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能力発動

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「この変態ー‼‼」

 彼女の怒り声とともに、俺に向けて、バレーボール程の火球が勢いよく飛んでくる。

「うおいっ⁉」

 慌てて体をそらした。ぎりかわせた!

 火球は俺を通り過ぎ、後ろにある城壁にぶち当たった。
 
 ボシュウ‼

 俺の耳に焼け焦げる音が聞こえる。おいおいまじかよ⁉

「変態‼ 変態‼ 変態ー‼」

 変態と罵られるたびに繰り出される火球。

「ちょっ⁉ まって⁉ いひゃあー⁉」

 俺はなんとか必死に避ける。最後の火球とかは俺の頬をかすめた。慌てて頬を片手
でさする。火傷してない⁉ してないよね⁉ 

 手に伝わる張りのあるお肌の感覚にホッとする。よかった……、ほんとよかった。
 涙目になりながら両手でそっと自分の頬を労わっていたら、紅蓮髪の美少女が苛立った声をあげる。

「なにキモいことしてんのよ! あと避けるな変態‼」
「きもいとか言うなよ⁉ 頬をかすったんだから! あと避けるわそんなもん‼ 当たったら火傷じゃすまんだろうが‼」

 俺の訴えに、紅蓮髪の美少女は苛立った顔立ちから少し考える様子を見せた。そして、ムッとした顔で俺をねめつける。

「そうね……、ちょっとやりすぎたかも」
「えっ?」

 彼女が少しだけ穏やかな一面をみせる。こ、これは……和解のチャンス‼
 俺は最新の注意を払いながら言葉を紡ぐ。

「こ、ここはお互い、少し冷静になって、話し合いを―」
「火傷程度ですむように調整してあげるわ、この変態。あと狙うのは足だけにしてあげる。動けないようにしたその後に……、たっぷりと話し合いをしてあげようじゃないの、この変態‼」
「それは話し合いじゃなくて確実に尋問だろ⁉ いいっ⁉」

 さっきより小ぶりの火球が次々と俺の足元めがけて飛んでくる。

「ちょっ⁉ うおいっ⁉」

 必死に両足をジタバタ動かし火球を避ける。
 だが慣れない動きはそう続かなかった。

「わわっ⁉」

 俺は自分の足にもつれ、倒れこむ。
 慌てて彼女に言う。

「ちょっと待っ―、」

 俺の足に火球が見事に命中した。スーツのパンツが一気に燃えて、黒い煙がふすふすと出ていた。

「ぎゃああああ⁉」

 も、もう終わりだ!! 俺の両足が黒焦げに!!

「やっと大人しくなったわね」

 紅蓮髪の美少女がニヤリと笑う。悪魔かこいつ⁉

「こ、こんなやり方あるか⁉ めちゃくちゃだろ‼」
「ちゃんと加減してるわよ」
「そんなわけあるか⁉ 見ろよ!! この俺の焦げた両足を!!」

 俺は左手で両足を指し示した。そこには、

「「えっ?」」

 俺と彼女の声がシンクロする。

 そこには、キレイな肌色をした俺の両足があった。

 俺は目をパチクリさせる。スーツのパンツだけが燃えて、俺の素足があらわになったこの状態。俺は左手を伸ばし、自分の足に触れる。手に伝わる張りのあるお肌の感覚に、とりあえず安堵のため息をつく。そのとき俺はある違和感に気付いた。

 スッと滑らかな肌触り。

 まっ、まさか⁉ 

 俺は自分の足を凝視し、驚愕する。

 す、すね毛がない⁉

 脱毛したかのごとく、すべすべキレイな自分のおみ足に目をみはるばかりだった。
 これっぽちもない。割と毛深かった俺のすね毛が‼ まさかこれって、すね毛だけが燃えたのか? しかし何で、すね毛だけが燃えて、俺の両足は無事なんだ?

 ボン。

「いやああああああああ⁉」

 突然俺の足にまた小さな火球が命中する。両足をジタバタしていると、紅蓮髪の美少女が軽蔑するような声をあげる。

「自分の足をなに優しく撫でてんのよ⁉ ほんとキモい‼ この変態‼」
「だからって仕打ちがひどすぎるだろ⁉」

 今度はさすがにやばい⁉ って、あ、あれ? 

 両足の火が消えると、そこにはキレイな肌色の俺の素足。

「なっ⁉」

 彼女は驚きの声をあげる。俺はこの不思議な現象に呆気に取られるばかり。そういや熱さもさほど感じていない。これって一体どういう事だ? ん?

 俺の視界の右下に、小さなウインドウみたいなのが出ていた。

『異世界保険、発動中』

「異世界保険? って、なんだ?」

 そう呟いた時だった。

 俺の目の前に大きめのウインドウが開いた。
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