37 / 60
転生美少女、先生をしようと思う
34話
しおりを挟む
『『あの軟膏売って下さい!!』』
これは、マロウさんにハンドクリームセットを渡して早翌朝のことだった。
朝起きて、身支度を済ませ客室を出たと同時のこと。
私の前にはメイド服の下女さん使用人さん達、更にはセリくん付きの侍女まで。
「えーっと、使い心地どうでした?」
あまりの迫力に少々たじろぎながらもなかなか良い反応だと内心ほくそ笑む。
「最高でした!」
「あの軟膏…ハンドクリーム?は、塗ってもベタベタせずスッと馴染みましたし!」
「それに僅かにいい匂い!」
「仕事柄匂いのきついのは付けにくいんですけどアレなら気にもならないし!」
「何より赤切れが嘘みたいに薄くなっちゃいました!!」
「ハーブティーも夜飲んだらぐっすり眠れて朝スッキリ起きられましたし!」
中々の効果だったらしい。
うんうん、やっぱりこういう反応は女の子の方がわかりやすいね。
「じゃあ売ります。
ハンドクリームは2ヶ月分銅貨4枚、香油は1瓶銅貨3枚、ハーブティーは1ヶ月分パックの彩セット分銅貨1枚鉄貨5枚。
セットのご注文銅貨6枚。どうですか?」
『セットで買わせて下さい!!!』
「毎度あり~。
宣伝宜しくお願いします」
事前に作っておいた詰め合わせセットの箱を渡す。皆お金持ってきてたみたいだし、お仕事前だったみたいだからこのまま部屋まで戻るそう。
セット五人分、ハンドクリーム3個、香油1瓶、ハーブティー2セット…計51,000円。
売れた売れた。
「目標は安く量産できるとこかなぁ。この金額だと平民が買うには尻込みしちゃう」
取り敢えず今の優先は、貴族様達に売れるようなやつを作っていこう。
貴族間で流行れば、平民も気になって手を伸ばしやすいものになる。
宣伝は、名家の貴族のご令嬢に頼むのが一番良いと思う。例えば…、
社交界で今一番注目を浴びてるご令嬢…とか。
そう言えば、来週セリくんのデビュタントだったよね?
私には関係ない事だったんだけど……。
少し考えてから、口元を指で隠しながらニヤリと笑う。
効果があっても、見た目が悪かったら駄目だよね。
可愛い容器作らないと。
今夜は寝不足だぁ……、また、二人に怒られちゃうな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ここ数日、何か忘れてると感じてる。
そう、本当に何か忘れてる違和感…ヴァルフゴール見てると思い出せそうなのに、あいつ私のこと避けてやがる。
目を合わせてばサッと逃げていく。
妹さん達の容体が良くなって後は目が覚めるのを待つだけなのに最近は、騎士団の訓練に参加するようになったし、周りとの交流も良いと思うけど、その分顔を合わせる時間が減る。
そう、本当に何か忘れてる。
「何でだろ」
「何がー?」
セリくんとの授業も終わった休憩時間。
メイドさん達の新商品の催促に、あの人達とうとう遠慮しなくなったとゲンナリしていた休憩時間。
何でこんな疲れないといけないのよ。
ちょっとぬるくなった紅茶に口をつけて深くため息を吐いた。
「どうしよう」
地道にコツコツ、そう言うの得意だったんだけど最近はそうも行かなくなった。
行き詰まるってこう言うことだったと最近思い出したよ。
「だから何が?」
「んー?色々……って、アンタレスいつの間に」
「ずっと居たよ」
「そう言えばいたねぇ。」
アンタレスの顔を見て、また溜息をひとつ。
こう…モヤモヤが晴れないのって凄く嫌。具体的に言語化出来ないもどかしさに苛々する。
爪でトントンとテーブルを叩けば小気味の良い音を鳴らす。
「あー、イライラするぅ」
ケーキスタンドのストベリーのミニタルトに手を伸ばしながら囁く。
そう、無性にイライラして仕方がない。無性に糖分を欲している。
「あー、美味しいけど太るやつ~」
