Last Smile

第4章：ふたりの想い、消えゆく笑顔

180話

体が思うように動かない。

下半身に熱が集中し、主張するかのように性器がパンツを押し上げてくる。

（気持ちが悪い…っ）

（なんでこんな女なんかに反応するんだ…ッ）

自分の意識と反するように反応した性器と自分自身に嫌悪感が込上げてくる。こんなのは自分の体じゃない。

（湊以外の…ましてや嫌いな七瀬相手にこんな風になるはずがない…！）

人生の中で一番最悪な気分だった。

薬を盛られているとはいえ、湊ではなく七瀬の行為によって反応してしまった自分自身が気持ち悪い。

鎮めようとするも、口の中に侵入してきた七瀬の舌が口内で動き回るせいで、治まるとどころか更に体が熱に支配されていく。


（くそっ…！体に力が入らないッ）


（なんでこんな女なんかに反応する…！）


（治まれ！治まれ！！）


（治まれ！治まれ！！）


七瀬の舌が、歯列をなぞり龍司の舌を吸い上げる。


「んッ…んちゅっ…ッはぁ…んんぅッ」



（吐きそうだ）



―――ガリッ


絡みつく七瀬の舌を思いきり噛んだ。


「いッ…！！」


一気に鉄の味が広がり、七瀬の唇が離れた。

火照る体と頭痛で頭が朦朧とする中、振り絞った精一杯の力で七瀬の体を押す。

七瀬は口端から滴った血を指で掬うと、舌を這わせる。

「ふふっ。まだそんな力が残っていたの？…もうこんな抵抗させない…あなた達！龍司様をＶＩＰルームへ連れて行って！！」


（VIPルーム…？何をするつもりだ？）


七瀬の声と同時に、大柄な黒人の男二人と、見覚えのある男が一人部屋に入ってくる。
見覚えのある男の姿に、龍司の表情は徐々に険しいものとなっていった。


「私は少し準備をしてくるから、その間…好きにしてていいわ」

男達に向かって叫んだ七瀬は、男達と入れ替わるように部屋を出て行った。


龍司の目の前に立ち尽くし、龍司を見下ろす男の名前を口に出す。



「…呉橋…ッ」

（何故こいつが今ここにいる？）

（屋敷に入る前、確かに七瀬は夜まで来るなと呉橋に言っていたはずだ。そして呉橋の車は確かに俺たちが下りた後、敷地から出て行った…）


（それなのになぜ…）


龍司は、痛む頭をフル回転させて屋敷に入る前の事を思い出す。

次第に霞んできた視界と、強烈に襲ってくる眠気に瞼がくっつきそうになるのを必死に耐える。
飛びそうになる意識を必死に保ちながら、近づいてくる呉橋と大柄な体型の黒人を睨みつける。
目が合った呉橋は、これまでにない不気味なほどの笑顔を浮かべていて、その瞳は真っ直ぐに龍司の姿を映していた。

近づいてきた黒人が、左右から龍司の腕を掴んでくる。
柱のように太い腕の男２人に押さえられては、抵抗すらできない。
ただでさえ薬のせいで力が入らない龍司の体は、男達にされるがままいとも簡単に立たされてしまった。