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VS馬鹿ども 思惑渦巻く舞台袖編・2
それはある意味直接的な
しおりを挟む「なんだ、元気そうだな」
「え、……千里さん?」
「それ以外に見えるのか」
「いや見えないですけど。お久しぶりです」
「こちらとしてはそれほど久しぶりな気はしないが。たまたま近くを通ったから寄ったんだが、会えてよかった」
「何かご用事ですか?」
「いいや。またうちの末弟が迷惑をかけ始めたと聞いたから、少し気になっていただけだ」
「迷惑……まあ大雑把に言ったらそうですけど、頷くのも何か違う気が」
「相変わらずお人好しだな」
「その評価も何か釈然としないんですが」
「うちの親族周辺が最近うろうろしてるんだろう。すまないな」
「千里さんたちとご親族は別だっていうのはよくわかってますから」
「それもそうか。……本来は愚弟がそのあたりまで掌握しておくべきなんだが」
「まあ、後継だそうですからね」
「あいつはまだ年若いからな。才覚があるとはいえ、末子で、しかも学生というのは侮られやすい。どこにでも馬鹿はいる」
「言いますね」
「事実だからな。……どうしても、という時は連絡をするように。藍里にでもいいが」
「千里さんたちにまで迷惑をかけられませんよ」
「元を辿れば身内の不始末のようなものだ。それに、迷惑はこちらの方がかけているからな。今も、昔も」
「……。それで得たものだって、ありますから」
「そう言ってもらえると助かる。だが、まあ、無理はするな」
「お気持ちだけ、ありがたく受け取っておきます」
「頑なだな」
「そうですか。そんなつもりはないんですが」
「君は自覚がありながら素知らぬふりをするから性質(タチ)が悪いな」
「千里さんはそうやってわかってて口にするところが意地が悪いです」
「それは悪かった」
「笑いながら謝られても複雑な心境になるだけなんですが」
「誠意は籠めたんだが」
「……貴重だという笑顔を拝見できたってことで帳消しにしておきます」
「貴重?」
「藍里さんが言ってたので」
「まあ、確かに普段はあまり笑ってはいないかもしれないな」
「私が見る限り、そんな感じはしないんですけど」
「君といるときは別だ」
「……。カンナと藍里さんとの血の繋がりをまざまざと感じました」
「それはどういう意味かというのは聞かないでおこう。……まあ、君を気にかける者は少なくないのだということを、もう少し重く考えてくれればそれでいい」
「さりげなく思いっきり要求してきますね」
「これくらい言わないと、君は気付かなかったふりをしてしまうだろう」
「だから、あの……ノーコメントで」
「ああそうだ、制服、似合ってる」
「……。ありがとうございます」
「照れているのか」
「……聞かないでください……」
「藍里にも見せないとうるさいから、写真を撮ってもいいか」
「勘弁してください」
「それは残念だ」
「その発言に何か含みがある気がするんですがつっこまないでおきます」
「遠慮しなくてもいいんだが」
「遠慮じゃなくて自己保身なのでお気遣いなく」
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