魔法を使えばカロリー消費とかそんなご都合な展開はない。減るのは魔力と気力だけ。
「薬草も良い感じに育ってるしアンタレスにもそろそろ手伝って貰おうかな」
「手伝う手伝う。何すれば良い?」
「取り敢えず土地の管理。この間大公閣下に土地を安価で譲って貰ってね、その土地にハーブを色々植えたのよ」
「へぇ。大公とコソコソ会ってると思ったらそんな事してたんだぁ。言ってくれたらよかったのに。
それでそれで、具体的には?」
「商品の在庫第一陣の製作及び、在庫管理」
「…それ僕にできる?」
不安そうに首を傾げる。
うーん、出来ると思うんだけどなぁ。
「製作は割と簡単な奴から始めてくれて良いから。大丈夫、機材は揃えてる」
「在庫管理は?」
「簡単簡単。少ないのバンバン作って、容器とかはバンバン発注すれば良いだけだから」
「売れ残ったりはー?」
「売れ残りはそのあと考えれば良いよ。別に食べる物とかじゃ無いし、期限もあってないような物だし」
「………マユラが言うと説得力ある」
なんか出来るような気がしてきた。
やる気が出てきたのか握り拳を作るのを見て、溜息じゃ無い息をホッと吐く。
一応、最初の内は詳しい人に指導をお願いするし、大丈夫大丈夫。
「ヴァルフゴールは訓練ばっかりで……何で私の側にいないのよぉ。手伝えー」
「マユラの悩みはそれかー」
「コレもそのひとつ」
「心配しないでも、直ぐに戻って来るよ。くっついて片時も離れなかったりしてー」
「それは暑苦しくてヤダ」
筋肉だるまの熱気を想像して、なんかちょっと熱い。
あー、熱い。
頭いたい。
しんどい……。
あー、分かった。このイライラの原因。
そっか、この世界に来てそろそろ二ヶ月だ、油断したぁ。
環境が急に変わったから遅れてるんだなってのは分かってたけど……これ、来てるわ。
「ごめんアンタレス、ちょっと寝るねぇ」
「えっ!ちょっ⁉︎マユラっ!!」
ぐらりと体が傾いた。
ちゃんと支えてくれた体温を感じて、そっと目を閉じる。
そうだ、痛み止め…作ろう。
これは、マロウさんにハンドクリームセットを渡して早翌朝のことだった。
朝起きて、身支度を済ませ客室を出たと同時のこと。
私の前にはメイド服の下女さん使用人さん達、更にはセリくん付きの侍女まで。
「えーっと、使い心地どうでした?」
あまりの迫力に少々たじろぎながらもなかなか良い反応だと内心ほくそ笑む。
「最高でした!」
「あの軟膏…ハンドクリーム?は、塗ってもベタベタせずスッと馴染みましたし!」
「それに僅かにいい匂い!」
「仕事柄匂いのきついのは付けにくいんですけどアレなら気にもならないし!」
「何より赤切れが嘘みたいに薄くなっちゃいました!!」
「ハーブティーも夜飲んだらぐっすり眠れて朝スッキリ起きられましたし!」
中々の効果だったらしい。
うんうん、やっぱりこういう反応は女の子の方がわかりやすいね。
「じゃあ売ります。
ハンドクリームは2ヶ月分銅貨4枚、香油は1瓶銅貨3枚、ハーブティーは1ヶ月分パックの彩セット分銅貨1枚鉄貨5枚。
セットのご注文銅貨6枚。どうですか?」
『セットで買わせて下さい!!!』
「毎度あり~。
宣伝宜しくお願いします」
事前に作っておいた詰め合わせセットの箱を渡す。皆お金持ってきてたみたいだし、お仕事前だったみたいだからこのまま部屋まで戻るそう。
セット五人分、ハンドクリーム3個、香油1瓶、ハーブティー2セット…計51,000円。
売れた売れた。
「目標は安く量産できるとこかなぁ。この金額だと平民が買うには尻込みしちゃう」
取り敢えず今の優先は、貴族様達に売れるようなやつを作っていこう。
貴族間で流行れば、平民も気になって手を伸ばしやすいものになる。
宣伝は、名家の貴族のご令嬢に頼むのが一番良いと思う。例えば…、
社交界で今一番注目を浴びてるご令嬢…とか。
そう言えば、来週セリくんのデビュタントだったよね?
