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9.5度:行き場のない想い(※慧目線)
19話
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こんなの、子供じみていると分かっていながらも、自分の気持ちを抑えきれなかった。
「京香さん、もう一回してもいいですか?」
優しい京香さんは、俺の我儘に何度も応じてくれる。
俺はそれに甘えて、自分の気持ちを何度も京香さんにぶつけていく。
気がついたら、京香さんの身体にはたくさんの赤い跡が…。
自分でも無意識のうちに、たくさんキスマークを付けていた。しかも見えるところに。
こんなに激しい感情になるのは初めてで。自分でも自分に戸惑っていた。
そんな自分が怖くて。敢えて京香さんとは何もしないで過ごす日もあった。
穏やかな感情で過ごす時間があると、すごく安心した。
でも、好きな人とは触れ合いたい。京香さんの温もりがないと、生きられない身体になっていた。
とはいっても、ただ一緒に過ごせるだけでも充分、幸せだ。相手が京香さんだから…。
いつからか気がつかないうちに、歯車は狂い始めていた。
気がつかないまま、俺は自分を正当化しようとしていた…。
どんなに牽制をかけても、如月という男は諦めなかった。
職場でも我を忘れて、如月とバチバチしてしまった。
一応、本人の前では、先輩なのでさん付けで呼んでいるが、心の中では憎いので、呼び捨てにしている。
こんなの京香さんに知られたら、引かれて嫌われるかもしれないけど…。
でも俺の正直な気持ちは、ひたすら憎くて仕方がなかった。
そんな俺の態度は、本当に大人気なくて。京香さんに叱られた。
反省した。焦る気持ちよりも、好きな人を守る方が大切だと気づかされたからである。
せめて相手よりも先に謝ろうと思い、謝った。
俺が先に謝ったことに、京香さんは安心してくれた。俺は優越感に浸った。
その時は勝ち誇った気持ちになったが、後々になってまた焦りが募り始めた。
そんな俺を見兼ねて、京香さんが提案してくれた。“昼休憩以外の時間も、一緒に休憩しない?”…と。
その言葉だけでも嬉しかった。これからは職場でも堂々と京香さんと一緒に過ごせる。
これで如月を黙らせることができる。俺はまた優越感に浸った。
そんな俺の油断が、新たなトラブルを巻き起こした。
*
それは二人ですぐに作戦を立てた時のことだった。
休憩時間がやってきたと同時に、俺の元へ京香さんが来る予定だった。
そのタイミングを狙って、如月は京香さんに近づいた。
俺はその光景を目の当たりにしても、一歩も動けなかった。
事態を悪化させたくないという気持ちもあったが、身体が凍りついてしまい、動かそうとしても動けなかった。
そんな自分がとても情けなくて。自分にイライラした。
京香さんが走って逃げ去るまで、俺の身体は動き出せなかった。
俺は慌てて、京香さんを追いかけ、なんとか如月が見つける前に見つけ出すことができた。
見つけた瞬間、抱きしめずにはいられなかった。
俺が守れなかった悔しさと、泣いていたであろうその顔を見たら、これからは俺が絶対に京香さんを守ると誓った。
“俺は京香さんのためなら、なんだってできますので…”
その言葉に嘘偽りはない。本当に京香さんのためなら、なんだってできる。
でも今思えば、俺のそのたった一言が、京香さんの心を苦しめていたのかもしれない。
本当は心の中で、如月に盗られたくないということだけを必死に考えていた。
その結果、京香さんの心を傷つけた。次の日、隣に京香さんの姿はなかった。
俺の心の中にぽっかりと穴が空いた。また大切な人を失うのではないかという恐怖に襲われた。
もう大切な人を失いたくない。だから、俺はここで変わることを決意した。
まずはちゃんと京香さんに謝りたい。そして、その上で京香さんをたくさん甘やかしたい。
如月とは正々堂々と勝負し、その上でちゃんと京香さんの彼氏として、堂々と隣に立ちたい。
俺は覚悟を決めた。もう逃げないと。そんな決意をした裏で、向こうも新たな作戦を考え、動き出そうとしていた。
