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9度:旅行デート
27話
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それはある日突然、慧くんの提案により決まった。
「京香さん、温泉に行きませんか?」
どうしていきなり温泉へ行こうと思ったのだろうか。
慧くんの考えはよく分からないが、温泉に行きたいという提案自体は、私も乗り気だ。
「だね。行こう」
温泉に行くのは久しぶりだ。最後に行ったのは、高校時代の親友と卒業旅行で行った以来…。
今ではお互いに仕事が忙しくて。なかなか休みが合わず。時々会えればいいといった感じだ。
親友の話はさておき、慧くんと温泉旅行…か。今から温泉旅行に行くのが楽しみだ。
「京香さんは行きたい温泉とかありますか?」
自分発信で提案したわけではないので、咄嗟に思い浮かばない。
「うーん…。特に思いつかないや。ごめんね」
謝る必要はないが、一緒に考える場面で一緒に考えることができず。申し訳ないと思い、謝った。
「いえ。それは大丈夫です。京香さんが特に行きたいところがないのでしたら、熱海に行きませんか?」
熱海といえば、イメージが温泉。
良い温泉がたくさんありそうで。想像だけでワクワクしてきた。
「いいね。熱海に行こう」
「それじゃ、熱海に行きましょう。色々調べておきますね」
いつも慧くんがリードしてくれる。私はそれにおんぶで抱っこ状態だ。
甘えてばかりで申し訳なく思う時もあるが、これが私達の形なのだと思う。
だからこういった時は、とことん慧くんに甘えることにしている。
「分かった。よろしくお願いします」
「はい。任せてください」
熱海旅行を楽しみに、計画を立てながら、日々のお仕事を乗り切った。
慧くんが色々調べてくれたお陰で、思ったよりも早く熱海旅行は決行された…。
*
そして、ついに熱海旅行当日を迎えた…。
熱海までは慧くんの車で向かった。慧くんが車を持っていることは知らなかった。たまにはこうしてドライブをするのも悪くないなと思った。
思いの外、あっという間にドライブは終了し、目的地に着いた。
「…ふぅ。空気が澄んでるな」
確かにいつもの都会と比べて、空気が美味しく感じる。
これもきっと趣のある風景が、そう感じさせてくれたのであろう。
「そうだね。空気が美味しいね」
二人で空気を堪能した後、予約をした旅館へと向かった。
旅館に着くと、旅館の従業員さん達が出迎えてくれた。
「本日は園路遥々お越し下さいまして、ありがとうございます。お待ちしておりました」
女将さんが代表して、丁寧に挨拶をしてくれた。
私は女将さんの挨拶を聞いて、今からこの旅館に泊まるんだという実感が湧いてきた。
「チェックインを済まされましたら、お部屋へとご案内させて頂きますので」
一言告げた後、私達の元から離れ、少し遠くから私達を見守ってくれていた。
私達は受付へと向かい、チェックインを済ませた。
そのままお部屋へと案内され、そこで初めてどんなお部屋に泊まるのかを知った。
よくある和室で。部屋の奥を見ると、内風呂がある。
まさかお部屋にもお風呂があるなんて思ってもみなかった。
「すごい…。素敵なお部屋」
あまりにも素敵なお部屋に、私は感動した。
慧くんはいつも私に幸せなサプライズを与えてくれる。その愛の温かさに胸が熱くなった。
「京香さんに喜んでもらえてなによりです」
慧くんも嬉しそうで。私も更に喜びが増した。
この旅行中は心も身体も休まり、日頃の疲れが癒やされそうだ。
「京香さん。せっかくですし、早速温泉に入りませんか?」
温泉のためにここまで来たのだから、入らなきゃ勿体ない。
「そうだね。そうしよっか」
「あの…、京香さん。京香さんさえよければ、一緒に入りませんか?内風呂がありますし」
