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壱ノ章:最強の守護霊

第十話 『聞こえ続ける水音』

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部屋の奥からは、水の滴る音が聞こえていた。


ピチャン…ピチャン…ピチャン…ピチャン…


一定のリズムを刻むように、その水音は聞こえ続ける。


「この音…水?」

「ちょっ…ちょっと待って…。水の音が聞こえるのはおかしくないか!?だって、ここのホテルが営業停止になってから大分時間が経ってるんだぞ!?電気も水もとっくに止まっているはず…!」


俺は窓から外を見る。

雨が降っている様子はないし、周りに川とかがある訳でもない。
そうなると、水の音が聞こえるのは不自然だ。


「…とりあえず奥に行ってみよう」

「え!?行くのか!?わざわざ音が聞こえる方に!?」

「はぁ?当たり前だろ。そうしないと音の原因も分からねぇじゃん」

「いやいやいやいや!幽霊がいたらどうするんだよ!」

「そうだよ!襲われたらどうすんだ!?それに、もし憑りつかれちまったらどうするつもりなんだよ!」


明らかに怯えている様子の2人に思わずため息が出てしまった。


「お前らな…?元々はお前らが行くって言って計画した事だろ?心霊スポットに行こうって言いだしたのも、ここの廃ホテルに行こうって言いだしたのも、全部昌と裕貴が決めた事だ。お前らが言い出してここまで来たのに、肝心の場所を見ないでどうするんだ。この部屋の奥に事件現場になった浴室があるんだろ?」

「う…それはそうだけど…。なぁ?」

「もし浴室を見に行って幽霊がいたらどうするんだよ!」

「幽霊なんて出る訳ない!って言いきっていたのは、どこのどいつだ?」

「「うっ…」」

2人が言葉に詰まる。
あれだけ、幽霊なんて出る訳ない!心霊スポットに行こうぜ!と人の事を散々誘っておいて、いざその場に来てみたらこの怖がり様かよ…。


「誰もいないこの場所で、聞こえるはずのない水の音の原因は何なのかを見に行くだけだ。行きたくないならそこで待ってろ。俺が行って確かめてくる」


俺は奥を照らしながら歩き始めた。


「あ!裕也!ちょっと待てって!」

「裕也ぁ!置いていくなってば~~!」


半泣き状態の2人が後ろから付いてくる。


全く…そこまで怖いなら待ってりゃいいのに…


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