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第3章:歯車は動き出す
91話
しおりを挟む近くに行けば、センサーによって自動で開くはずの扉も開かずに龍司の前で閉じられたままだ。
手を伸ばし動かしてみれば開いた事から鍵は閉まってないようだ。
中に足を踏み入れて周りを見渡すが、やはりどこにも人の姿はなかった。
受付にいつも待機している女性すらも今は見当たらない。
全くの無人で、静まり返った異様な空間がそこにはあった。
龍司はエレベーターに乗り最上階へと向かった。
誰もいなくても会社自体に入れない訳ではないという事は、誰かしらがいるはずだ。
そうなってくると、自動的に可能性としてあげられるのは洸太郎しかいない。
いつもなら気持ち悪いと思ってしまうエレベーター特有の浮遊感は、今は感じられず、ただただ無感情のまま目的の階へ辿り着くのを待つ。
漸く最上階に辿り着き、真っ赤な絨毯が敷かれた最上階の廊下へと足を踏み入れる。
最上階には、龍司の部屋として与えられた副社長室の他に、洸太郎の社長室があるのみ。
龍司はゆっくりとした足取りで長い廊下を進む。
気持ちが悪い位に静寂に包まれた最上階の空気は、今の龍司の心情を表すかのようにひんやりと冷たかった。
目の前に現れた社長室の扉をノックする。
しかし、予想通り中からの返事はない。
――…父上はいないのか?
いや、そんな訳はない。
中から人の気配がする。絶対にいるはずだ。
龍司は確信を得ながら、無言でドアノブをまわした。
「…外の見張りから聞いてはいたが…死ななかったのか。」
「あれはなんの真似ですか?父上」
――…ここにもいたのか。
部屋に入ると、大きな窓際のデスクに背を向けて座っていた洸太郎が椅子を回転させ振り返ってきた。
洸太郎が不敵な笑みを浮かびながら龍司に訊ねてくる
しかし、社長室にいたのは洸太郎だけではなかった。
洸太郎の周りには、龍司を殺しに来た殺し屋と同じ格好をした男達が数人立っていたのだ。
都心のど真ん中が場所なだけに、さすがにショットガンは構えてはなかったが、小型銃やナイフと言った武器は持っているだろう。
「なんの真似とはなんだ?…邪魔なお前を殺そうとした…ただそれだけだが?」
「…おれがこの間部屋であなたに言った事…そこまで知られたくなかったという訳ですか…。あなた、自分がやった事の重大さを分かっているんですか?
仮にも実の父親が、息子を殺し屋に頼み暗殺しようとするなんて、頭が可笑しいとしか言いようがない。そう言う事にしか頭を使う事が出来ないから、あなたはだめだというんです」
「っ…なんだと!?」
洸太郎の表情が分かりやすく変わった。
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