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EXTRA(番外編)
【季節ネタ】UWD
しおりを挟む「――今年もついにこの日が来たね……」
「誰が勝っても恨みっこなしだから!」
「もちろんわかってますよ。……昨年の勝者として、今年の自信の程は如何ですか、レンリ?」
「…………」
「そんな目で見なくても、ちゃんと趣旨は忘れてないよ。でもやっぱり、勝負事となったら燃えるのが人の性っていうか、ね?」
「そうですね、勝者の権利も魅力的ですから」
「今年の夏がこれにかかってるって言ってもいいしね!」
「……」
「――それじゃあ、始めようか」
「とりあえず、無意味に微妙なシリアスを演出するのは止めろお前ら」
「あはは、ごめんごめん」
「無意味だなんて。雰囲気作りは結構大事だと思うんですけどね」
「別に演出とかそんなんじゃなかったんだけど……」
「…………」
「わざとやった2人もアレだけど、天然っていうのもどうなの。っていうか一番手に負えないよね」
「……なんかよくわかんないけど、もしかしてオレのこと?」
「珍しく察したのはいいけどわかんないって。ホントいろんな意味で馬鹿だなユズ」
「ぼ、暴言反対!」
「事実は暴言に入りません。ってわけでさっさと話進めるよ。……じゃ、まずユズから」
「! …お、お願いします!」
「いやなんでそんな緊張してんの。まあいいや。えーと、今回ユズは市販のお菓子詰め合わせだったわけだけど」
「うん。トップバッターだったし、あんまりがっつり行くと全員分終わるまでにイヤになっちゃうかなーって」
「新商品から定番お気に入りまで、なかなかにツボをついたラインナップだった。ぶっちゃけちょっと驚いた。むしろ疑った」
「え! 何を?!」
「それをチョイスしたのがあんただってことを。聞いたけど、他の奴らにもリサーチしたんだって?」
「うん。勝負は大事だけど、まず喜んでもらわないと!って思ったし」
「……どうしよう。ユズがまっとうなこと言ってる」
「何その反応!?」
「まぁなんか目頭熱くなるの通り越してニセモノ認定したくなるユズのまっとうっぷりはおいといて。正直言って、かなりポイント高かった。素直に喜べる贈り物っていうのはよかった」
「えへへ、やったー!」
「ってことで、次。ミスミ。……今年はまた手の込んだの選んだな」
「ふふ。趣向は凝らしてこそ、というのが信条ですから」
「だからって本物と見分けのつかないレベルの造花の花束っていうのはな……」
「お気に召しませんでしたか? 貴方、綺麗なもの好きですよね」
「まぁ嫌いじゃないけど……あれ、食べにくい。いろんな意味で」
「……もしかして凝りすぎましたか」
「率直に言えば。おいしいことはおいしかったんだけどね」
「……。……来年に活かします」
「地味に凹んでるね。いい気味だよ」
「うるさいですよ。クリスマスに私が勝ったのまだ根に持ってるんですか。しつこいですね」
「はいはいそこまで。毒舌合戦するつもりなら出て行け」
「……すみません」
「……ごめん」
「次、レンリ。恒例の手作りお菓子だったわけだが、……なんで更に腕上がってんの? パティシエにでもなるの?」
「…………? ……専属なら、なりたい」
「いや雇えないから。というか一般人に専属パティシエなんて必要ないから」
「…………」
「いやなんで残念そうなの」
「っていうか今も似たようなものじゃないっけ? レンリ、お菓子作り趣味みたいになってるし。ごちそうするのも趣味みたいになってるし」
「…………」
「待て、『そういえばそうだな』的に頷くな、満足そうに頬染めるな。っていうか言おう言おうと思ってたけど手の込んだお菓子とかイベント事の時だけでいいから。おいしいけど、材料費とか手間とか考えるとちょっと申し訳ない気分になるから」
「…………」
「そんなあからさまに落ち込むようなことじゃないと思うんだけど」
