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第3話 合言葉は「おつ!」

頭の痛いトレーニング

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「それで、テキストを一周通読し終えてある程度全体像──試験問題の見取り図──を把握して基本的な知識を一通り網羅できたと思ったら、やっと過去問にチャレンジ」

  とハッカは話を続けた。

「まず公式HPに公開されている過去問の例題を解く。制限時間は守ってね。
  日付と点数を記録して、もちろん分野ごとと総得点どっちもね、それで自分の弱点を把握するの」

  じつは、この危険物取扱者乙種第四類の国家資格、公式には例題以外の過去問が出回っていない。

  だからいわゆるセンター公認の過去問題集というのは書店やHPで購入することができず、それが「おつよん」のなかなか厄介なところだった。

  なお、実際の試験では問題も解答用紙も回収されてしまう。

  記憶や予想を頼りにした似せた問題集はある、しかし本物はない。そういう世界である。

  流通された精巧なフェイク品でトレーニングするしかないのだ。

  ハッカもその事情に合わせて話してくれていた。



  さらに、インターネットから過去問とおぼしきものや独自に作成された予想問題を拾ってきてひたすら演習を繰り返すことも有用だ。

  その際、あなたは解き終えた後、◯✕をつけておしまいにせず、きちんと「合っていた理由」「間違えた理由」を確認しなければならない。

  そして、なおかつそれを自分の言葉で反復して何も見ずに説明できなければいけない。

  それをやらなくちゃ勉強したとはとても言えないし、そこまでやって意義のある学習の時間を過ごした事になるのだ。

  身につかなくちゃ意味ないでしょ?



  ハードな仕事だとあなたは感じるかもしれない。

  わたしも最初はそういった作業がとても苦だった。

  理解したり説明したりしようとすると頭がキリキリ痛くなって、もう何も考えるのがイヤだ!って何度もなりそうになった。

  だけど、めげなかった。

  だって、自分でおつよんを受けて「ファイア」するんだって決めたから。

  どうだろう?

  あなたがこういった作業を何かひとつでも自分の手によって終えることができたのなら、わたしはそのたびに笑顔でねぎらいの言葉を贈りたい。

  合言葉は「おつ!」だ。

  これは言うまでもなく、あなたの苦労や苦心へのおつかれさまを意味する。

「おつ!」はギャスもとても気に入っていた言葉で、あの「ファイア」の次に好んで使っていた。

  最初の「おつ!」のかけ声は、プランの準備を無事仕上げた自分自身に対してなされる。

  ギャスもハッカも計画を立てて取り組むことがいかに大事なのか、クドいくらいわたしに念を押していたという事実をぜひとも胸に刻んでおいてほしいな。


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