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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
184話
しおりを挟む「なんで…?俺が気付かなかっただけだったのかな?せっかくの綺麗なグラスだったのに…」
(あとでセリさんに謝らなきゃ…)
元々ヒビが入っていたのなら、100%湊のせいだと言えばそうではないかもしれないけれど、持った瞬間に割れてしまったのだから、多少なりとも自分にも責任がある。
お茶の容器を一旦テーブルに置くと、ベッド脇に置いてあったミニサイズのゴミ箱を持ちながらしゃがんで割れたグラスの破片を拾う。
ホウキなどは無いため、手を切らないようにティッシュを何枚か重ねて細かい破片を拾っていく。
「これで全部拾えたかな?」
一通り破片を拾い終えると、棚から別のグラスを取ろうともう一度棚の扉を開く。
「あ、このティーカップ…!」
棚の手前には、龍司が前に湊にココアを淹れてくれたティーカップが仕舞ってあった。
「龍司が俺のために用意してくれたティーカップだ」
嬉しくて使うのがもったいなくて使ってなかったけど、目に付く所に置いておきたくて、湊の丁度目線の辺りの一番手前に置いてある。
龍司に会う事が出来なくても、龍司から貰ったこのティーカップを見るだけで心が満たされるような気持になってくる。湊にとっての特別なティーカップだ。
ここで湊はあることに気付いた。
「えっ…うそ…」
取っ手の部分から、根元にかけてヒビが入っている事に気づいたのだ。前に一度使ってから一度も使っていない。ヒビが入るはずなんてなかった。
「龍司が俺のために用意してくれたティーカップ…あれから1回も使っていないのに、なんでヒビが入っているの…?」
(大切に保管していたのに…)
(使っていないのにヒビが入るなんておかしい…絶対に)
宝物に触れるようにティーカップへと手を伸ばす。
湊が取っ手を掴んだ時、取っ手部分が根元から切り離すように取れてしまった。
本体のカップの方は、落ちないようにもう片方の手で支えるように持っていたため、割れずに済んだ。
「どうして…」
取っ手と本体を交互に見る。
もうこのティーカップを使うことができないと思ったら、悲しくて仕方がなかった。
そしてふと、胸騒ぎがした。
「…龍…司…?」
(まさか…龍司になにかあった…?)
グラスに続いて、1度しか使っていないティーカップまでもが立て続けに割れるなんて明らかにおかしい。
嫌な予感がした。
鼓動が次第に早くなっていく。
「龍司…!!」
湊はテーブルに置いていたスマートフォンを手に取り龍司へと電話をかける。
しかし繋がることはなく、すぐに留守番電話に繋がる機械音が流れた。
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