「別に、レンリは好きでやってるんだから、君が申し訳ない気分になることはないと思うんだけどね」
「そう言われてもなー……まあこれについてはまた今度話そうレンリ。お互い妥協できる点を探ったほうがいい気がするし」
「……わかった」
「で、最後。……あのさ、カンナ。最初に言っとく。目のつけ所はよかったと思うんだよ」
「……それは叩き落とされる前兆にしか思えないんだけど」
「うん、まあ――おいしかったよ。メインに置く以外の可能性の幅広さがよくわかったし。自分の舌の程度が申し訳なくなるレベルで一流揃いだったみたいだし。食材も料理人も」
「君に出すのなら中途半端なものは出したくなかったからね。――それが逆に重かったとか?」
「いや、そこは別に。そんな上等な舌持ってないんだけどなーとかは思ったけど」
「いいんだよ、僕の自己満足もあるんだから。……じゃあ何がダメだったのかな」
「うん、つまりだ。一般庶民に店貸し切った上でのフルコースは荷が勝ちすぎてたっていうか」
「…………。ああ、そっか……感覚の違いか」
「おいしいのは間違いなくても、素直に味わう余裕がね。気にしなくてもいいって言われても、あんな本格的なのでテーブルマナー気にしないでいられるほどマイペースにはなれないんで」
「……ごめん」
「別に謝らなくてもいいんだけどさ。カンナなりに考えた結果の代物だったのはわかってるし。でもまあ、評価は正直に率直にってことだったから」
「いや、言ってもらえてよかったよ。同じ失敗はしないから、次楽しみにしてて」
「次、ねぇ。なんかこれ恒例化してるけど、次があるのは確定なわけ?」
「もちろん」
「いいじゃないですか、一石二鳥なんですし」
「それにオレたちも楽しいし!」
「…………」
「――あー、レンリ。そんな不安な顔しなくても、別に嫌だって言ってるわけじゃないから。ただ色々どうなんだって思わないでもないっていうか、バレンタインとホワイトデーの内容としておかしいだろこれってのが年々強くなってるっていうか」
「外国ではバレンタインに親しい人間に対して贈り物をするわけですし、それほどかけ離れてはいないでしょう?」
「トップバッターになった奴以外バレンタイン思いっきり過ぎるけどな。一週間区切りだから最後の奴なんてホワイトデー前日まで期間に入ってるし」
「全員一斉にやったら君に負担になるのが確実だから、そこは仕方ないよ」
「っていうか日本におけるバレンタインと贈る側と受け取る側が逆転してるのはともかく、内容の優劣で夏の旅行のプランナー決めるってのはどうなの」
「だってこーやって決めるのが一番モメないんだもん」
「もんとか言うな可愛くないうざい」
「ひどっ! いや可愛いって言われもアレだけど!」
「まーいーや。ってことで今回の勝者ユズね。レンリと悩んだけど、精神的な成長とか垣間見えたのもあるし、頑張ったで賞的なものも含めて」
「……さらっと勝者発表しましたね」
「まあ予想はしてたけど……」
「…………」
「……えっ? うそ、オレっ!? やったー!! 今年海! 絶対海にする!!」
「一応おめでとうって言っておくよ。ユズは初めてだったよね、夏の権利勝ち取るの」
「そういえばそうですね。バレンタインは主にレンリが強敵過ぎますし」
「……?」
「その反応からすると、無欲の勝利っていうやつなのかな。僕も来年はレンリを見習ってスタンダードでシンプルな贈り物にしようかなあ」
「あなたに塩を送りたいわけではないですが、レンリと同じ土俵に立って勝てると思わない方がいいですよ。私たちがやれば二番煎じもいいところでしょう」
「……言われてみればそうか。出来ないわけじゃないけど、レンリほどお菓子作りの才能に恵まれてもないし――やっぱり自分に合ったやり方で勝負する方が、勝った時に嬉しいしね」
「同感です」
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