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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達
第二十四話 『神の使い ”狛犬”』-慎吾side-
しおりを挟む『こまいぬ…。この犬、こまいぬっていうの?神主さんは、このこまいぬをしたがえていたの?』
『そうだよ』
『そうなんだ!すごい…!それじゃあ最初の神主さんとこまいぬが、この街もひとも、神社も…全部まもってくれていたの?』
『そうだ。――だけど先代は、若くしてご病気で亡くなられてしまった。先代の話がこの黒狛守神社で代々引き継がれているのは、先代が残した偉大な功績を忘れる事のないようにする為なんだよ。』
『すごいひとだったんだね!』
『そうだね。…でもね、先代が凄いのはそれだけじゃない。先代は、亡くなられた後もずっと…ずっとこの街と人々を護り続けてくれているんだ』
『!』
『先代が従えていた狛犬は、誰にでも視える訳じゃない。その姿は、黒部家の血筋の中でも限られた人間にしか視る事が出来ない』
『かぎられた…にんげん…。お父さんはみえないの?』
『そうだね。お父さんは、多少霊感はあるけど、そこまで強い訳じゃないから一度も見た事がないんだ。狛犬に選ばれたのは“お父さんではなかったようだ”ね』
『…』
少しだけ残念そうに笑った父さんの顔を俺は見上げた。
『どうすれば、こまいぬを視る事が出来るの?』
『先代――黒部尊の血を最も濃く受け継いだ、黒部家の人間がその姿を視る事が出来て、狛犬を従わせる事が出来ると言われている。書物に記された文言には、“私の力を受け継ぎし者がいずれ必ず現れる。狛犬はその子孫を一迄も待ち続け、そして必ず巡り会う時が来るだろう”と書かれているんだ。――狛犬の姿は、黒部家以外の人間でも視る事の出来る者はいるとは書物に記されているけど、先代と同等の力か…それ以上の力を持つ者しか視えないそうだ…』
『狛犬を始めとする霊力が高い存在は、言葉を話す事が出来ると言われている。これは普通の動物霊ではまず出来ない事なんだ。』
『そうなの…?』
『狛犬は先代が亡くなられた後、この神社を先代の代わりに護って下さっていると言われている。…あの書物に記されている通りに。…しかし、これまで狛犬を視た人間は、私を含めて誰一人としていなかった…。今後本当に狛犬の姿を視える者が現れるのか、その真相は誰も分からない』
苦笑しながら父さんが言った。
『おれ、こまいぬ視てみたい!』
『ははは。慎吾はお父さんよりも霊力が高いからなぁ。もしかしたらお前は、狛犬の姿を視る事が出来るかもしれんぞ?』
『ほんと!?』
『あぁ!』
父さんはニッと笑うと、優しく俺の頭を撫でて来た。
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