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魔法教師、宮廷を出る

55話

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現在に記録される最古の歴史よりも、大昔のお話。

創造主は、最初に作った星“エルディエン”に深い愛着があった。
創造主としてそこに存在し続けていた君主が、自らの意思で生み出し、己の思う美しい世界を詰め込んだ宝箱だから。

真っ白な星に、豊かさの象徴である茶色をエルディエンと言う球体に塗りたくった。その大地ははやがて、小さな新芽を覗かせた。
そして生まれた、豊穣の女神。

若葉色の大地に青々とした緑の色を足せば緑はやがて根を張り大きく育って、それはそれは立派な大樹へと変わった。光合成という現象に近いものにより、魔法の神が生まれ、魔力が大陸中に満ちた。

しかし、どうやら植物は水が無いと上手く育たない。だから創造主は、水源を大陸に追加した。水源は川を作り、大陸の半分に広がるほどの海を作った。
しかし、世界は静止画の様に動かない。ならばと創造主は昼と夜を作る。景色が変わる様を見るのはなんと面白い事かと満足げだが、それもやがては飽きてしまう。

そうだ、星を動かしてみようと風を作る。風はカラリとしていたり冷たかったりといろんな色を見せる。

そして、星が動き出した事で時間がうまれ、季節が誕生し、精霊が誕生し、様々な神がこの星によって生み出される。

そして、様々なかみのてにより生命が誕生した。



なんて言う昔話が子供達の寝物語として語られている。
まぁ、創造主様はこの世界が一番大事な宝物なんだよってのを教える為の物語。

人間を作ったのも、他の種族を作ったのも、魔法の概念を作ったのも、炎を作ったのも、創造主様が作り出した神様だ。
つまるところ、創造主様は自分の創造物以外微塵の興味もないから宝物の中にこの世界の種族は含まれてないのよ。


…と、だれも知らない様などうでも良い話は置いといて、

私は鉱山の街にある、お嬢様専用の別荘地にて紅茶を啜る。ミルクティーはあまり好んで飲まないけど、ロイヤルミルクティーって美味しい。今度からミルクティーはこれにしよ。

ふぅと一息ついてから、鉱山の一件について一通りの説明を始めた。

「_____って事で、ハニービーの件は解決した。魔物も寄ってこない様にはしたけど、これからは魔物に対しての対策はした方がいいと思う。
鉱山の魔法石に魔力を帯びなくなった理由として私の見解としては…ただ単純に、鉱山が寿命を迎えたんだと思う」

ある日突然に、魔力が消えた…と言う事が引っ掛かるけど…

「確認なんだけど、魔宝石が取れなくなる前に、品質の良い上質な魔法石が取れなかった?例えば、有する魔力が普通の魔法石より多く純度が高いもの…とか」
「ありました。
あぁそうです……あの石は、鉱山の魔法石の魔力を凝縮した様な、この世のものとは思えない魔宝石でした」

ぎゅっとドレスを握り、俯く姿。
「でした」と言うのは、何か訳があるのだろう。

「もしかして、盗まれたの?」
「……」

小さく、こくりと頷く。

「侯爵家の屋敷に移送中に……突然、無くなってしまいました。最後の魔法石を運んでいた馬車で、その石だけ…」
「見計ってた様な盗みかただね」
「その石のことはごく一部しか知らない極秘でした。だから、だからっ…!」
「密告者がいるって事?」
「っっ!!」
「それは多分無い。いや、ない訳じゃないけど、むしろそっちのがあり得る話だけど……お嬢様は、その誰かを疑って良いの?私は、“誰か”が情報を密告したんじゃなくて、最初からその魔法石が採れるのを知ってた“誰か”が盗んだんだと思うよ」

“誰か”が、鉱山に何らかの仕掛けをして、“誰か”が膨大な魔力を蓄えた魔法石を人為的に作り出した。

この仮説は、確信が持てなかったけど…そうとしか思えない。

この世界には魔法道具マジックアイテムなんて言う便利なものもあるし、悪魔固有の魔力を奪う魔法もある。魔力を一点に集める魔法があってもおかしくない。

魔法は概念だから、出来ないと思ったことはできないけど、できるって思った事は、どうしてかできちゃうもんなんだよ。

まぁ、魔法神様が許す範囲の事だけだけど。

寿命が近かった鉱山の魔力が枯れる程、一点に集められた形を保った魔宝石をほしがる“誰か”が居たんだ。
何に使うのかは分からないけど、碌な事じゃないだろうねぇ。

「…他の鉱山でもおんなじ様な事が起きてたら大事になる予感」

ぼそりと呟いた言葉は、現実的じゃないけれど何だか現実味を帯びている。

いつも私達を見てた誰かは、何かを危惧していた。
それを阻止しようと動いているのは、何となくわかる。
神子も、何かをしようとしてる。

世界中の色んな所で、不穏な動きがある。

これは、私自身の感覚だから確証は無いけど…ただ本当に、嫌な予感がするんだ。

「まぁ兎に角、魔法石は取れなくなったけど鉱山はこれからも機能していくと思うよ」
「それは…良かったです」
「私が出来ることはここまで。力になれなくてごめんね」
「いえ、此方こそ…キラービーの討伐、感謝致します。報酬は追ってギルドから支給させて頂きます。それから、」

「私は、友人が困ってたから手を貸したんだよ」

どの口が言う…と言う視線を背後から受け、あははと苦笑いをこぼす。
ごめんって。言い訳するつもりはないけどあの時は仕方なかったんだってば。

「今後はお嬢様次第。頑張ってね」
「はい!」
「また何かあったら手を貸すよ」
「その時は宜しくお願いします。私も力になれる事があれば仰ってくださいね!」
「ん、宜しく」

絶対ですよ!と、ぎゅっと手を握られ分かった分かったと頷く。

うちの子が可愛い。

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