4 / 35
涙と白いハンカチ
しおりを挟む
アリスの不思議そうな瞳に見つめられ、爽太の顔が強ばる。
「えっと……」
アリスになんとか声をかけようとするも、上手く言葉が出てこない。さっきまで楽しく笑っていた自分が嘘のようだった。
爽太の額に嫌な汗が滲む。
そんな爽太の異変に気付いたのか、アリスが訝し気な目を向けてくる。
爽太の心音が大きく脈打つ。
これから自分が何をしでかすのか、バレたんじゃ……!?
するとアリスが、急にニコッと笑みを見せた。
えっ?
その仕草に、茫然とする爽太。そんな爽太の前で、アリスは手にしているホウキに力を込める。全身を少し前にかがませたかと思うと、
ピョン!
勢いよく飛び跳ねた。
今までで一番高い跳躍。
アリスの水色のスカートがふわりと舞い、白くて艶やかな両足が爽太の目の前であらわになる。
「つっ!?」
爽太は思わず驚きの声を上げた。
その一瞬の出来事に、頬が赤くなる。
着地したアリスは、爽太の顔を覗き込んだ。今の魔女のモノマネはどう? 面白いでしょ? と伺うかのように。
だが、爽太は笑う余裕が全くなかった。思わず視線がアリスの水色のスカートにいってしまう。アリスの白くてキレイな両足と、遊び心を誘惑するように揺れた水色のスカートの映像が頭に焼き付いて離れない。
そして、爽太の心の中の悪魔が囁く。
またとないチャンスだ、と。
「そうた?」
アリスの声にハッとする。慌てて視線を上に戻すと、両頬を少し膨らませ、不満げな表情のアリスがそこに居た。
爽太は、慌てて口を開く。
「いや、あの、そ、その―」
なんとか言葉を紡ごうとしたとき、
「アリスちゃん!!」
アリスの名を呼ぶ大きな声が廊下に響く。
高木の声だ。
アリスがそちらに振り向く。
爽太も視線を移した。
高木が少し焦るような様子で、こちらに早足で近づいてくる。そして爽太に、威嚇するかのような鋭い目つきを向けた。
爽太の脈が速くなる。思わず視線を逸らすと、クラスにまだ残っている男子達や、掃除当番の女子達が目に映る。
男子達は、今しかないぞ! 早く! と急かすような瞳。
女子達は、アリスちゃんに手を出すんじゃないッ! と戒めるような瞳。
両者の思いにきつく挟まれ、爽太の大きな鼓動が、体震わせる。
一体どうすればいいのか。
「そうた?」
「いっ!?」
名を呼ばれ、そちらに顔を向けると、アリスの丸い瞳が爽太を見つめていた。
何か見透かされているような気がして、爽太の額から汗が一筋流れる。だがアリスは――、
ニコッ。
えっ。
とても愛らしい微笑みを爽太に見せた。
爽太の胸が高鳴る。ずっと、このまま見ていたい、そんなことが頭をよぎった。だが―、
視界の端に、高木がもうこちらに迫っているのを見てハッとする。
もう迷う時間がない。
爽太の視線が、アリスの水色のスカートにいく。
ここで怖気づいてしまったら、俺は……、男子皆からきっと、いくじなしと思われる。
爽太は、覚悟を決めた。
もう、やるしかない。
それに―。
アリスに視線を戻す。
明るい笑顔で、ホウキにまたがっている彼女。
アリスなら、謝ったら許してくれる。
そんな身勝手な安心を担保に、爽太は手にしていたホウキを手放した。
アリスの目が、廊下に落ちていくホウキを追いかける。爽太はその隙に自分の両手をアリスのスカートより下に構えた。
カラーン、カラン。
爽太の手放したホウキが廊下に打ち付けられ、乾いた音を立てた。それを合図に、爽太は両手を大きく持ち上げた。
高木をはじめ、クラスメイトが甲高い声を上げざわついた。男子からは歓声が、女子からは非難の声が。
水色のスカートが、アリスの膝丈以上に舞い上がる。
はだけたスカートからは、アリスの瑞々しくてキレイな白い両足。さらに、純白の三角のシルエットがはっきりと見えた。爽太の目が釘付けになる。
ほんのひとときの出来事。ふわっと、水色のスカートが静かに舞い降り、アリスの足の付け根から下を覆い隠した。
ハッと我に返る爽太。しばらく水色のスカートを見つめていた。
すごく怒った顔をしてるんだろうな、とアリスの表情を想像する。
息を飲みつつ、そっと視線を上げ、アリスを見た。
えっ?
