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えくすとら
【小ネタ】現代モノ一大イベントがリアルにおいて地雷になるまで。
しおりを挟む「今年のバレンタインは平日か……よし引きこもる」
「真顔で何言ってるの」
「年々身の危険を感じるようになった上、最近加速度的にフラグが立ってるから極力人と関わりたくない」
「お姉さんと幼馴染以外からって今まではどうだったの?」
「義理程度だったが、ゼロじゃなかった。今年はその比じゃない予感しかしない」
「なんていうか、今年が本編開始って感じだったからね」
「本命チョコとか重い。面倒だ。そもそもあからさまに気合の入ったチョコを受け取ってそのあとどうしろと。告白されるのも困るけど、曖昧なまま宙に浮かせるのも性に合わないんだっての」
「でもこればっかりはどうしようもないでしょ。現代モノの一大イベントだよ? 誕生日・クリスマスと並び称されるレベルだよ? 回避は無理なんじゃないかな」
「そんな残酷な現実は認めたくない」
「認めたくなくても現実は迫ってきてしまうものだよ……。私だってバレンタイン滅べくらいは思ってるけどどうしようもないから諦めることにしたし」
「……。……諦めるって?」
「絶対に、奴らの誰ひとりにもチョコレートなんてあげたくなかったんだけど、強制力半端ないから買った」
「強制力……」
「その気はないのに気づいたらバレンタイン特設コーナーにいるっていう不可思議現象が続いたら、ノイローゼになる前に買うしかないって思うようになるよ……」
「なんつーか……大変だったな……」
「うん……。あと聞いてもないのにチョコが好きか嫌いかとか甘いものの好みとか教えてくるのやめてほしいよね本当」
「目が据わってるぞ」
「せめて手作り回避するために全員分義理チョコ買った。もうやだこのフラグ乱立世界」
「そうだよな、受身側な俺はともかく、一般論では能動的に動く側なあんたの方がキツいイベントだよな……」
「正直強制イベント増えすぎだと思うんだ……。スキップ機能が欲しい」
「同感。こういうイベントは画面の向こう側で楽しむためにあるっていうのに」
「ホントだよ。出費痛すぎて泣きたい」
「三倍返しに期待……したら、あんたにとってのBADルートになるか」
「何が来ても何を受け取ってもフラグ強化にしかならないからもう引きこもるしか」
「新たなイベント発生のフラグにしか思えないからやめとけ」
「世界が私に厳しい……」
「俺にも厳しいから安心しろ。二次元を心の支えに一緒に生き抜くって決めただろ」
「そうだね、ひとりじゃないんだったね……。私、頑張るよ……!」
「……と、小芝居はここまでにして。チョコレートそのものがトラウマになってないんだったら、バレンタインにチョコやろうと思ってたんだが」
「逆チョコというやつですか」
「日本的に言えばな。っつってもお手軽に大量生産できる生チョコと、身内用のガトーショコラの試作分とかになると思う」
「チョコ自体は好きだし、君のお菓子作りの腕はよく知ってるから、もらえるものはもらうけど。そういや、身内には逆チョコが恒例だって言ってたね」
「イベントにかこつけて菓子作らされるうちに、なんかそういう流れに」
「まぁ、海外式だと思えばいいんじゃない。ホワイトデーは期待しないでね」
「別にそういう意味でやるんじゃないから何もなくてもいいけど。どうせ一緒に俺も食うし」
「じゃあ心置きなく享受することにする」
「そうしてくれ。代わりにって言うとアレだが、当日はできるだけ一緒に行動してくれると助かる。学校の間は仕方ないけど、それ以外は」
「それはこっちとしても願ったり叶ったりだからいいけど。朝はどうする? 幼馴染さんの朝の突撃イベあるんだったっけ?」
「朝はいい。問題は放課後だ。ここぞとばかりにラッシュが来る気がする」
「何それこわい」
「俺も怖い」
「二次嫁とのラブラブのひとときを心の支えに頑張って生き延びて」
「あんたも不本意な義理チョコ配布でSAN値削りすぎるなよ」
「大丈夫、イベント限定フリゲとかで回復するから」
「そりゃ安心だな」
そうして迎えたバレンタイン当日、行きつけのゲーム屋で合流の後ダッシュで彼女の家に直行し、SAN値のヤバそうな目でチョコをヤケ食いしつつテンション高く二次充する二人の姿があったが――理由については、どうか察してもらいたいところである。
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