確かに内風呂はあるが、まさか一緒に入ることになるなんて想像していなかった。
ちょっと抵抗感がある。もう既に裸は見られているとはいえども、それとこれは別なわけで。
でもここで拒否して、変な空気になるのも嫌だ。何て答えたらいいのか迷ってしまい、上手く自分の想いを伝えられずにいた。
「…ダメですか?」
子犬のような目で、慧くんは私に訴えかけてきた。
この目はズルい。この目で見つめられてしまうと、逆らえなくなってしまう。
「…い、いいよ」
気がついたら、口が勝手に動いていた。
承諾してからもう取り消せないことに気がつき、心の中で一人慌てふためく。
「やった。めちゃくちゃ楽しみです」
一緒にお風呂に入るだけなのに、こんなに喜ばれてしまうと、恥ずかしさが込み上げてくる。
世の恋人達は、この時間をどう過ごしているのだろうか。回数を重ねていけば、慣れるものなのだろうか。私は一向に慣れる気がしない。
お風呂自体はまだ一緒に入ったことがない。温泉以外で誰かと一緒に入ることなんて、大人になってからはない。
子供の頃は親と一緒に入ったりしていた。それも小学生ぐらいまでだが…。
それ以降は一人で入るのが当たり前になっていたので、誰かと一緒に入るだけで緊張してしまう…。
高校時代の親友との卒業旅行ももう十年以上前の話で。今の私なら同性のお友達でさえも一緒に入るのは恥ずかしい。
そんな私がまさか彼氏と一緒にお風呂に入る時がくるなんて思ってもみなかった。
恥ずかしさと想像力ばかりが膨らむ。どうやら自分でも気づかないうちに、そういったことを想像してしまうようになってしまったみたいだ。
「それじゃ早速、一緒に入りましょうか」
宿に着いて早々、いきなり一緒に入るの?
もう少し心の準備をする時間が欲しい。今はまだ早い…。
「…京香さん?」
私の返事がないことを不安に思ったのか、顔を覗き込まれた。
目が合った瞬間、もう逃げられないことを悟った。
「ごめん。ぼーっとしてた。でももう大丈夫」
「京香さん、温泉に行きませんか?」
どうしていきなり温泉へ行こうと思ったのだろうか。
慧くんの考えはよく分からないが、温泉に行きたいという提案自体は、私も乗り気だ。
「だね。行こう」
温泉に行くのは久しぶりだ。最後に行ったのは、高校時代の親友と卒業旅行で行った以来…。
今ではお互いに仕事が忙しくて。なかなか休みが合わず。時々会えればいいといった感じだ。
親友の話はさておき、慧くんと温泉旅行…か。今から温泉旅行に行くのが楽しみだ。
「京香さんは行きたい温泉とかありますか?」
自分発信で提案したわけではないので、咄嗟に思い浮かばない。
「うーん…。特に思いつかないや。ごめんね」
謝る必要はないが、一緒に考える場面で一緒に考えることができず。申し訳ないと思い、謝った。
「いえ。それは大丈夫です。京香さんが特に行きたいところがないのでしたら、熱海に行きませんか?」
熱海といえば、イメージが温泉。
良い温泉がたくさんありそうで。想像だけでワクワクしてきた。
「いいね。熱海に行こう」
「それじゃ、熱海に行きましょう。色々調べておきますね」
いつも慧くんがリードしてくれる。私はそれにおんぶで抱っこ状態だ。
甘えてばかりで申し訳なく思う時もあるが、これが私達の形なのだと思う。
だからこういった時は、とことん慧くんに甘えることにしている。
「分かった。よろしくお願いします」
「はい。任せてください」
熱海旅行を楽しみに、計画を立てながら、日々のお仕事を乗り切った。
慧くんが色々調べてくれたお陰で、思ったよりも早く熱海旅行は決行された…。
*
そして、ついに熱海旅行当日を迎えた…。
熱海までは慧くんの車で向かった。慧くんが車を持っていることは知らなかった。たまにはこうしてドライブをするのも悪くないなと思った。
思いの外、あっという間にドライブは終了し、目的地に着いた。
「…ふぅ。空気が澄んでるな」
確かにいつもの都会と比べて、空気が美味しく感じる。
これもきっと趣のある風景が、そう感じさせてくれたのであろう。
「そうだね。空気が美味しいね」
二人で空気を堪能した後、予約をした旅館へと向かった。
旅館に着くと、旅館の従業員さん達が出迎えてくれた。
「本日は園路遥々お越し下さいまして、ありがとうございます。お待ちしておりました」
女将さんが代表して、丁寧に挨拶をしてくれた。
私は女将さんの挨拶を聞いて、今からこの旅館に泊まるんだという実感が湧いてきた。
「チェックインを済まされましたら、お部屋へとご案内させて頂きますので」
一言告げた後、私達の元から離れ、少し遠くから私達を見守ってくれていた。
私達は受付へと向かい、チェックインを済ませた。
そのままお部屋へと案内され、そこで初めてどんなお部屋に泊まるのかを知った。
よくある和室で。部屋の奥を見ると、内風呂がある。
まさかお部屋にもお風呂があるなんて思ってもみなかった。
「すごい…。素敵なお部屋」
あまりにも素敵なお部屋に、私は感動した。
慧くんはいつも私に幸せなサプライズを与えてくれる。その愛の温かさに胸が熱くなった。
「京香さんに喜んでもらえてなによりです」
慧くんも嬉しそうで。私も更に喜びが増した。
この旅行中は心も身体も休まり、日頃の疲れが癒やされそうだ。
「京香さん。せっかくですし、早速温泉に入りませんか?」
温泉のためにここまで来たのだから、入らなきゃ勿体ない。
「そうだね。そうしよっか」
「あの…、京香さん。京香さんさえよければ、一緒に入りませんか?内風呂がありますし」
確かに内風呂はあるが、まさか一緒に入ることになるなんて想像していなかった。
ちょっと抵抗感がある。もう既に裸は見られているとはいえども、それとこれは別なわけで。
でもここで拒否して、変な空気になるのも嫌だ。何て答えたらいいのか迷ってしまい、上手く自分の想いを伝えられずにいた。
「…ダメですか?」
子犬のような目で、慧くんは私に訴えかけてきた。
この目はズルい。この目で見つめられてしまうと、逆らえなくなってしまう。
「…い、いいよ」
気がついたら、口が勝手に動いていた。
承諾してからもう取り消せないことに気がつき、心の中で一人慌てふためく。
「やった。めちゃくちゃ楽しみです」
一緒にお風呂に入るだけなのに、こんなに喜ばれてしまうと、恥ずかしさが込み上げてくる。
世の恋人達は、この時間をどう過ごしているのだろうか。回数を重ねていけば、慣れるものなのだろうか。私は一向に慣れる気がしない。
お風呂自体はまだ一緒に入ったことがない。温泉以外で誰かと一緒に入ることなんて、大人になってからはない。
子供の頃は親と一緒に入ったりしていた。それも小学生ぐらいまでだが…。
それ以降は一人で入るのが当たり前になっていたので、誰かと一緒に入るだけで緊張してしまう…。
高校時代の親友との卒業旅行ももう十年以上前の話で。今の私なら同性のお友達でさえも一緒に入るのは恥ずかしい。
そんな私がまさか彼氏と一緒にお風呂に入る時がくるなんて思ってもみなかった。
恥ずかしさと想像力ばかりが膨らむ。どうやら自分でも気づかないうちに、そういったことを想像してしまうようになってしまったみたいだ。
「それじゃ早速、一緒に入りましょうか」
宿に着いて早々、いきなり一緒に入るの?
もう少し心の準備をする時間が欲しい。今はまだ早い…。
「…京香さん?」
私の返事がないことを不安に思ったのか、顔を覗き込まれた。
目が合った瞬間、もう逃げられないことを悟った。
「ごめん。ぼーっとしてた。でももう大丈夫」
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