爽太は目を丸くする。
アリスは、無表情だった。
予想外のことに、爽太が少し唖然としていると、
バチン!!
「つっ!?」
爽太は何が起きたか一瞬解らなかった。だが、ぐわんと揺れた視界に、左頬に感じる強烈な痛み。アリスに何をされたのか分かった。
爽太は眉間にしわを寄せ、いら立ちをあらわにアリスを見据えた時だった。
じわっ。
アリスの瞳が潤んだ。
なっ!?
初めて見た、アリスの悲し気な顔。
アリスの瞳が潤みを帯びていく。そして瞬きすると、涙がこぼれ落ちた。
そんなアリスの様子に、爽太はもう戸惑うことしかできなかった。予想していた怒った顔はどこにもなかった。爽太の目の前には、ただ悲しく傷ついた、はかなげな女の子がそこにいた。
「ア、 アリス」
爽太が弱々しく声をかけたが、
アリスは爽太の声を無視し、手にしていたホウキを無造作に手放して、くるっと背を向けた。
そして小走りで廊下の向こうへ、高木の横を通り過ぎ去っていった。
唖然とする爽太と男子達をよそに、
「爽太のくず!」「ゴミ!」「最低!」「変態!」と女子達が大きく罵しり、慌ててアリスを追いかけていった。
廊下に茫然と佇む爽太。それを悲痛な顔で見守る教室にいた男子達。
爽太は左頬をさすりながら、自然と俯いてしまった時だった。
視界に白い布みたいなのが落ちていた。
爽太はおもむろにかがみ、弱々しく手を伸ばして拾い上げる。
白くて、キレイなハンカチだった。
これって、アリスの。
スカートがめくり上がった時にポケットから落ちたのだろうか。
爽太は強い罪悪感に包まれながら、力の無い目で白いハンカチを見つめていた。
「えっと……」
アリスになんとか声をかけようとするも、上手く言葉が出てこない。さっきまで楽しく笑っていた自分が嘘のようだった。
爽太の額に嫌な汗が滲む。
そんな爽太の異変に気付いたのか、アリスが訝し気な目を向けてくる。
爽太の心音が大きく脈打つ。
これから自分が何をしでかすのか、バレたんじゃ……!?
するとアリスが、急にニコッと笑みを見せた。
えっ?
その仕草に、茫然とする爽太。そんな爽太の前で、アリスは手にしているホウキに力を込める。全身を少し前にかがませたかと思うと、
ピョン!
勢いよく飛び跳ねた。
今までで一番高い跳躍。
アリスの水色のスカートがふわりと舞い、白くて艶やかな両足が爽太の目の前であらわになる。
「つっ!?」
爽太は思わず驚きの声を上げた。
その一瞬の出来事に、頬が赤くなる。
着地したアリスは、爽太の顔を覗き込んだ。今の魔女のモノマネはどう? 面白いでしょ? と伺うかのように。
だが、爽太は笑う余裕が全くなかった。思わず視線がアリスの水色のスカートにいってしまう。アリスの白くてキレイな両足と、遊び心を誘惑するように揺れた水色のスカートの映像が頭に焼き付いて離れない。
そして、爽太の心の中の悪魔が囁く。
またとないチャンスだ、と。
「そうた?」
アリスの声にハッとする。慌てて視線を上に戻すと、両頬を少し膨らませ、不満げな表情のアリスがそこに居た。
爽太は、慌てて口を開く。
「いや、あの、そ、その―」
なんとか言葉を紡ごうとしたとき、
「アリスちゃん!!」
アリスの名を呼ぶ大きな声が廊下に響く。
高木の声だ。
アリスがそちらに振り向く。
爽太も視線を移した。
高木が少し焦るような様子で、こちらに早足で近づいてくる。そして爽太に、威嚇するかのような鋭い目つきを向けた。
爽太の脈が速くなる。思わず視線を逸らすと、クラスにまだ残っている男子達や、掃除当番の女子達が目に映る。
男子達は、今しかないぞ! 早く! と急かすような瞳。
女子達は、アリスちゃんに手を出すんじゃないッ! と戒めるような瞳。
両者の思いにきつく挟まれ、爽太の大きな鼓動が、体震わせる。
一体どうすればいいのか。
「そうた?」
「いっ!?」
名を呼ばれ、そちらに顔を向けると、アリスの丸い瞳が爽太を見つめていた。
何か見透かされているような気がして、爽太の額から汗が一筋流れる。だがアリスは――、
ニコッ。
えっ。
とても愛らしい微笑みを爽太に見せた。
爽太の胸が高鳴る。ずっと、このまま見ていたい、そんなことが頭をよぎった。だが―、