私には関係ない事だったんだけど……。
少し考えてから、口元を指で隠しながらニヤリと笑う。
効果があっても、見た目が悪かったら駄目だよね。
可愛い容器作らないと。
今夜は寝不足だぁ……、また、二人に怒られちゃうな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ここ数日、何か忘れてると感じてる。
そう、本当に何か忘れてる違和感…ヴァルフゴール見てると思い出せそうなのに、あいつ私のこと避けてやがる。
目を合わせてばサッと逃げていく。
妹さん達の容体が良くなって後は目が覚めるのを待つだけなのに最近は、騎士団の訓練に参加するようになったし、周りとの交流も良いと思うけど、その分顔を合わせる時間が減る。
そう、本当に何か忘れてる。
「何でだろ」
「何がー?」
セリくんとの授業も終わった休憩時間。
メイドさん達の新商品の催促に、あの人達とうとう遠慮しなくなったとゲンナリしていた休憩時間。
何でこんな疲れないといけないのよ。
ちょっとぬるくなった紅茶に口をつけて深くため息を吐いた。
「どうしよう」
地道にコツコツ、そう言うの得意だったんだけど最近はそうも行かなくなった。
行き詰まるってこう言うことだったと最近思い出したよ。
「だから何が?」
「んー?色々……って、アンタレスいつの間に」
「ずっと居たよ」
「そう言えばいたねぇ。」
アンタレスの顔を見て、また溜息をひとつ。
こう…モヤモヤが晴れないのって凄く嫌。具体的に言語化出来ないもどかしさに苛々する。
爪でトントンとテーブルを叩けば小気味の良い音を鳴らす。
「あー、イライラするぅ」
ケーキスタンドのストベリーのミニタルトに手を伸ばしながら囁く。
そう、無性にイライラして仕方がない。無性に糖分を欲している。
「あー、美味しいけど太るやつ~」
魔法を使えばカロリー消費とかそんなご都合な展開はない。減るのは魔力と気力だけ。
「薬草も良い感じに育ってるしアンタレスにもそろそろ手伝って貰おうかな」
「手伝う手伝う。何すれば良い?」
「取り敢えず土地の管理。この間大公閣下に土地を安価で譲って貰ってね、その土地にハーブを色々植えたのよ」
「へぇ。大公とコソコソ会ってると思ったらそんな事してたんだぁ。言ってくれたらよかったのに。
それでそれで、具体的には?」
「商品の在庫第一陣の製作及び、在庫管理」
「…それ僕にできる?」
不安そうに首を傾げる。
うーん、出来ると思うんだけどなぁ。
「製作は割と簡単な奴から始めてくれて良いから。大丈夫、機材は揃えてる」
「在庫管理は?」
「簡単簡単。少ないのバンバン作って、容器とかはバンバン発注すれば良いだけだから」
「売れ残ったりはー?」
「売れ残りはそのあと考えれば良いよ。別に食べる物とかじゃ無いし、期限もあってないような物だし」
「………マユラが言うと説得力ある」
なんか出来るような気がしてきた。
やる気が出てきたのか握り拳を作るのを見て、溜息じゃ無い息をホッと吐く。
一応、最初の内は詳しい人に指導をお願いするし、大丈夫大丈夫。
「ヴァルフゴールは訓練ばっかりで……何で私の側にいないのよぉ。手伝えー」
「マユラの悩みはそれかー」
「コレもそのひとつ」
「心配しないでも、直ぐに戻って来るよ。くっついて片時も離れなかったりしてー」
「それは暑苦しくてヤダ」
筋肉だるまの熱気を想像して、なんかちょっと熱い。
あー、熱い。
頭いたい。
しんどい……。
あー、分かった。このイライラの原因。
そっか、この世界に来てそろそろ二ヶ月だ、油断したぁ。
環境が急に変わったから遅れてるんだなってのは分かってたけど……これ、来てるわ。
「ごめんアンタレス、ちょっと寝るねぇ」
「えっ!ちょっ⁉︎マユラっ!!」
ぐらりと体が傾いた。
ちゃんと支えてくれた体温を感じて、そっと目を閉じる。
そうだ、痛み止め…作ろう。
0
お気に入りに追加
924
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
ゆとりある生活を異世界で
コロ
ファンタジー
とある世界の皇国
公爵家の長男坊は
少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた…
それなりに頑張って生きていた俺は48歳
なかなか楽しい人生だと満喫していたら
交通事故でアッサリ逝ってもた…orz
そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が
『楽しませてくれた礼をあげるよ』
とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に…
それもチートまでくれて♪
ありがたやありがたや
チート?強力なのがあります→使うとは言ってない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います
宜しくお付き合い下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる