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第一章

鏡に映るのは①

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 ハインリヒ様が扉を指しただけなことに違和感を感じながら一人で移動する。

 言われた扉を開けると、膝下まである黒いドレスにエプロン姿の女性二人が、深々とお辞儀をしてきた。

「お初にお目に掛かります。私共は護衛兼メイドとしてサラディーヌ様専属の任を賜っております。私はアデリナ、こちらはカサンドラと申します。何でもお申しつけ下さいませ」

 アデリナは紺色の髪で、カサンドラは赤い髪だった。
 
 やっぱり異世界なのかー。あっちの世界には無かった髪色だ。
 
 あとで知ったけど、この世界の人達は、向こうの世界と同じくらいの比率で茶色の瞳の人が多いらしい。二人も綺麗なブラウンの瞳だった。

 赤い髪の人、ベッドにお水持ってきてくれた人だ…。とんでもない時のことを思い出して、恥ずかしさがこみ上げてくる。

「あ、よろしくです…」
 つい習慣で、ペコリとお辞儀してしまった。
 
 それを見た二人が、エリーゼ様に注意されませんでしたー?と賑やかだ。
 挨拶されたらついお辞儀。日本人だからしょうがない。うん。
 でも、直さないといけないぽい。


 ふと見ると、既に下着とドレスが用意されていて、下着の見慣れた形状につい目を見開いてしまった。
 紺色の髪のアデリナが、私がびっくりしたのに気が付いて説明をしてくれる。下着を付けてくれながら。コルセットもあったけど、思ったよりきつくない。ドレスを着る人が、柱にしがみついてきつーく紐を締められるイメージがあったけど、そうじゃなくてほんとによかった。

「お!お気付きになられました!?この下着は、サラディーヌ様が異世界で付けておられたものを参考にして作らせたものなんですよ」
 
 へっ?私の日にち感覚がおかしくなってるの?

「あの、私、この世界に来たの、昨日で合ってます…?まだ一日経っていませんよね…?」


 アデリナがドヤ顔で自慢気だ。両手に腰を当てて、えっへんポーズを取った。ここらへんは異世界問わず、全世界共通ポーズなんだろうか。

 カサンドラはそれには構わず黙々と、私に上からドレスを被せた。

「昨日、サラディーヌ様の湯浴みをお手伝いしたあと、異世界の衣装を持って、公爵家の伝手つてを使いまくって、完徹でドレスや下着を作成させたのです。こういう時に旦那様が権力がおありになると、話が早いですよね。いろいろ残念公爵様ですが、なんとかと権力は使いようです」

 本音丸出しのメイドさんだな…。いいのか、これで?
 
 だけど、残念公爵様というのには全力で同意したい。

「椅子に座って頂けますか?」
 頷いて、言われた通りに座ると靴下まで履かせてくれる。至れり尽くせりだ。下着くらいは自分で付けたいけども。

「御髪を整えさせて頂きますね」

 目の前には鏡台。ちゃんとした鏡があるんだな、と思い、何となく自分の顔と向かいあった。


 ……


 ……え?


 ―――これ、私の顔……だよね!?
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