48 / 196
第3章:歯車は動き出す
46話
しおりを挟む朋也は頷くと、リビングの窓から覗く薔薇をどこか遠い目で眺める。
なにかから逃げられない。
助けてほしい…。
囚われている何かから抜け出せないでいる人がする瞳は、龍司にはすぐに分かってしまう。
それは自分がそうだからだ。
――やっぱり、おれが思っていた事は当たっていた…。
この男は何か隠している。
なにかに囚われている。
「気づいていたよ。だって、俺が隠している事を初めて会って感じ取る事が出来た人は…龍司くんで2人目だからね。―…もちろん1人目は君のお姉さん、百合亜だ。」
「――――!」
「百合亜は、龍司くんと同じで最初に会って見抜いた。龍司くんみたいに嫌われはしなかったけど…。君がいるからなんだろうね…。俺の事をずっと気にかけてくれたよ。あんな素敵な人に俺は初めて会った。こんなにも美しい天使の様な人がいるのかと思った…好きにならない方が無理だ。」
「そう…ですか…。」
切なそうに、懐かしそうに話す朋也の表情は穏やかだった。
じっと外を見ていた視線は、漸く龍司の姿を瞳に映す。
「あの、あなたが隠している秘密って――…」
始めて会った時から、ずっと気になっていた瞳の奥に感じる嫌な何かの正体を聞こうとした時だった。
「ただいまー!龍司来てる~?」
「!!」
玄関の扉が開くと同時に聞こえてきた百合亜の声に、喉まで出かけていた言葉を呑み込む。
パタパタとスリッパの音を鳴らしながら足音が近づいてくると、リビングの扉が開いた。
「おかえり百合亜!走ったら駄目じゃないか…!こんなにたくさん買い物袋を持っているんだし、何より湊を抱っこしたままなんだから!」
百合亜が大きな買い物袋を両手に持ちながらリビングに入って来るや否や、朋也がすぐに立ち上がり、近くに駆け寄ると百合亜から買い物袋を受け取りキッチンへと持って行く。
「ふふ、ありがとう。朋也。」
嬉しそうに微笑んだ百合亜が、空いた両手で抱っこ用の紐を解きながら抱きなおすと、龍司が座るソファへ近づいてくる。
「おかえり。そしてお邪魔しています。百合亜ねえさん…。」
「いらっしゃい龍司。せっかく来てくれたのに、私が出ていった時とすれ違いで待たせちゃってごめんね?」
困った様な表情を浮かべた百合亜が龍司のすぐそばに座ると、龍司の黒髪を優しく頭を撫でる。
龍司は百合亜の不意打ちの行動に恥ずかしくなってしまい、思わず顔を逸らしてしまう。
百合亜は優しく笑うと、抱っこしていた赤ちゃんをそっと龍司の腕の中に抱かせてきた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
攻められない攻めと、受けたい受けの話
雨宮里玖
BL
恋人になったばかりの高月とのデート中に、高月の高校時代の友人である唯香に遭遇する。唯香は遠慮なく二人のデートを邪魔して高月にやたらと甘えるので、宮咲はヤキモキして——。
高月(19)大学一年生。宮咲の恋人。
宮咲(18)大学一年生。高月の恋人。
唯香(19)高月の友人。性格悪。
智江(18)高月、唯香の友人。
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
堕ちた双子
ゆきみまんじゅう
BL
双子の兄弟である陸斗と海斗。
幼い頃に両親を亡くした陸斗は、父親代わりとなって海斗を支えてきた。
陸斗にとって、海斗はたった一人の家族であり、自分の身を挺してでも守りたい存在だった。
ある日、海斗が痴漢の被害に遭っていると知った陸斗は、痴漢を捕らえるために、身代わりになることを決める。
しかしそれが、仕掛けられた罠だったとは、まだ陸斗は知らなかった。
くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~
天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。
オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。
彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。
目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった!
他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。
ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる