86 / 196
第3章:歯車は動き出す
84話
しおりを挟む「そんな事は知りませんよ。…おれはこういうやり方が一番嫌いなんです!あなたは自分が何をしたのか分かっているんですか!?この事が表ざたになれば――、きっと月嶋財閥の会社は一気に経営不振になるでしょう。―…そうなれば芋づる式に久堂の、あなたがやってきた事も世間に知れ渡ります」
「そんな事は私だって分かっている!!月嶋社長には昔から仕事でお世話になっているんだっ…!私が力にならないでどうする!?社長も朋也くんの趣味の事も地下の事も全部知っていた…、いずれ誰かにばれるのも予想はしていたっ!しかしっ…、まさか百合亜とその子供までいなくなるとは思わなかったのだ…っ!!亜矢子には警察には届けを出したと言っているが、本当は出してなどいない!届けなど出せば、全て明るみになるだけじゃなく、これまで隠していた事も、あの努力も無駄になってしまう…――お前の様な半人前の子供では到底わからないだろう!知った様な口をきくんじゃない!!」
顔を真っ赤にして、目を血走らせた洸太郎が肩で呼吸をしながら捲し立てる。
今までだってこんな洸太郎の姿を見た事はなかった。
いつも無表情で冷たい瞳をして、龍司に対して怒鳴ってばかりだったあの冷酷な洸太郎が、今目の前で必死になって怒りを露にしている。
驚かない訳がない。
食器を片し、テーブルを拭いていたメイド達が、居心地が悪そうにチラチラと様子を見てきていた。
この場に痛くなかったのだろう、悪すぎる空気を察して早々に後片付けを終わらせると部屋を出ていった。
「…お言葉ですが、おれはこれまでいろんな事を見てきたつもりです。あなたの言うようにおれはまだ子供で、まだ後継者として完璧ではないのは事実です。…ですが、勉学は一通り学びましたし、歴史ある久堂財閥の後継者として大事な事はあなたから知識を教わり、そして盗んできました。月嶋朋也が地下に監禁していた人たちに打っていた人形薬NT-1099を中和する薬を開発提案したのも、地下を爆発した起爆装置を作ったのもおれです。…まだ子供ではありますが、おれはあなたと違い出来る事は多いと自負しています。」
「…。」
「人をゴミだのクズだの見下し、口だけ偉そうな言葉を並べ、ろくに仕事に加担せずにあなたがする事と言えば、何人もの女性と体を重ねる事…。そして、自分よりも身分の高い者には態度を変え、下だと判断した者には容赦しない扱い。自分の子供を操り人形の様に接するあなたと違って…おれは子供ですが会社を継ぐ人間として素質はあるかと思います。―――あなたよりも」
「っ…!!なんだと!?」
先程までの無表情はどこに行ったのか、洸太郎は露骨に怒りを露にした。
これまで操り人形のように扱ってきた龍司に図星を差され屈辱なのだろう。
今にも飛びかかってきそうな程の気迫だ。
龍司は、そんな洸太郎を見つめながら嘲笑った。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
攻められない攻めと、受けたい受けの話
雨宮里玖
BL
恋人になったばかりの高月とのデート中に、高月の高校時代の友人である唯香に遭遇する。唯香は遠慮なく二人のデートを邪魔して高月にやたらと甘えるので、宮咲はヤキモキして——。
高月(19)大学一年生。宮咲の恋人。
宮咲(18)大学一年生。高月の恋人。
唯香(19)高月の友人。性格悪。
智江(18)高月、唯香の友人。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
堕ちた双子
ゆきみまんじゅう
BL
双子の兄弟である陸斗と海斗。
幼い頃に両親を亡くした陸斗は、父親代わりとなって海斗を支えてきた。
陸斗にとって、海斗はたった一人の家族であり、自分の身を挺してでも守りたい存在だった。
ある日、海斗が痴漢の被害に遭っていると知った陸斗は、痴漢を捕らえるために、身代わりになることを決める。
しかしそれが、仕掛けられた罠だったとは、まだ陸斗は知らなかった。
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる