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紅蓮鬼灯
しおりを挟む⚫キャラクター紹介
・紅蓮(グレン)
かつての戦争で若くして大量の鬼を蹂躙した『鬼狩り』
特徴的な赤い刀身の刀を持っている。
今はなりを潜め、田舎町で隠居生活を送っている。
・零(レイ)
グレンの恋人。
特徴的な方言で喋る。
綺麗な白髪と燃えるような赤い瞳をしている。
既にこの世のものでは無い。
・鬼灯(ホオズキ)
かつての戦争を経験した大柄の鬼。
恋人と二人で山奥でひっそり暮らしている。
本来人間とは共存派で、穏やかな人物である。
『紅蓮鬼灯』
(ぐれんほおずき)
グレン♂:
レイ♀:
ホオズキ♂:
⚠台本として利用する際の規約⚠
https://writening.net/page?nJG7kt
作者ツイッター@autummoonshiroでも確認出来ます。
スマホの方はサイトの仕様上コピペ出来ませんが、スクリーンショット等からアドレスを取得することを推奨しています。
──────以下、本編──────
ホオズキ:ここは普段君たちが生活する世界とは異なる世界
ホオズキ:この世界には鬼と人間が共存をしていた
ホオズキ:しかし、鬼の絶対数が少ないこと、暴れると手が付けられないことから鬼は迫害され、戦争が起こった
ホオズキ:この両者の争いに終止符を打つ事になったのが、鬼狩りと呼ばれる男の存在であった
ホオズキ:鬼狩りは戦場において無敗を誇り、鬼の勢力を激減させた
ホオズキ:だが、そんな鬼狩りも戦争が終わる頃には既に戦場を去っていたという
ホオズキ:そうして時は流れ、鬼は姿を隠しながら生活するようになった
ホオズキ:そしてかつての鬼狩りもまた、刀を封印しとある田舎の長屋でひっそりと暮らしていた───
レイ:グレンは聞いたかえ?
グレン:何をだ?
レイ:角のない鬼の話や
グレン:角のない鬼だと?
レイ:北町に出たらしいえ
グレン:近くじゃないか
グレン:詳しく教えてくれ
レイ:ウチも聞きづてやけど・・・
レイ:北町にでっかい呉服屋あるやろ?
グレン:ああ、あそこか
レイ:あん店の前でな、女の子が倒れたんやって
グレン:女の子・・・?
レイ:その子に何があったんかはウチも知らんよ?
レイ:大事なんはそん後
レイ:その子を抱き上げて逃げた奴がおってな
レイ:そん時に慌てたんか、かぶりが落ちたんよ
レイ:そしたら、折れた角が見えたんやって
グレン:折れた角・・・
グレン:角が折れて生きてる鬼というのは知らんな
レイ:今回で知れたなぁ
レイ:良かったやないの
グレン:人を無知みたいに言わないでくれ
グレン:それで、なぜその話を俺に?
レイ:いいえ、話しといたがええかと思て
グレン:俺は・・・やらんからな
グレンは部屋の隅に乱雑に置かれた刀に目をやる
レイ:何をしろともゆうてませんえ
グレン:刀はもう抜かないと決めたんだ
レイ:だから、ゆうてません
グレン:・・・
レイ:でも、思う事が何も無いわけやないやろ?
グレン:当たり前だ
レイ:刀を抜かんでも、出来ることはあると思うんやけどなぁ?
グレン:少し家を空けるぞ
レイ:ふふふ
グレン:笑うな!
(一間置く)
レイ:(N)場所は変わり、町外れの小さな山小屋の中で、ホオズキは女性の体を抱き抱えてながら、座り込んでいた。
ホオズキ:カズラは死んでしまった・・・
ホオズキ:一体どうして・・・どうしてカズラが・・・
ホオズキ:何が彼女を殺した
ホオズキ:こんな事が・・・許せてたまるか!!
レイ:(N)それから2日が経った
グレン:何があったんだろうな
グレン:確かに少女が血を流して倒れ、それを抱き抱えて逃げた鬼がいた、という話が流れている
レイ:なんやろうなぁ
グレン:・・・知っているのか?
レイ:さあ?
グレン:そもそもお前から持ってきた話だろう
グレン:知っていることはちゃんと話せ
レイ:アンタも調べたんに・・・
グレン:無駄に調査に時間をかけたくない
レイ:(ため息)
レイ:辻斬りや
グレン:辻斬りだと!?
レイ:・・・南町と北町がいがみ合っとるんは分かっとるかえ?
