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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
第二十六話 『最後の約束』-慎吾side-
しおりを挟む「ッ!!!」
すぐ後ろ…耳元で声が聞こえたと同時に、髪の毛の様な触手のような長い何かが俺の体中に巻き付いて来た。
≪ウマソウナニンゲン、クイタイ…クイタイィィィィィイイィィ!!!!≫
「なっ…なんだこれ!!ぐっ…!放せッ!!」
俺を襲ってきたのは顔が人間の様な顔、体は毛で覆われた動物の様な形をした得体のしれないバケモノだった。
どうやら俺の体に巻き付いてきているのは、バケモノの髪の毛らしい。
ミイラの様な顔をしたバケモノの口は、耳まで裂けていて目はぎょろぎょろと動き大きい目をしていた。
(こんなバケモノ始めて見た…!霊力も今まで遭った奴らとは全然違う!!こんな奴がなんでこんな所にいるんだ…!!こんなバケモノ、今まで見た事がない!)
バケモノは背後から首だけを伸ばすと、俺の目の前で大きく口を開けた。
「うわあああああ!!!」
(ダメだ…!喰われるッ!!)
バケモノのおぞましい姿に、俺は恐怖のあまり目を閉じた。
――ドクン
その瞬間、懐かしい記憶が俺の脳裏に流れ込んでくる。
―――――――――――*
『阿形、吽形…私がいなくなっても、ずっとこの現代と神社を護っておくれ。――それが、私からの最期のお願いだ…。大丈夫。私の力を受け継ぎし者がいずれ必ず現れる。――私の力を受け継ぐ子孫が現れれば、同時に救世主となる人間も現れるだろう…。その子孫は、私の―――だ。また、来世で必ず巡り会おう――私の大切な阿形、吽形よ―――…』
和室に敷かれた布団で体を起こしたまま話をする長髪の髪を結わえた男は、巨大な2匹の犬の頭を撫でながら綺麗に微笑んだ。
『『ミコト!!』』
心配そうに男を見る2匹の白い犬の表情は、とても暗いものだった。
細身で色白の男は、苦しそうに咳込みながら2匹の白い犬に向かって話を続ける。
『必ず私の血を受け継いだ人間が産まれてくる…私の意思と力…全てを受け継いだ者が…。その者は私よりも更に強い力を持って産まれるだろう…。大丈夫だ…。私の命が尽きても、私の魂はお前達と共にある…ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!!…はぁ、はぁ…ッ』
咳込んだ男の口からは大量の血が出ていた。
起きている事が辛くなった男は、布団へと横になりながら、布団の傍に座る2匹の犬を見上げたまま続ける。
『私の力を受け継ぐ者が産まれ…力が目覚めれば…はぁ…はぁ…っ神社を始めとするこの世界は安泰だ…。だから…、だからそれまで…神社を…護って、いておくれ…。――たの、んだ…ぞ…』
男が最後の力を振り絞って、2匹の犬の方へと手を伸ばす。
細くて華奢な手は、2匹の白い毛並みを優しく撫でると静かに瞳を閉じた。
男の手が力なく床へ落ちる。
『ミコト…安心してくれ…ッ。約束は必ず守る…』
『どれ程の年月が経とうと、お主の力を受け継ぐ者を待ち続ける…。そして、この現代と神社は、必ず我等が護ろう…ッ』
『ミコト…ッ!ミコトがいなくなっても…我等は決してお主を忘れぬ…っ』
『魂はいつまでも一緒だ――…』
巨大な2匹の白い犬は、声を震わせながら涙を流し、息を引き取った男――黒部尊の体に寄り添いながらその姿を看取った。
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