Last Smile

神坂ろん

文字の大きさ
上 下
144 / 196
第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔

142話

しおりを挟む


「あいつは、俺の性格も社長の性格も知っている。俺達が戯言のような言葉を鵜呑みにするとは思ってないはずだ…。―でも、もし本当に誰かが社長を狙ってるとしたら、一体誰が―――?」

歩いていた足を止める。

考えても、龍司を狙う相手が誰なのか見当もつかない。
龍司ほど大きい会社のトップに立つ人間にもなれば、レベル的に素人では無理だ。

そうなると、その筋のプロの可能性が高いという事になる。
会社ではスパイや護衛の仕事を多くこなしている為、裏の世界でも顔を知らない者はいないと言われている。
いつ誰が狙ってきてもおかしくない状況で、龍司は常に生活をしている…狙ってくる人間が多すぎて、逆に誰が相手か洗い出す事の方が難しい。

「――…念のため、社長に報告しておくか。」

ゼロはコートの胸ポケットから携帯を取り出すと耳にあて、止めていた足を再び動かしながら最奥にある仕事部屋へと歩いていった。








―――・・・



「どうしよ…。読み終わっちゃった…」


時刻は午後17時30分をまわった所だ。
医務室のベッドに座りながら、龍司から借りた小説を読み終えた湊が本を閉じると、嘆く様に呟いた。

オムライスを食べ終わって話していた時、龍司の携帯が再び振動と共に音を鳴らした。
そしてその電話の直後、神妙そうな表情を浮かべたまま、「用事が出来たからちょっと出かけてくる」と言ってルカと一緒に部屋から出ていってしまったのである。

どうしたの?
何かあった?

そう聞きたかったのに、とてもじゃないがそんな事を言える雰囲気ではなかった。
だから、あまりいい内容の電話ではなかったんだろう。

龍司の表情と雰囲気ですぐに分かってしまった。

閉じたままの本の表紙をじっと見つめ、湊はため息をつく。
持っていた本をサイドテーブルにそっと置いた。

「龍司もいつ帰ってくるか分からないし、本も読み終わっちゃったし…どうしようかなぁ…」

ベッドから離れ、窓から外を見れば、薄暗くなった自然の景色が見える。

自宅であるマンションから見る景色は、木々や花などの自然が多くみられるが、龍司の会社から見る景色はどちらかと言うと、建物が少しばかり多い気がした。
しかし、規模が大きい会社だけあって敷地を高い壁で囲っており、内側の敷地内には壁と並んでいくつもの木々や沢山の花が植えられている。

どちらかと言うと、田舎の自然溢れる場所の方が好きな湊は、敷地内の自然を見ると気持ちが落ち着く気がした。
窓を開ければ、清々しい風が体をすり抜けて、大きめの深呼吸をする。

そんな時、部屋の扉をノックする音が聞こえて振り返った。


「はい!どうぞっ!」


龍司が帰ってきたのかと思い、扉の向こうにいるだろう人に返事をすれば、暫くの沈黙のあとに聞こえたのは、龍司の声でもルカの声でもない知らない女性の声だった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

攻められない攻めと、受けたい受けの話

雨宮里玖
BL
恋人になったばかりの高月とのデート中に、高月の高校時代の友人である唯香に遭遇する。唯香は遠慮なく二人のデートを邪魔して高月にやたらと甘えるので、宮咲はヤキモキして——。 高月(19)大学一年生。宮咲の恋人。 宮咲(18)大学一年生。高月の恋人。 唯香(19)高月の友人。性格悪。 智江(18)高月、唯香の友人。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

兄弟愛

まい
BL
4人兄弟の末っ子 冬馬が3人の兄に溺愛されています。※BL、無理矢理、監禁、近親相姦あります。 苦手な方はお気をつけください。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

堕ちた双子

ゆきみまんじゅう
BL
双子の兄弟である陸斗と海斗。 幼い頃に両親を亡くした陸斗は、父親代わりとなって海斗を支えてきた。 陸斗にとって、海斗はたった一人の家族であり、自分の身を挺してでも守りたい存在だった。 ある日、海斗が痴漢の被害に遭っていると知った陸斗は、痴漢を捕らえるために、身代わりになることを決める。 しかしそれが、仕掛けられた罠だったとは、まだ陸斗は知らなかった。

くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~

天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。 オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。 彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。 目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった! 他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。 ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです

処理中です...