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魔法教師、トラブルを呼ぶ
37話
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白の光沢のあるブーツで足音を奏でて隣部屋に続く続き扉を開ける。
待機していた男性陣は、リノンにエスコートされ歩く彼女を見て、息を止めた。
『!?!?』
「これは中々…」
「お姉ちゃん、綺麗…」
「よく似合ってるな」
「傾国の美女とでも謳われるなこれは」
「………美しい」
見知った人の賛辞に混じって囁かれた、見知らぬ男の呟き。
誰?
見知った顔ぶれの中に混じる見知らぬ男性。
首を傾げて、相手をじっと見つめる。
銀色の長髪、キリリと細められた翡翠の瞳。
惚けた様に開いていた口がきゅっと閉じられた。
上等な装いを見た感じ、魔法使いらしい。それも、相当な使い手。
ああ多分この人が同伴者だ。
そう思って、ドレスの裾を掴みカーテシーを取った。
「初めまして、私はセリニオス殿下の魔法教師を勤めておりますマユラと申します」
「あ、ああ……宮廷魔法使い、ノーシス・マギアモールと申します、お噂はかねがね。
お会いできて光栄です、マユラ殿」
「こちらこそ。マギアモール様が私の同伴者でしょうか?」
「はい、本日は私がパートナーを務めさせて頂きます。何卒よろしくお願いします」
差し出された手を取って、手の甲に口つけられる。
……嘘やん。
宮廷魔法使い…、皇帝が認めた優れた魔法使いにのみ与えられる称号で、人数は両手の指にも満たない。
この人はきっと…と言うか絶対、その中でも一番優秀と言って良い人に違いない。
魔力が段違いだ。陛下と同等って本当にすごい。
その上、精霊師なのだろう。翡翠のブローチに擬態しているそれは、上位の精霊。
魔法使いとしてより、精霊師の方がきっと適性が高いだろうに。
メンバーが揃ったと言う事で、マギアモール様に連れられて歩く。
自然と距離が近くなる為、少々ぎこちない。
「……不躾ですが、そのブローチ………、
何の精霊ですか?」
内緒話をする様に顔を近づけ、ブローチを見つめれば、驚いたと言う様にキラリとかソレが輝いた。
「っ!?」
「!!?」
「分かるのですか!?」
「分かるも何も…精霊が見えるのですから、当たり前です」
『初耳です/だよっ!!』
あれ?言ってなかったっけ?
あちゃぁと誤魔化す様に笑って、まあ良いか。と、開き直る。
「それで、何の精霊ですか?」
「……擬態能力の高い私の精霊を見破ったのになぜそんな平然としてるのですか…」
「え?普通は分からないものなのですか?」
こんなにわかりやすいのに!…と言う言葉は言わない事にしよう。
多分これは神子仕様に違いない。それか豊穣の女神様の加護の仕様か…。
多分どっちもかな。
「マギアモール様も精霊が見えるんですね!同じ景色を見れるなんて嬉しいです」
「そうですね、私もです」
まあ良いか…とでも言う様に翡翠の瞳が弧を描いた。
「来なさい、セラス」
“はぁ~い”
ブローチが淡く輝き形を変形させた。
姿を変え、現れたのは新緑の様な緑の精霊。
セラス……意味はオーロラ。
「セラスはオーロラの高位精霊です」
オーロラの精霊って、何だろう?いまいちオーロラの精霊術がピンと来ず首を傾げてしまった。
その様子を見て、クスリと小さく笑われてしまった。
「セラスは主に光や風の精霊術を行使します」
「へぇ」
あぁ…オーロラって大気の酸素とかが衝突して発光する事で発生する現象だっけ?オーロラから生まれた精霊なら、確かに光と風は妥当かな。
発生するのに太陽が関係するって聞くし…。
「凄いですね」
「見てみますか?」
「?何をですか?」
「オーロラをです」
その言葉に驚き、目を見開く。
此処で?
オーロラは北極くらいの寒い所じゃないと発生しないんでしょ?
確かに、見てみたいとは思う。魔法で作れるオーロラはどこまで行っても魔法でしかないから…。
「み、見れるんですか?」
「はい」
「………みてみたいです。でも、今は良いです」
「どうしてでしょう?」
「夜空の下で見るのが、一番綺麗でしょうから」
あっけに取られた様な顔で、でも「確かに」と堪えきれないと吹き出して笑う。
そんなに面白いこと言ったつもりはないのだけど…。
「マユラ殿、良ければノーシスとお呼び下さい。できれば様は無しで…私も、マユラとお呼びして良いですか?」
「ノーシスさん。私も呼び捨てで大丈夫ですよ」
「マユラ…」
大事なものを呼ぶ声に、ぶわぁぁと鳥肌が立つ。いや、嫌な意味じゃなくて‼︎むず痒いと言うか何と言うか…。
恋に疎いただの少女であったなら確実に恋に落ちてた自信がある。
「まぁ…」
愛だの恋だのまやかしの様なそんな感情、興味無いけど。
私が感じるのはただの執着。
私は、私を大切にしてくれる誰かであれば執着心を抱く。その誰かに施すのはきっと苦と思わない。
何て自分勝手なのだろう。
__________だから誰も、私を愛さないで大切にして。
これも、傲慢。
待機していた男性陣は、リノンにエスコートされ歩く彼女を見て、息を止めた。
『!?!?』
「これは中々…」
「お姉ちゃん、綺麗…」
「よく似合ってるな」
「傾国の美女とでも謳われるなこれは」
「………美しい」
見知った人の賛辞に混じって囁かれた、見知らぬ男の呟き。
誰?