グレン:当然だ
グレン:この街に住む者なら誰でも知っている
レイ:ほんなら、これは知っとる?
レイ:南町の若いのん中で、辻斬りが流行っとるっていうんは
グレン:いや、聞いたことがない
レイ:北町の大通りまで行って、隠した小太刀ですれ違いざまに脇を刺すんや
グレン:随分と派手な手口だ
レイ:派手すぎて見つからんのよ
レイ:定期市ん時のあの呉服屋は人で賑わっとるから
グレン:人混みに紛れて辻斬りか・・・
グレン:ろくでもない事を考える
レイ:鬼が怖いなんてゆうとった頃が懐かしいなぁ
グレン:どこぞの馬鹿が、憎しみに任せて鬼を斬り過ぎたんだ
レイ:どこの、馬鹿やろうなぁ
グレン:・・・・・・
レイ:思うことが少しでもあるんなら、一度呉服屋まで行きい
レイ:刀、忘れんようにな
グレン:・・・鬼は斬らんぞ
レイ:刀は人を守るためのもんや
レイ:アンタ自身も含めてな
グレン:定期市の日に起こると言ったな
レイ:ええ
グレン:丁度今日だ、すぐに行こう
レイ:(N)少しためらいながらも、刀を手に取り長屋を出た。
レイ:(N)そして呉服屋付近まで足を運んだ
レイ:(N)定期市に合わせ人が集まっていたが、それだけにしては異常な人集(だか)りとなっていた。
グレン:凄い人集(だか)りだ
グレン:何が起こっている・・・?
ホオズキ:お前が殺したのか!?
レイ:(N)人集りの中心から荒々しい声が響いた。
レイ:(N)ホオズキは男の首元を掴みあげ、掴まれた男は必死に首を振っていた。
ホオズキ:では、誰だ!
ホオズキ:誰が彼女を殺した!!!
グレン:・・・角を隠してもいない
ホオズキ:何故彼女が殺されたんだ!
グレン:一足遅かったか・・・
レイ:(N)慌てて近付いたグレンの視界には、4人の男が血を吐いて倒れているのが見えた
レイ:(N)ホオズキはグレンが近づくとほぼ同時に、掴んでいた男を殴り飛ばした
グレン:手をあげていなければ、まだ何とかしてやれたかもしれなかった・・・
ホオズキ:なんだお前は
グレン:む?
ホオズキ:その刀か
グレン:あー・・・
ホオズキ:その刀で彼女を刺したのか
グレン:そんな事はしてない
グレン:と言っても、落ち着いて聞いてくれはしないんだろう?
ホオズキ:フン・・・
ホオズキ:そんな事はない
ホオズキ:誰でも手にかけるわけではない
グレン:そいつらは?
ホオズキ:カズラが刺され、俺は助けを求めた
ホオズキ:だが、コイツらは無視をした
ホオズキ:彼女が鬼の子だったからだ!!
グレン:・・・そいつは、すまないことをした
グレン:同じ人間として謝ろう
グレン:だが、手を出してしまっては───
ホオズキ:先に手を出したのはどっちだ!!
グレン:それについても、分かっている
グレン:人間同士の争いに巻き込んでしまったこと、申し訳なく思っている
グレン:だが、どんな理由があっても手を出しては駄目だ
グレン:憎しみの連鎖は何も良い物を作らん
ホオズキ:人間同士の争いだと・・・
ホオズキ:そんなの知ったことか!!
グレン:くっ!!
レイ:(N)ホオズキは大きく腕を振りかぶる。
レイ:(N)グレンは反射的に間合いを取りながら、刀に手をかける。
ホオズキ:俺は丸腰だぞ!
ホオズキ:刀を抜くのか!!
ホオズキ:お前も手を出そうとしているだろう!!!
グレン:自己防衛ぐらいはするさ!!
レイ:(N)言うと同時にホオズキが襲いかかり、それを刀の鞘で受け止めた。
レイ:(N)その拍子に鞘から赤い光が漏れた。
ホオズキ:赤い刀身・・・
ホオズキ:貴様、鬼狩りか・・・!?
グレン:懐かしい名だ
グレン:鬼狩りなんぞもうやめた!
グレン:鬼も人も同じだ、殺して良(よ)い通りなどない
グレン:あの頃は、それが分かってなかったんだ
ホオズキ:鬼狩り・・・
ホオズキ:都合の良い事をベラベラと───
グレン:少し待て!
グレン:おい、そこの赤い着物の女!
