恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

文字の大きさ
上 下
6 / 56
4度:頂上で…

6話

しおりを挟む
「お待たせしました、どうぞ」

まさか、代わりに一人で買ってきてくれるなんて、思ってもみなかった。
私が恋愛経験に乏しいから、こういったことを予測できないのかもしれない。
年下に奢らせてしまったことを、申し訳なく思った。

「ごめんね。慧くんに買いに行かせちゃって…」

「気にしないでください。俺がやりたくてやったことなんで」

そう言われてしまうと、慧くんの優しさが嬉しいと思ってしまう。
なので、ここは慧くんのお言葉に甘えることにした。

「ありがとう。それじゃ遠慮なく、いただきます…」

目の前に置かれた食べ物や飲み物を手に取り、口付けた。
美味しい。慧くんと一緒に食べているから、いつもの何倍も美味しく感じるのかもしれない。

「美味しい…」

「はい。美味しいですね」

慧くんもとても美味しそうな表情を浮かべていた。
好きな人と一緒に居ると、どんなことでも幸せを感じられるなと思った。

「京香さん。食べ終わったら、またアトラクションに乗りませんか?」

このままずっとここでゆっくりしていても構わないが、慧くんがそうしたいのであれば、私は別にそれで構わなかった。

「いいよ。そうしよっか」

私がそう言ったら、慧くんは安心したみたいで。そこまでして乗りたいアトラクションがあるんだなと思った。

「それでは、食べ終わったら、アトラクションに向かいましょう」

慧くんの満面の笑みに、私の心は射抜かれたのであった…。


           *


昼食を食べ終え、真っ先にアトラクションへと向かった。
向かった先は、コーヒーカップだった。

「京香さん、コーヒーカップは大丈夫ですか?」

乗る前に確認を取ってくれる、慧くんの優しさが素敵だなと感心した。

「うん。大丈夫だよ。でも、あんまり激しく回さないでもらえると助かる」

激しく回されると、目が回ってしまうので、そこさえ気をつけてもらえれば、基本大丈夫だ。

「安心してください。僕もあまり回しすぎると、目が回ってしまうので、程々に回しますよ」

その言葉が聞けて、私は安心した。
でも、苦手なのに、どうしてコーヒーカップに乗りたいのだろうか。慧くんの意図が分からなかった。

「そうなの?本当に?」

もしかしたら、私に気を使ってそう言ってくれているのかもしれない。
でも、本当に苦手な可能性だってある。その場合は二人して無理して乗る必要はない。その分、違うアトラクションに乗ればいいだけの話だ。

「本当ですよ。でも、コーヒーカップに乗るのが好きなんです」

どうやら、コーヒーカップが好きなようだ。
それなら、乗る理由がある。

「そっか。それなら、コーヒーカップに乗るの、楽しみだね」

慧くんの好きなものを知れて、慧くんとの距離が縮んだような気がした。

「はい。とても楽しみです!」

私達はコーヒーカップに乗り、楽しんだ。
その勢いのまま、色んなアトラクションに乗った。
気がついたら、日が暮れ始めていた。

「京香さん、次で最後のアトラクションです」

そう言われて、連れて来られたのは、観覧車だった…。

「高い所は大丈夫ですか?」

苦手ではないので、「大丈夫だよ」と答えた。

「それならよかったです。早速、乗りましょう」

順番に回ってきたゴンドラに乗った。
お互いに向き合う形で座った。

「京香さんと一緒に観覧車に乗れて嬉しいです」

どうして、慧くんはこんなにも私を喜ばせる言葉が言えるのだろうか。
紅い夕陽のように、私の頬は赤く染まっていた。

「私も嬉しいよ」

私がそう言った瞬間、慧くんの表情は真剣な表情に変わった。

「そっちに行ってもいいですか?」

どうやら、私の隣に来たいみたいだ。
拒否する理由がないので、「いいよ」と答えた。
私の答えを聞いて、慧くんが私の隣に座った。
私の鼓動は一気に高鳴った。

「京香さん。もうすぐ頂上ですね」

慧くんの言葉を聞き、私は上を見上げた。
まだ乗ったばかりだと思っていたのに、あっという間に上の方まで来ていたみたいだ。

「本当だ。結構、上の方だね」

次の瞬間、私は腕を掴まれ、向きを慧くんの方に変えられた。
そして、そのまま慧くんは私の唇にキスをした。
時が止まったかのように感じた。まるで少女漫画みたいなシチュエーションだなと思った。

「頂上でキスをすると、そのカップルは永遠に結ばれる…という逸話があるんです」

それこそ、少女漫画によくある展開だ。
その展開に、私はひたすらドキドキしていた…。

「そういうのあるよね。すごくドキドキした」

現実でこういうことをする人がいるんだなと思った。

「京香さん、この後、まだ時間はありますか?」

慧くんとのデートがある日に、他の予定なんか入れない。

「あるよ」

「よかったらこの後、家に来ませんか?」

まさか遊園地デートの後に、慧くん家にお邪魔する流れになるなんて、想像すらしていなかった。

「うん。いいよ…」

急遽、慧くん家にお邪魔することになった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。

猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。 『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』 一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。

飲みに誘った後輩は、今僕のベッドの上にいる

ヘロディア
恋愛
会社の後輩の女子と飲みに行った主人公。しかし、彼女は泥酔してしまう。 頼まれて仕方なく家に連れていったのだが、後輩はベッドの上に…

処理中です...