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壱ノ章:最強の守護霊

第五話 『夏休みの心霊スポット②』

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「ちぇー!大丈夫だってぇー!幽霊なんてどうせ出る訳ないし!」

「そうだよ!心霊番組で映っている幽霊とか、あんなの偽物だから!作り物作り物!」

「…あのな?お前達にも前に言ったはずだ。俺は霊の姿がはっきりと視えるって。ぼんやりと視えるとか、黒いモヤで視えるとか、体の一部分だけが視えるとかそう言う次元じゃない。頭から足の先まで、はっきりと普通の人間の様に視えるんだ」

慎吾の真剣な表情に、昌も裕貴も黙ってしまった。

「心霊スポットには色んな霊がいる。成仏できなくて彷徨っている霊や、人間に危害を加える悪霊だっているんだ。そんな危ない場所に自分から行ったら、どうなるかなんて行かなくても予想がつく。絶対に良い事なんてない」

「えー…仕方ねぇなぁ…そこまで言うなら分かったよ…」

「慎吾を連れて行くのは諦めるかぁ」

漸く諦めたか。と思った矢先、2人の矛先は俺に向いたようだった。

「裕也!お前は俺達と一緒に心霊スポットに行くよな!?」

「え゛!?」

なんでそうなる。

キラキラした表情の昌と裕貴が、期待に満ち溢れた顔で詰め寄ってきた。


「行くよな!?」

「いや……あ゛―…まぁ、どっちでも…」

「よっしゃあ!じゃあ決まりだな!」

「慎吾が一緒に行けないのは残念だけど、俺達だけで行こうぜ!まぁ単なる噂だし、幽霊なんてどうせ出てきやしねーって!」

本音を言えば、1回は行ってみたいという気持ちは心の奥底にあったが、そこまで行きたいという訳でもなかった。
まぁ付き合いで一緒に行ってやるかーという軽い気持ちだ。

俺は今まで、心霊スポットには一度も行った事はない。

行くタイミングがなかったと言えばそうだが、行こうと思えば行く事は出来た。
それなのに今まで行かなかったのは、もしかしたら無意識に行かないようにしていたのかもしれない。

…なんでかは自分でも分からねぇけど…。



「ん?どうした慎吾」

心霊スポット雑誌を見ながら盛り上がる昌と裕貴をよそに、背後から視線を感じて見て見れば、慎吾が何やら神妙な顔で俺を見ていた。



「…裕也。お前は行かない方がいい」


「え?」

慎吾のやつ、いきなりどうしたんだ?

「いや、俺だって別にそこまで行きたいって訳じゃ…」

「…家の手伝いをしなきゃいけないから、俺は帰る」

「へ?あ、おい!慎吾!」


教室を出て行く慎吾に声をかけるも、慎吾は振り返る事無く帰ってしまった。



「慎吾のやつ、一体どうしたんだ?それにあの言葉…」


“…裕也。お前は行かない方がいい”



慎吾の放った言葉に、どんな意味があるのか…俺はこの時、まだ何も分かっていなかった。

そしてこの心霊スポットに行った事で、俺の人生が変わるなんて…




この時は想像もしていなかった。





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