると、慧くんは一瞬、目を見開いた。
そして、ニコッと微笑んでから、私を手招いた。
「京香さん、こっちへ来て下さい」
私は手招きに応えるために、ゆっくりと慧くんの元へと近づいた。
「まずは入る前に、シャワーで身体を洗い流してくるね」
恥ずかしさのあまり、逃げたわけじゃない。お風呂に入る前の最低限のマナーとして、取った行動に過ぎない。
わざわざ宣言する必要もないが、慧くんに誤解しないでほしかった。一緒に入るのが嫌で逃げたわけじゃないと…。
「分かりました。気長に待ってますね」
焦らされて飢えた狼みたいな目をしている。これはシャワーを終えた後のことを考えると、何をされるのか分からず、恐怖を感じた。
慧くんと一緒に居ると、色んな自分を知ることができる。時々、そんな自分に戸惑ったり、驚いたりしてしまう。
でも、そんな自分が嫌いじゃない。今までより輝いているような気がして。そんな自分が好きだ。
そんな自分を作ってくれた慧くんが、もっと好きだ。どんどん愛おしさが増していく。
そう思うと、こうして私を求めてくれる慧くんを見れて嬉しく思う。
手早くシャワーを済ませて、慧くんの元へと向かった。慧くんの表情は更に緩み、優しく笑んだ。
「お待たせ致しました…」
ゆっくりと身体を湯の中に入れていく。心地良い湯の温度に、日頃の疲れが解れていく。これこそ至福の時だと実感する。
「…ふぅ。良いお湯」
思わず心の声が漏れてしまう。その声に慧くんも反応する。
「良いお湯ですね。疲れが癒やされます」
慧くんも同じことを考えていたみたいで。より幸福感が増した。
「うん。癒やされるね。毎日こういうお湯に入りたいくらいに…」
実際は特別な時に入るからこそ、いいものなのかもしれない。
頭ではそう分かっていても、つい大袈裟に表現してしまう。それぐらいこの温泉の良さを伝えたいという一心で。必死だった。
「そうですね。特に忙しかった日なんかは、大きいお風呂にゆっくり浸かりたいですよね」
慧くんの言うことも一理ある。改めて大きいお風呂に浸かるのって大事だなと思わされた。
「それいいね。めちゃくちゃ気持ち分かる」
なかなかお風呂が大きいお家に住むのは大変だが、たまに贅沢をしに温泉へ来るのも悪くないかもしれない。
温泉が二人にとって癒しタイムとなりそうだ。共通の時間を持てることに二人の時間が増える喜びを感じる。
「俺はこうして京香さんと一緒に入れることに意味があるんですけどね」
きっと深い意味はない。純粋な気持ちで伝えてくれたと捉えている。
「本当?そう言ってもらえて嬉しい」
「本当ですよ。こうしてたくさんお喋りできますし」
私も一緒に入ってみて、同じことを思った。
今まで恥ずかしい気持ちばかりが先行し、大事なことを見落としていた。
こうやってお喋りしながら、ゆっくりお湯に浸かるのはとても素敵な時間で。また一緒に入ってもいいかもしれない。こういう時間を過ごせるのであれば…。
「そうだね。お喋りするの楽しい」
裸でお喋りしているせいか、いつもよりもっと本音で話せる。まるで心まで裸にされた気分だ。
「俺も楽しいです。京香さんの声、好きなので…」
だったら潔く一緒に入る方が早い。抵抗すればするほど、より恥ずかしさが増すだけだ。
「それならよかったです。早速、お風呂に入る準備を始めしょう」
慧くんはそう言ってから、すぐにお風呂に入る準備を始めた。
私はただ立ち尽くしながら、それを眺めていることしかできなかった。経験がないから、こういった時にどうしたらいいのか分からない。
それに対して、慧くんは慣れているのか、てきぱき動いている。
その慧くんの様子が、より私の心の不安を煽った。
「準備が整ったので、先に入って待ってますね」
“先に入って待ってます…”。今の私にはその一言がプレッシャーでしかなかった。
あまり待たせるわけにはいかない。待たせすぎてしまうと、慧くんが逆上せちゃう。
かと言って、ささっと準備を済ませて、慧くんが待っているお風呂場に入る勇気はまだない。
覚悟を決めたものの、いざ一緒に入ろうと思うと、まだ心の準備ができていないような気がしてきて。ここから逃げ出したい気持ちに駆られる。
必死に自分の気持ちを抑えている。さすがに逃げるわけにはいかない。だって先に入って待っている慧くんの元へと向かわなければならないから。
そう思ったら、こんなに迷っている自分がバカらしく思えてきた。せっかく恋人との初旅行なんだから、思いっきり楽しまないと損だ。
一緒にお風呂に入るなんて、温泉じゃないとできない。散々見られているのだから今更だ。慧くんだって恥ずかしいに決まってる。
そもそも裸を見られることに抵抗がない人の方がいないと思う。それこそ見られて悦ぶ人なんて変な人だけだ。
そういった趣向はお互いにない。だからこそ、余計に恥ずかしい。
それでもこういった時間はとても大切で。慧くんの温もりを感じられることが心地良くて。幸せだ。
ドキドキしながらも、身に纏っている衣服を一枚ずつ脱いでいく。
全てを脱ぎ終えた私は、タオルを一枚手に取り、そのままお風呂へと向かった。
「…お待たせ」
扉を開け、中に入ると、慧くんは一瞬、目を見開いた。
そして、ニコッと微笑んでから、私を手招いた。
「京香さん、こっちへ来て下さい」
私は手招きに応えるために、ゆっくりと慧くんの元へと近づいた。
「まずは入る前に、シャワーで身体を洗い流してくるね」
恥ずかしさのあまり、逃げたわけじゃない。お風呂に入る前の最低限のマナーとして、取った行動に過ぎない。
わざわざ宣言する必要もないが、慧くんに誤解しないでほしかった。一緒に入るのが嫌で逃げたわけじゃないと…。
「分かりました。気長に待ってますね」
焦らされて飢えた狼みたいな目をしている。これはシャワーを終えた後のことを考えると、何をされるのか分からず、恐怖を感じた。
慧くんと一緒に居ると、色んな自分を知ることができる。時々、そんな自分に戸惑ったり、驚いたりしてしまう。
でも、そんな自分が嫌いじゃない。今までより輝いているような気がして。そんな自分が好きだ。
そんな自分を作ってくれた慧くんが、もっと好きだ。どんどん愛おしさが増していく。
そう思うと、こうして私を求めてくれる慧くんを見れて嬉しく思う。
手早くシャワーを済ませて、慧くんの元へと向かった。慧くんの表情は更に緩み、優しく笑んだ。
「お待たせ致しました…」
ゆっくりと身体を湯の中に入れていく。心地良い湯の温度に、日頃の疲れが解れていく。これこそ至福の時だと実感する。
「…ふぅ。良いお湯」
思わず心の声が漏れてしまう。その声に慧くんも反応する。
「良いお湯ですね。疲れが癒やされます」
慧くんも同じことを考えていたみたいで。より幸福感が増した。
「うん。癒やされるね。毎日こういうお湯に入りたいくらいに…」
実際は特別な時に入るからこそ、いいものなのかもしれない。
頭ではそう分かっていても、つい大袈裟に表現してしまう。それぐらいこの温泉の良さを伝えたいという一心で。必死だった。
「そうですね。特に忙しかった日なんかは、大きいお風呂にゆっくり浸かりたいですよね」
慧くんの言うことも一理ある。改めて大きいお風呂に浸かるのって大事だなと思わされた。
「それいいね。めちゃくちゃ気持ち分かる」
なかなかお風呂が大きいお家に住むのは大変だが、たまに贅沢をしに温泉へ来るのも悪くないかもしれない。
温泉が二人にとって癒しタイムとなりそうだ。共通の時間を持てることに二人の時間が増える喜びを感じる。
「俺はこうして京香さんと一緒に入れることに意味があるんですけどね」
きっと深い意味はない。純粋な気持ちで伝えてくれたと捉えている。
「本当?そう言ってもらえて嬉しい」
「本当ですよ。こうしてたくさんお喋りできますし」
私も一緒に入ってみて、同じことを思った。
今まで恥ずかしい気持ちばかりが先行し、大事なことを見落としていた。
こうやってお喋りしながら、ゆっくりお湯に浸かるのはとても素敵な時間で。また一緒に入ってもいいかもしれない。こういう時間を過ごせるのであれば…。
「そうだね。お喋りするの楽しい」
裸でお喋りしているせいか、いつもよりもっと本音で話せる。まるで心まで裸にされた気分だ。
「俺も楽しいです。京香さんの声、好きなので…」
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