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2度:お試しという甘い罠
3話
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「どうして、慧くんが一緒に...?!」
思わず、心の声が漏れてしまった。
好きな人と知らない場所に二人っきりなんて、動揺しない方がおかしい。
「京香さん、何も覚えてないんですね」
全く何も覚えていない。
というか、これってやばい状況なのかな?何か私、やらかしたの?
「ごめんなさい。何も覚えてないです...」
「それもそのはずです。だって京香さん、泥酔して寝ちゃったので。
それで俺が介抱します!って立候補して、ここまで京香さんを連れて来ました」
事の経緯を慧くんから聞き、良い大人が酔っ払って、醜態を晒してしまい、自己嫌悪に陥った。
「迷惑かけてごめん。このお礼は必ずするので...」
この時の私は、自分の発言が取り返しのつかないことになるなんて、思ってもみなかった。
「本当ですか?お礼して下さるって...」
そう言ってしまった手前、後にはもう引けない。
それでも、限度はある。特にお金がかかることとかは...。
「うん。いいよ。私にできる範囲内のことなら...」
一応、先に牽制しておいた。お金がかかることは限度があると...。
慧くんはそんな要求してこないと思うが、必ずすると言った手前、なるべく断らなくても良い道を探してしまう。
きっと一つ仕事を多くやってほしいとか、そういった要求に違いないであろう。
「それじゃ、今日は帰らずに、一晩一緒に京香さんと過ごしたいです」
全く思ってもみなかった方向性に驚きつつ、なんて可愛い要求なんだろうと思った。
「いいよ。それでよければ...」
これでお礼になるのであれば、こちらとしては助かる。少し申し訳ない気持ちもあるが。
「俺、嬉しいです。京香さんと一緒に居られて...」
まるで恋人にでも囁くような言葉を言われ、ドキドキした。
慧くんにこんなことを言われたら、勘違いしちゃう人が続出するに違いない。わざとなのか分からないが、これは勘違いしなくてよかったと、自分を言い聞かせた。
「京香さん、俺...」
なんてことを思った矢先に、意味深な間を慧くんが作った。
それに伴い、一気に緊張感が増した。
「慧くん、どうしたの?」
今から何を言うの?ドキドキでもう何も考えられないよ...。
これ以上、甘い言葉を聞きたくない。言わないで。精一杯の理性で、なんとか勘違いしないように、気持ちを抑えている。
こんな状態で、甘い言葉をずっと囁かれたら、勘違いしない方が難しい。だからそうなる前に、もう何も言わないで…。
その先の言葉を聞きたくないと思いつつ、でも好きな人の言葉だから知りたいという二律背反の気持ちが交錯していた。
「こんなタイミングで言うのはおかしいかもしれないですが、俺、京香さんのことが好きです...」
今、なんて言った?!好きって言った?突然の告白に、私は戸惑っている。
だって、社内で一番人気の彼に告白されるなんて、普通は思わない。特に私のような凡人以下の人間は。
慧くんはそんな私を尻目に、更に畳み掛けてきた。
「お試しで構わないので、俺とお付き合いしてください」
私には恋愛経験がない。お試し...なんて言われても、真に受けていいのか分からない。
でも、慧くんはこんなことを冗談で言う人ではない。ってことは、これは本気で告白され、本気で提案されているということになる。
「えっと…お試しって?」
できればお試しではなく、正式に慧くんとお付き合いしたい。慧くんもそう望んでいると信じたい。
「俺は京香さんが大好きなので、できれば京香さんと色んなことをしてみたいです。例えばキスとか。京香さんさえよければ、それ以上もしてもみたいです」
慧くんとのアレやコレやを、こちらは今まで何度も想像してきた。こちらはとしては願ったり叶ったりだ。それがたとえ一夜だけの関係だとしても。
それよりも今もまだ信じられない。まさか想い人も同じことを考えていたなんて。そんな姿を想像するだけで、眩暈がした。
「お試しじゃ難しいというのでしたら、正式にお付き合いできるまで、キスの先は我慢します。でも、キスと手を繋ぐのだけは、お試し期間中もさせて頂きたいです」
ここまで真摯に自分と向き合ってくれる彼に、落ちない女はいない。
それに私も元々、慧くんが気になっていたので、私としてはそんな相手に告白されて嬉しいし、恋愛経験も欲しかったので、この提案に乗ることにした。
「私でよければ、よろしくお願いします」
キスとか、その先の展開とか、私にはよく分からない。
ただ相手が慧くんなら、初めてを捧げてもいい。そう思った。
「本当ですか?!嬉しいです。京香さんは今日から俺の彼女ですね」
正面から抱きしめられた。抱きしめる力の強さから、想いの強さも伝わってきた。
「俺、すげー幸せです」
いつの間にか、一人称が俺になっていることに気づく。
彼が自然体になっているのかと思うと、嬉しかった。
「私も幸せだよ」
同じように好きだよと言ってあげたいが、今の私にはまだ恥ずかしくて言えない。
いつか言えたらいいなという気持ちを抱きながら、私はこの日、慧くんとお付き合いを始めることになった。
思わず、心の声が漏れてしまった。
好きな人と知らない場所に二人っきりなんて、動揺しない方がおかしい。
「京香さん、何も覚えてないんですね」
全く何も覚えていない。
というか、これってやばい状況なのかな?何か私、やらかしたの?