レイ:(N)グレンは野次馬の一人に刀を向けた。
レイ:(N)刀を向けられたのは10歳程度の少女だった。
グレン:お前、南町の人間だな
グレン:左の袖に隠した小太刀を出せ
レイ:(N)少女は震えながら小太刀を差し出すと走り去った
グレン:こんな子供に、何をさせとるんだかな・・・
グレン:この小太刀がお前の仲間をやった物の正体だ
ホオズキ:そんな子供が・・・
ホオズキ:犯人だというのか・・・
グレン:遊びとして教えるんだ
グレン:こんな小さな内からな
ホオズキ:カズラは、どうして狙われたんだ!!
グレン:辻斬りだ
グレン:北町の人間なら誰でも良かった
グレン:この呉服屋は賑わっていて人が多い
グレン:特に定期市の日は肩がぶつかり合う程にな
グレン:そして密着したすれ違い様に、脇腹に小太刀を刺して逃げる、捕まったら負けだ
グレン:それを遊びとして教えてるんだ
ホオズキ:そんな・・・!
ホオズキ:そんな、ことで・・・!!
グレン:人間以上に、人間として振る舞えて居たのだろう、そのカズラという女性は
グレン:(黙ってホオズキに向き直る為の間)
グレン:すまない、収めてくれ
グレン:頼む(深く頭を下げる)
ホオズキ:・・・うああっ!!!
レイ:(N)その力の限りに、地面を殴りつけた
レイ:(N)地面がえぐれ、拳の跡が残るほどであった
グレン:ありがとう・・・
グレン:場所を変えよう
ホオズキ:・・・ああ
グレン:道を開けろ!!
グレン:鬼だなんだという奴はかかってこい!
グレン:俺が相手をしてやる!!
レイ:(N)野次馬たちは黙って道を開けた
レイ:(N)ホオズキの先導で暫く歩き、ある墓の前へ辿り着く
グレン:これがカズラという少女の?
ホオズキ:そうだ
グレン:人間が手を合わせても?
ホオズキ:ああ
グレンは深々と礼をして両手を合わせた
グレン:人間の下らない争いに巻き込んでしまってすまない
グレン:輪廻転生、新たな人生は幸福であることを願う
ホオズキ:・・・ありがとう
グレン:やりきれんだろう
ホオズキ:そりゃあな・・・
グレン:レイも手を合わせてもやってくれ
レイ:グレンに言われんでも、もうあわせとる
ホオズキ:レイ?
グレン:ああ・・・
グレン:紹介しよう、俺の恋人でな
グレン:名をレイという
ホオズキ:何を・・・言っている?
グレン:ここにいるのがレイだと
レイ:もうやめんさい
レイ:ウチのことは見えんのよ
レイ:アンタにしか
グレン:おかしな事を抜かすな
グレン:挨拶ぐらいしろと言うんだ
ホオズキ:一人で、何を話してるんだ
グレン:・・・・・・
ホオズキ:なぁ、鬼狩り
ホオズキ:そのレイという女性は、もしや雪の様な長い白髪(はくはつ)で、瞳が赤い女性ではないか?
グレン:!!
グレン:やはり、見えているではないか!!
グレン:おかしな話をしよって!
レイ:のぉ、グレン
レイ:その男の話、ちゃあんと聞きんさい
グレン:なに・・・
ホオズキ:見えてはいないんだ
ホオズキ:ただ、知り合いでな
ホオズキ:戦争の頃、世話を見たことがある
グレン:戦争の頃?
ホオズキ:ああ、鬼狩りが騒がれるより少し前の話だ
ホオズキ:戦場近くの村に大怪我をした女性が居てな
ホオズキ:奇麗な白髪だったのをよく覚えている
グレン:俺が戦争に駆り出された直後だ・・・
グレン:戦場が近くになってきて、家の村からも出兵することになったんだ
グレン:出兵があって村の警備が手薄になって、略奪が行われたと
ホオズキ:そうだ
ホオズキ:村中の物がなくなり、何人もの死体が横たわっていた
ホオズキ:だが、彼女は生きていた
ホオズキ:そこで俺は角を折り、煎じて飲ませた
グレン:角を!?
グレン:角を折ると鬼は死ぬのではないのか!
ホオズキ:根本から斬られると、な
ホオズキ:根本を残すようにすれば、折ることは出来るんだ
ホオズキ:そしてこの角には強い治癒力がある
グレン:レイは助かったのか!?
ホオズキ:ああ、勿論だ
ホオズキ:傷はすぐに塞がって一週間ほどで元気になった
グレン:村は鬼に襲われ、村人は全員惨殺されたと・・・
レイ:全滅したというとるのに、どうしてウチが生きとると思うたん?
