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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
三十二話『冷たい霊気』【雪女編2】
しおりを挟む「スキーなんて久しぶりに来たわー!最後に来たのは確か…中学生くらいの時だったような気がする」
俺、折笠裕也は親友である慎吾と友人の昌と裕貴のいつものメンバーで、スキー場へ来ていた。
高校2年生の俺達は来年が受験という事もあって、遊ぶなら今しかないだろ!とごり押ししてきた昌と裕貴の提案で、こうして久しぶりにスキー旅行に来たという訳だ。
俺達が住む街から新幹線で2時間かけ、豪雪地帯である東北の人気のスキー場へ来た訳だが、中学の時以来のスキーという事もあって、久しぶりに見る銀世界の綺麗な雪景色に思わず目を奪われてしまっていた。
「そうそう!中学時代の授業で行ったスキー合宿以来だよな!」
「ホントそれな!いやぁ~久しぶりすぎてすっげー楽しみ!」
誰よりもテンションの高い昌と裕貴が目を輝かせながら答える。
「あ、そういやここのスキー場って4時閉まるらしいぜー?今時ナイター営業をしている所もあるのに珍しいよなぁ~」
「はぁ!?4時!?マジかよ!あと5時間しかねぇじゃん!」
裕貴の話に、昌がぎょっとして時計を確認する。
「だから早く滑りに行こうぜ!スキーってあっという間に時間が過ぎるから、遊ぶ時間がなくなっちまう!!」
「言えてるわ!早く行こうぜ~!」
昌と裕貴が、足早にスキー場施設のロッカーに向かい始める。
「ったく…アイツら…少しは静かに出来ねぇのかよ」
ロッカーに向かいながらも楽しそうに話している2人は、まるで遠足に来た子供のように朝からハイテンションのままだ。
いや、むしろ朝よりもテンションは上がっているのかもしれない。
ため息をつきながらも、しぶしぶ2人の後を着いて行こうとした俺は、怪訝な表情で遠くの山を見ていた慎吾に気付く。
(ん?)
「慎吾、どうした?」
俺の問いかけに、見ていた山から視線を逸らした慎吾は何とも言えない表情で答えた。
「…いや。気のせいかもしれないし、なんでもない」
(この顔は…もしかしてなにかいたのか?)
霊感の強い慎吾のことだ。
もしかすると、俺には感じない“なにか”を感じ取ったのかもしれない。
この神妙な顔つきは、龍神様のことを話さなかった時の慎吾の顔と一緒だったからだ。
「…別に隠さなくてもいいぞ?なにか感じたんだろ?」
「…少しだけ風に乗って冷たい霊気を感じた」
「冷たい霊気?妖怪がいるかもしれないってことか?」
「…まだ分からない。霊気と言っても、感じるか感じないかの微かな程度だったし、ここの山は昔からある山だと言う。人間じゃないモノがいても不思議じゃない…。今の段階だと確実にいると断言は出来ない」
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