恋の微熱に溺れて…

和泉 花奈

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2度:初デートは甘すぎる...

4話

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お試し…とはいえども、ひょんなことから慧くんとお付き合いを始めることになった。
あの日以来、毎日慧くんとメッセージでやり取りを交わしている。
今までこんな風に男性とメッセージのやり取りを交わしたことがなくて。
ただメッセージのやり取りを交わしているだけなのに、ドキドキしてしまう…。
思い出すだけでドキドキしてしまうのに、この先、私は大丈夫だろうか。

初めてのことに浮かれながら仕事をしていると、スマホのバイブが震えた。
慌ててスマホを確認すると、慧くんからメッセージが届いていた。
メッセージの内容は、《今夜、デートしませんか?》だった。
まさかのデートのお誘いを受けた。もちろん、答えは最初から一つしかなくて。特に予定もないし、できれば好きな人と一緒に居たい。
だから、《いいよ。デートしよっか》と返信した。
夜までドキドキして待てなかった。早く仕事が終わってほしいと願った。


           *


やっと仕事が終わり、夜になった。
これで慧くんと二人っきりになれる!…と思った矢先の出来事であった。

「京香さん、今夜は家に来ませんか?」

…と言われた。男性のお家にお邪魔したことがない私には、想像だけでドキドキしてしまった。

「はい。行きます…」

「どうして、敬語なんですか?可愛いからいいですけど」

可愛いって言われた。自分では可愛いかどうかなんて分からないが、言われて嫌な気はしなかった。

「それじゃ、お家デートは決定で。…手、繋ぎましょうか」

慧くんが手を差し出してきた。
私はその手を取り、慧くん家に着くまでずっと手を繋いでいた。

「ここが俺ん家です…」

慧くん家の玄関の前まで案内され、私は慧くん家まで来たという実感が湧いた。
そして、慧くんはそのまま玄関の鍵を解錠し、玄関の扉を開けてくれた。

「どうぞ。入ってください」

「お邪魔します…」

慧くん家の中へ入った。初めて男性のお家にお邪魔した。さっきよりドキドキが増した…。

「散らかってますが、男の一人暮らしなんで、大目に見てやってください」

慧くんはそう言っているが、充分部屋は綺麗だ。
寧ろお洒落な部屋で。男性の部屋って、こういう感じなんだな…と思った。

「京香さん、どうかしましたか?」

ボーッと突っ立っていたら、慧くんに心配された。
私は慌てて弁明した。

「えっと…その、男性のお家にお邪魔するのが初めてで。どうしたらいいのか分からなくて」

私がそう言った瞬間、慧くは優しく微笑んだ。

「可愛いですね、京香さん」

そう言った後、慧くは私のおでこにキスをした。
不意打ちのキスに、私はドキドキした。

「あの…、恥ずかしい……」

おでことはいえども、キスに変わりない。
でも私とは対照的に、慧くんは余裕な態度だ。
その様子を見て、こういったことに慣れているんだなと思った。

「まだ唇にはキスしていないですよ?」

悪戯を思いついた子供のように、意地悪な笑みを浮かべていた。
私はその笑みに、更に窮地に立たされていた。

「そ、それはそうだけど…、それでも恥ずかしいの……」

私にはこういった経験がないため、余裕がない。
今、この場に好きな人と二人っきりという空間に居るだけで、胸がいっぱいだ。

「実は俺もめちゃくちゃ緊張してます。だって、好きな人が自分ん家に居ると思うだけで、どうにかなりそうです…」

慧くんも余裕がないのだと知り、嬉しく思った。だって、その原因が自分だから。

「そうだったんだ…。私はってきり、めちゃくちゃ余裕があるのかと思ってた」

「そんなの、全然ないです。俺がどれだけ京香さんを想い続けてきたことか」

いつから私を好きなのかは知らないが、自分の想像よりも前から好きなことが分かって、嬉しかった。

「ありがとう。私のことを想い続けてくれて…」

慧くんが思い続けてくれていなかったら、こうして慧くんとお付き合いすることもなかった。
今、こうして、慧くんとお付き合いしているという事実だけで、私は幸せを感じた。

「俺の方こそ、ありがとうございます。こうして、京香さんとお付き合いできて幸せです」

慧くんはいつだって、まっすぐに言葉を伝えてくれる。
そのまっすぐさに、私はいつも心が満たされている。
だから、私は幸せなのだと実感することができる。

「京香さん。唇にキスしてもいいですか?」

首を縦に頷いた。
すると、慧くんは私にキスをしてきた。優しく触れるだけのキスを。

「やっとこうして、京香さんに触れることができたので、今、めちゃくちゃ嬉しいです…」

そっと抱きしめられた。
その温もりに、私は安心した。

「私も嬉しい…」

「本当ですか?もう一回、キスしてもいいですか?」

私ももう一回、キスしたいと思っていたので、「いいよ」と答えた。
すると慧くんは、再び優しいキスをしてくれた。
私には今、これぐいらいで丁度良かった。

「京香さん、ゆっくりで構わないので、こういったことに慣れてくださいね」

いくら経験がなくても、さすがに知っている。
お付き合いするということは、更にこの先の展開もあるということを…。

「う、うん。頑張る…」

私の反応を見て、慧くんは優しく微笑みながら、こう言った。

「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。今はまだ気長に待っていますので」

慧くんの言葉を聞いて、私は安心した。まだ私の心の準備が整っていないから。
慧くんにはたくさん我慢させてしまうことになるかもしれないけど、今はまだ慧くんの言葉に甘えていたい。

「でも、あまり長くは待てませんので…」

耳元で甘く囁かれた。
低い声で囁かれただけでもドキッとするのに、囁かれた内容が内容なだけあって、ドキッとせずにはいられなかった。

「…う、うん。肝に銘じておく」

…としか言えなかった。いつ慣れるのか分からないが、少しずつ慣れていくのを、今は信じるしかなかった。

「我慢してるので、あまり俺を煽らないでくださいね」

慧くんはドキドキさせる天才だ。私よりよっぽど煽り上手だ。

「だ、だって…、そう言うしかないし、私だってそういうことしたくないわけじゃないし……」

私の発言で、慧くんの目が見開いた。
そして、次の瞬間、再び抱きしめられた。

「そうなんですね。俺的には良いことを聞きました」

そう言った後、不意に唇に慧くんの指先が触れた。
妖艶な笑みと指先に、私の心臓は一気にドキドキした。

「これからが楽しみです」

慧くんの一言一言に、私は翻弄されっぱなしなのであった…。
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