視界の端に、高木がもうこちらに迫っているのを見てハッとする。
もう迷う時間がない。
爽太の視線が、アリスの水色のスカートにいく。
ここで怖気づいてしまったら、俺は……、男子皆からきっと、いくじなしと思われる。
爽太は、覚悟を決めた。
もう、やるしかない。
それに―。
アリスに視線を戻す。
明るい笑顔で、ホウキにまたがっている彼女。
アリスなら、謝ったら許してくれる。
そんな身勝手な安心を担保に、爽太は手にしていたホウキを手放した。
アリスの目が、廊下に落ちていくホウキを追いかける。爽太はその隙に自分の両手をアリスのスカートより下に構えた。
カラーン、カラン。
爽太の手放したホウキが廊下に打ち付けられ、乾いた音を立てた。それを合図に、爽太は両手を大きく持ち上げた。
高木をはじめ、クラスメイトが甲高い声を上げざわついた。男子からは歓声が、女子からは非難の声が。
水色のスカートが、アリスの膝丈以上に舞い上がる。
はだけたスカートからは、アリスの瑞々しくてキレイな白い両足。さらに、純白の三角のシルエットがはっきりと見えた。爽太の目が釘付けになる。
ほんのひとときの出来事。ふわっと、水色のスカートが静かに舞い降り、アリスの足の付け根から下を覆い隠した。
ハッと我に返る爽太。しばらく水色のスカートを見つめていた。
すごく怒った顔をしてるんだろうな、とアリスの表情を想像する。
息を飲みつつ、そっと視線を上げ、アリスを見た。
えっ?
爽太は目を丸くする。
アリスは、無表情だった。
予想外のことに、爽太が少し唖然としていると、
バチン!!
「つっ!?」
爽太は何が起きたか一瞬解らなかった。だが、ぐわんと揺れた視界に、左頬に感じる強烈な痛み。アリスに何をされたのか分かった。
爽太は眉間にしわを寄せ、いら立ちをあらわにアリスを見据えた時だった。
じわっ。
アリスの瞳が潤んだ。
なっ!?
初めて見た、アリスの悲し気な顔。
アリスの瞳が潤みを帯びていく。そして瞬きすると、涙がこぼれ落ちた。
そんなアリスの様子に、爽太はもう戸惑うことしかできなかった。予想していた怒った顔はどこにもなかった。爽太の目の前には、ただ悲しく傷ついた、はかなげな女の子がそこにいた。
「ア、 アリス」
爽太が弱々しく声をかけたが、
アリスは爽太の声を無視し、手にしていたホウキを無造作に手放して、くるっと背を向けた。
そして小走りで廊下の向こうへ、高木の横を通り過ぎ去っていった。
唖然とする爽太と男子達をよそに、
「爽太のくず!」「ゴミ!」「最低!」「変態!」と女子達が大きく罵しり、慌ててアリスを追いかけていった。
廊下に茫然と佇む爽太。それを悲痛な顔で見守る教室にいた男子達。
爽太は左頬をさすりながら、自然と俯いてしまった時だった。
視界に白い布みたいなのが落ちていた。
爽太はおもむろにかがみ、弱々しく手を伸ばして拾い上げる。
白くて、キレイなハンカチだった。
これって、アリスの。
スカートがめくり上がった時にポケットから落ちたのだろうか。
爽太は強い罪悪感に包まれながら、力の無い目で白いハンカチを見つめていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
一瞬の夏~My Momentary Lover~
clumsy uncle
恋愛
東京でしがないサラリーマン生活を送る健太郎は、32歳を迎えたものの、出会いがなく、結婚どころか彼女すらできないまま、年齢=彼女がいない年数になってしまった。
健太郎は盆休みに、山あいの田舎町である中川町へ里帰りすると、家族や知り合いから縁談が持ち掛けられるが、なかなか気が進まない。
盆入りの日、あちこちの家で迎え火が焚かれる中、町に1軒しかないコンビニへ買い物に出かけた健太郎は、謎の少女・奈緒と出会った。二人は次第に惹かれあい、ついに健太郎にとって念願の、生まれて初めての「彼女」が出来た。しかし奈緒は健太郎に、自分はお盆の間しかこの世に居ることができない、と告げた。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる