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弐ノ章:魑魅魍魎のモノ達

第二十二話 『話す事の出来る子犬の霊…?』-慎吾side-

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「お前達、ずっとこの場所にいるだろう?誰か待っている人でもいるのか?」


「…」
「…」

当たり前だが、子犬は黙ったままだ。

変わった模様があるし、角も生えているし、妖怪だったら話せるかと思っていたけど違ったようだ。


「今日は見ての通り土砂降りだし、もう少しで日が暮れて暗くなる。日中の神社は神聖な場所だから変なモノは寄ってこないが、夕方から夜の間は“陰中の陰”となり、不浄な気で満ち溢れ、魔物が出やすくなる。魔物に狙われる前にここを離れた方がいい」


俺の言葉に、子犬達の尻尾が徐々に横に揺れ始めると、その揺れは大きくなっていった。



――え?これ…喜んでいる…?

この子犬、人間の言葉を理解しているのか?

子犬は尻尾を振りながら俺の足に、猫のように体を摺り寄せてくる。


「え?」

子犬は雨で濡れてしまった俺の手をぺろぺろと舐めると、2匹同時に顔を上げる。



『――ありがとう…心優しいニンゲンの子。』


赤い模様をした子犬が話しかけてきた。少し低めの少年のような声だ。口を開けて人間の様に話しているのに、頭の中に直接話しかけてくると言った感じだ。

「え…?えっ!?こ、子犬が喋った!?お前、話せるのか!?」

話せる動物の霊にあったのは初めてでかなり驚いてしまった。



『話せる。それよりもお主――…我々の姿が視えるのか?』

「えっ…。普通に視えるけど…」

『そうか…。我々の姿が視え、言葉を交わす事が出来るという事は…お主が最も濃い血筋のニンゲンだな。――ミコトの言った通りだ』


「濃い血筋?…ミコトって誰だ?」


子犬は一体なんの話をしているのか分からない。


『優しいニンゲンだ。ミコトと同じ匂いがする…』


続いて青い模様をした子犬が話した。

おっとりとしたような話し方で話した青い模様の子犬は、嬉しそうに尻尾を振りながら俺にすり寄ってきた。


さっきから子犬が話す“ミコト”と言う名前。

聞いた事もない名前だった。
ミコトって一体誰だ?俺を、その『ミコト』って人だと思っているのか…?


それにしても驚いた。

口元を動かして話す事が出来る動物の霊は、神様か神の使いしかいないはずだ。
前に、先祖が残したっていう書物を保管している書庫で見た事がある。


――まさかこの子犬…


俺は子犬の霊力を読み取ろうと神経を研ぎ澄ませた。


「俺の名前は“ミコト”という名前じゃない。俺の名前は――…」


すり寄ってきた子犬の頭を、もう一度撫でようとした瞬間、子犬の姿は消えてしまった。



「消えちまった…。あの子犬は一体…」


念のため辺りを見渡すが、子犬の姿はどこにもなかった。

「話す事の出来る犬…か。いや、まさかな…」

俺は子犬が消えた鳥居を見つめながら、昔父さんに言われた話を思い出していた。



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