グレン:ぐ、ああ、頭が・・・
ホオズキ:大丈夫か、鬼狩り
グレン:ああ・・・
レイ:実際、この時はまだ生きとったけど
グレン:俺は復讐のために鬼を殺したというのに・・・
ホオズキ:鬼狩り・・・
グレン:俺はレイが鬼に殺されたと聞いて
グレン:復讐を誓った
グレン:そして、鬼狩りとして最前線を戦い抜いた
グレン:だが、どうだ
グレン:どれだけ斬ろうと、レイは帰って来なかった
グレン:俺は悟ったんだ、復讐に意味はないと
ホオズキ:だが待て、レイは確かに返した
ホオズキ:私は戦わない者に手を上げるのが嫌だった
ホオズキ:元々、戦争派ではない、共存派なんだ
ホオズキ:彼女には戦う意思がなかった
ホオズキ:だから、傷を治し次第、別の村へ送り届けたのだ
グレン:何があったんだ・・・
レイ:貴方に預けたお守り、まだ持っとる?
グレン:当然だ
レイ:それを彼に
グレン:・・・分かった
グレン:これを
ホオズキ:なんだこれは・・・!
ホオズキ:見える、見えるぞ・・・!!
レイ:あの村は元々霊を扱う村なんよ
レイ:鬼狩りの刀やったり、霊を下ろすお守りやったり
レイ:さて、本題や
レイ:ウチはホオズキに助けられた
レイ:そんで、近くの村に運んでもろて、事なきを得た
レイ:ここまでがホオズキの知っとる話
レイ:ウチはこの直後、村の人間に殺された
グレン:なにっ!?
ホオズキ:何故だ!!
レイ:鬼に助けられたんが、バレたんよ
レイ:鬼と歩いてくるのを見たとか、鬼の匂いがするだとか・・・色々言われてな
レイ:ウチ・・・嘘つくんが嫌やってん
レイ:命に関わる角折ってまで助けてくれたんに、裏切るのが嫌やったの
レイ:そいで、こんなんなってもうた
グレン:・・・・・・
グレン:俺は、勘違いから大量の鬼を斬った
グレン:だが、それは・・・
グレン:俺は・・・鬼にお前が殺されたと・・・
グレン:こんな事が・・・
グレン:こんな事が許されてたまるか!!
ホオズキ:まさか・・・そんな事になっていたとは・・・
ホオズキ:もっと上手くやっていれば・・・
ホオズキ:私の名誉など、どうでも良かったのに!
レイ:どうでもいいことあらへん
レイ:大切な事や
グレン:後悔は?
レイ:そんなんしてると思う?
グレン:・・・分かった
グレン:俺は戦争で学んだ
グレン:人を恨むことは何も産まない
ホオズキ:なんと気高い事か・・・
ホオズキ:私の助けた人間がこんなにも・・・
ホオズキ:人間も鬼も変わらない
ホオズキ:同じ心を持って生きているのだ
ホオズキ:種族でいがみ合うのは、間違っている
ホオズキ:カズラを殺した者を許すことは出来ない
ホオズキ:だがそれはその個人の話、人間全てを恨む訳では無い
グレン:ありがとう
ホオズキ:さあ、今日はもう遅い
ホオズキ:鬼の小屋ではあるが、泊まっていくといい
グレン:鬼だなどと気にすることは無い
グレン:友として、上がらせてもらおう
レイ:(N)2人は山小屋の中へと入り、疲れていたのか早々と就寝した。
レイ:(N)そして、時間は丑三つ時を過ぎようという頃、複数の足音が山奥に響く。
グレン:(町人1 )おい、ここであってるか?
ホオズキ:(町人2)ああ、間違いねぇ
ホオズキ:(町人2)鬼が入ってくのを見たってよ
ホオズキ:(町人1)よし、やれ!
レイ:(N)その掛け声と共に、何人もの男たちが小屋に松明を投げつけた。
レイ:(N)火は直ぐに小屋に燃え広がった。
レイ:(N)暫く燃え続け、火が消えたのは翌朝雨が降ってからであった。
レイ:(N)燃え残った小屋には、何も残ってはいないように見えた。
レイ:(N)時は過ぎ、小屋の跡を真っ白な雪が包む。
レイ:(N)雪が溶け、夏を迎える頃、赤く紅蓮のような蕾を垂れる鬼灯が、そこに咲いていた。
───完───
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