「ごめんなさい。何も覚えてないです...」
「それもそのはずです。だって京香さん、泥酔して寝ちゃったので。
それで俺が介抱します!って立候補して、ここまで京香さんを連れて来ました」
事の経緯を慧くんから聞き、良い大人が酔っ払って、醜態を晒してしまい、自己嫌悪に陥った。
「迷惑かけてごめん。このお礼は必ずするので...」
この時の私は、自分の発言が取り返しのつかないことになるなんて、思ってもみなかった。
「本当ですか?お礼して下さるって...」
そう言ってしまった手前、後にはもう引けない。
それでも、限度はある。特にお金がかかることとかは...。
「うん。いいよ。私にできる範囲内のことなら...」
一応、先に牽制しておいた。お金がかかることは限度があると...。
慧くんはそんな要求してこないと思うが、必ずすると言った手前、なるべく断らなくても良い道を探してしまう。
きっと一つ仕事を多くやってほしいとか、そういった要求に違いないであろう。
「それじゃ、今日は帰らずに、一晩一緒に京香さんと過ごしたいです」
全く思ってもみなかった方向性に驚きつつ、なんて可愛い要求なんだろうと思った。
「いいよ。それでよければ...」
これでお礼になるのであれば、こちらとしては助かる。少し申し訳ない気持ちもあるが。
「俺、嬉しいです。京香さんと一緒に居られて...」
まるで恋人にでも囁くような言葉を言われ、ドキドキした。
慧くんにこんなことを言われたら、勘違いしちゃう人が続出するに違いない。わざとなのか分からないが、これは勘違いしなくてよかったと、自分を言い聞かせた。
「京香さん、俺...」
なんてことを思った矢先に、意味深な間を慧くんが作った。
それに伴い、一気に緊張感が増した。
「慧くん、どうしたの?」
今から何を言うの?ドキドキでもう何も考えられないよ...。
これ以上、甘い言葉を聞きたくない。言わないで。精一杯の理性で、なんとか勘違いしないように、気持ちを抑えている。
こんな状態で、甘い言葉をずっと囁かれたら、勘違いしない方が難しい。だからそうなる前に、もう何も言わないで…。
その先の言葉を聞きたくないと思いつつ、でも好きな人の言葉だから知りたいという二律背反の気持ちが交錯していた。
「こんなタイミングで言うのはおかしいかもしれないですが、俺、京香さんのことが好きです...」
今、なんて言った?!好きって言った?突然の告白に、私は戸惑っている。
だって、社内で一番人気の彼に告白されるなんて、普通は思わない。特に私のような凡人以下の人間は。
慧くんはそんな私を尻目に、更に畳み掛けてきた。
「お試しで構わないので、俺とお付き合いしてください」
私には恋愛経験がない。お試し...なんて言われても、真に受けていいのか分からない。
でも、慧くんはこんなことを冗談で言う人ではない。ってことは、これは本気で告白され、本気で提案されているということになる。
「えっと…お試しって?」
できればお試しではなく、正式に慧くんとお付き合いしたい。慧くんもそう望んでいると信じたい。
「俺は京香さんが大好きなので、できれば京香さんと色んなことをしてみたいです。例えばキスとか。京香さんさえよければ、それ以上もしてもみたいです」
慧くんとのアレやコレやを、こちらは今まで何度も想像してきた。こちらはとしては願ったり叶ったりだ。それがたとえ一夜だけの関係だとしても。
それよりも今もまだ信じられない。まさか想い人も同じことを考えていたなんて。そんな姿を想像するだけで、眩暈がした。
「お試しじゃ難しいというのでしたら、正式にお付き合いできるまで、キスの先は我慢します。でも、キスと手を繋ぐのだけは、お試し期間中もさせて頂きたいです」
ここまで真摯に自分と向き合ってくれる彼に、落ちない女はいない。
それに私も元々、慧くんが気になっていたので、私としてはそんな相手に告白されて嬉しいし、恋愛経験も欲しかったので、この提案に乗ることにした。
「私でよければ、よろしくお願いします」
キスとか、その先の展開とか、私にはよく分からない。
ただ相手が慧くんなら、初めてを捧げてもいい。そう思った。
「本当ですか?!嬉しいです。京香さんは今日から俺の彼女ですね」
正面から抱きしめられた。抱きしめる力の強さから、想いの強さも伝わってきた。
「俺、すげー幸せです」
いつの間にか、一人称が俺になっていることに気づく。
彼が自然体になっているのかと思うと、嬉しかった。
「私も幸せだよ」
同じように好きだよと言ってあげたいが、今の私にはまだ恥ずかしくて言えない。
いつか言えたらいいなという気持ちを抱きながら、私はこの日、慧くんとお付き合いを始めることになった。
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