見知った顔ぶれの中に混じる見知らぬ男性。
首を傾げて、相手をじっと見つめる。
銀色の長髪、キリリと細められた翡翠の瞳。
惚けた様に開いていた口がきゅっと閉じられた。
上等な装いを見た感じ、魔法使いらしい。それも、相当な使い手。
ああ多分この人が同伴者だ。
そう思って、ドレスの裾を掴みカーテシーを取った。
「初めまして、私はセリニオス殿下の魔法教師を勤めておりますマユラと申します」
「あ、ああ……宮廷魔法使い、ノーシス・マギアモールと申します、お噂はかねがね。
お会いできて光栄です、マユラ殿」
「こちらこそ。マギアモール様が私の同伴者でしょうか?」
「はい、本日は私がパートナーを務めさせて頂きます。何卒よろしくお願いします」
差し出された手を取って、手の甲に口つけられる。
……嘘やん。
宮廷魔法使い…、皇帝が認めた優れた魔法使いにのみ与えられる称号で、人数は両手の指にも満たない。
この人はきっと…と言うか絶対、その中でも一番優秀と言って良い人に違いない。
魔力が段違いだ。陛下と同等って本当にすごい。
その上、精霊師なのだろう。翡翠のブローチに擬態しているそれは、上位の精霊。
魔法使いとしてより、精霊師の方がきっと適性が高いだろうに。
メンバーが揃ったと言う事で、マギアモール様に連れられて歩く。
自然と距離が近くなる為、少々ぎこちない。
「……不躾ですが、そのブローチ………、
何の精霊ですか?」
内緒話をする様に顔を近づけ、ブローチを見つめれば、驚いたと言う様にキラリとかソレが輝いた。
「っ!?」
「!!?」
「分かるのですか!?」
「分かるも何も…精霊が見えるのですから、当たり前です」
『初耳です/だよっ!!』
あれ?言ってなかったっけ?
あちゃぁと誤魔化す様に笑って、まあ良いか。と、開き直る。
「それで、何の精霊ですか?」
「……擬態能力の高い私の精霊を見破ったのになぜそんな平然としてるのですか…」
「え?普通は分からないものなのですか?」
こんなにわかりやすいのに!…と言う言葉は言わない事にしよう。
多分これは神子仕様に違いない。それか豊穣の女神様の加護の仕様か…。
多分どっちもかな。
「マギアモール様も精霊が見えるんですね!同じ景色を見れるなんて嬉しいです」
「そうですね、私もです」
まあ良いか…とでも言う様に翡翠の瞳が弧を描いた。
「来なさい、セラス」
“はぁ~い”
ブローチが淡く輝き形を変形させた。
姿を変え、現れたのは新緑の様な緑の精霊。
セラス……意味はオーロラ。
「セラスはオーロラの高位精霊です」
オーロラの精霊って、何だろう?いまいちオーロラの精霊術がピンと来ず首を傾げてしまった。
その様子を見て、クスリと小さく笑われてしまった。
「セラスは主に光や風の精霊術を行使します」
「へぇ」
あぁ…オーロラって大気の酸素とかが衝突して発光する事で発生する現象だっけ?オーロラから生まれた精霊なら、確かに光と風は妥当かな。
発生するのに太陽が関係するって聞くし…。
「凄いですね」
「見てみますか?」
「?何をですか?」
「オーロラをです」
その言葉に驚き、目を見開く。
此処で?
オーロラは北極くらいの寒い所じゃないと発生しないんでしょ?
確かに、見てみたいとは思う。魔法で作れるオーロラはどこまで行っても魔法でしかないから…。
「み、見れるんですか?」
「はい」
「………みてみたいです。でも、今は良いです」
「どうしてでしょう?」
「夜空の下で見るのが、一番綺麗でしょうから」
あっけに取られた様な顔で、でも「確かに」と堪えきれないと吹き出して笑う。
そんなに面白いこと言ったつもりはないのだけど…。
「マユラ殿、良ければノーシスとお呼び下さい。できれば様は無しで…私も、マユラとお呼びして良いですか?」
「ノーシスさん。私も呼び捨てで大丈夫ですよ」
「マユラ…」
大事なものを呼ぶ声に、ぶわぁぁと鳥肌が立つ。いや、嫌な意味じゃなくて‼︎むず痒いと言うか何と言うか…。
恋に疎いただの少女であったなら確実に恋に落ちてた自信がある。
「まぁ…」
愛だの恋だのまやかしの様なそんな感情、興味無いけど。
私が感じるのはただの執着。
私は、私を大切にしてくれる誰かであれば執着心を抱く。その誰かに施すのはきっと苦と思わない。
何て自分勝手なのだろう。
__________だから誰も、私を愛さないで大切にして。
これも、傲慢。
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