まだそのことに気づいていない俺は、どうやって京香さんに謝って仲直りをしようか、考えていた…。
「京香さん、もう一回してもいいですか?」
優しい京香さんは、俺の我儘に何度も応じてくれる。
俺はそれに甘えて、自分の気持ちを何度も京香さんにぶつけていく。
気がついたら、京香さんの身体にはたくさんの赤い跡が…。
自分でも無意識のうちに、たくさんキスマークを付けていた。しかも見えるところに。
こんなに激しい感情になるのは初めてで。自分でも自分に戸惑っていた。
そんな自分が怖くて。敢えて京香さんとは何もしないで過ごす日もあった。
穏やかな感情で過ごす時間があると、すごく安心した。
でも、好きな人とは触れ合いたい。京香さんの温もりがないと、生きられない身体になっていた。
とはいっても、ただ一緒に過ごせるだけでも充分、幸せだ。相手が京香さんだから…。
いつからか気がつかないうちに、歯車は狂い始めていた。
気がつかないまま、俺は自分を正当化しようとしていた…。
どんなに牽制をかけても、如月という男は諦めなかった。
職場でも我を忘れて、如月とバチバチしてしまった。
一応、本人の前では、先輩なのでさん付けで呼んでいるが、心の中では憎いので、呼び捨てにしている。
こんなの京香さんに知られたら、引かれて嫌われるかもしれないけど…。
でも俺の正直な気持ちは、ひたすら憎くて仕方がなかった。
そんな俺の態度は、本当に大人気なくて。京香さんに叱られた。
反省した。焦る気持ちよりも、好きな人を守る方が大切だと気づかされたからである。
せめて相手よりも先に謝ろうと思い、謝った。
俺が先に謝ったことに、京香さんは安心してくれた。俺は優越感に浸った。
その時は勝ち誇った気持ちになったが、後々になってまた焦りが募り始めた。
そんな俺を見兼ねて、京香さんが提案してくれた。“昼休憩以外の時間も、一緒に休憩しない?”…と。
その言葉だけでも嬉しかった。これからは職場でも堂々と京香さんと一緒に過ごせる。
これで如月を黙らせることができる。俺はまた優越感に浸った。
そんな俺の油断が、新たなトラブルを巻き起こした。
*
それは二人ですぐに作戦を立てた時のことだった。
休憩時間がやってきたと同時に、俺の元へ京香さんが来る予定だった。
そのタイミングを狙って、如月は京香さんに近づいた。
俺はその光景を目の当たりにしても、一歩も動けなかった。
事態を悪化させたくないという気持ちもあったが、身体が凍りついてしまい、動かそうとしても動けなかった。
そんな自分がとても情けなくて。自分にイライラした。
京香さんが走って逃げ去るまで、俺の身体は動き出せなかった。
俺は慌てて、京香さんを追いかけ、なんとか如月が見つける前に見つけ出すことができた。
見つけた瞬間、抱きしめずにはいられなかった。
俺が守れなかった悔しさと、泣いていたであろうその顔を見たら、これからは俺が絶対に京香さんを守ると誓った。
“俺は京香さんのためなら、なんだってできますので…”
その言葉に嘘偽りはない。本当に京香さんのためなら、なんだってできる。
でも今思えば、俺のそのたった一言が、京香さんの心を苦しめていたのかもしれない。
本当は心の中で、如月に盗られたくないということだけを必死に考えていた。
その結果、京香さんの心を傷つけた。次の日、隣に京香さんの姿はなかった。
俺の心の中にぽっかりと穴が空いた。また大切な人を失うのではないかという恐怖に襲われた。
もう大切な人を失いたくない。だから、俺はここで変わることを決意した。
まずはちゃんと京香さんに謝りたい。そして、その上で京香さんをたくさん甘やかしたい。
如月とは正々堂々と勝負し、その上でちゃんと京香さんの彼氏として、堂々と隣に立ちたい。
俺は覚悟を決めた。もう逃げないと。そんな決意をした裏で、向こうも新たな作戦を考え、動き出そうとしていた。
まだそのことに気づいていない俺は、どうやって京香さんに謝って仲直りをしようか、考えていた…。
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