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その刹那、右手を包む温かな魔力の温度が一瞬上がり、辺りは若菜色に眩く輝いた。
そのあまりの眩しさに目を細め、僕は何度か瞬きを繰り返してから、掌の上に乗っていた物をジッと見詰めた。
……細かく砕けた大小色とりどりの鋭利な金属片らしき物と、極細の謎の繊維が多数と、後は小石と小石っぽいナニカと、砂と粉?
掌の上で高さ2mm未満くらいの小山になっていた物の、パッと見た感じの印象は正にそんなで、思ってたよりも色んな物がたくさん身体の中に入ってた事に驚きつつ、僕は掌の上の物を眺めながら考え込んでしまった。
一個一個の破片の大きさが本当に小さくて細かい。
これ、きっと向こうの世界で全てを取り除こうとしても絶対に不可能だっただろうな…
「コレが全部私の身体に入ってたのかい?」
アヤさんが呆れたような声で僕に聞いてきた。
僕はコクリと頷くと、破片の乗った右手をアヤさんの方へと近付けて見せた。
「大き目の物を【鑑定】して見ると、龍の鱗や牙の欠片や折れたオルハリコンの剣の破片なんかが多いみたいだね。これは身体のあちこちに違和感も出る訳だよ…」
そう言って、アヤさんは僕が持っていた破片の小山を無限収納から取り出した瓶の中に詰めて仕舞うと、柔軟体操をするみたいに肘や膝や腰なんかの曲げ伸ばしを始めた。
小さくトントン跳んでみたり、勢いよく腕を振ってみたりして軽く動作確認をすると、嬉しそうに破顔して僕に抱き付いてきた。
何かを言おうとして言葉にならなかったのか、アヤさんは何度も大きく息を吐くと、身体を震わせながら僕の肩口に顔を埋めた。
僕はそんなアヤさんの背中を優しく撫でていると、やがて小さな嗚咽が聞こえてきて、胸がギュッと痛くなった僕はアヤさんの背中に両腕を回して強く抱き締めた。
そして僕が右手で頭を撫でながら、左手で背中をポンポンしていると、暫くしてアヤさんが恥ずかしそうに顔を上げた。
まだ長い睫毛や目の縁が涙で濡れていて、僕が人差し指で拭ってあげると、アヤさんは真っ赤になって無限収納から蒸しタオルを取り出し、大急ぎで顔をゴシゴシと拭いてしまった。
「あーーもう、大の大人が子供の前で何度も泣いちゃって情けないぃ~~」
アヤさんが叫びながら自分に治癒魔法を掛けて泣いていた痕跡を消してしまうと、僕はガッカリして肩を落とし、溜息を吐いた。
「え?何?どうしたの?」
「……たかった」
「え?」
「僕が治してあげたかったのに…」
ついそう小さく呟くと、アヤさんは照れた顔で心から嬉しそうに笑って僕の頭を撫でてくれた。
「もう腕輪の石が黄色になってるからね、今回は充分だよ。それよりも本当にありがとう」
改めて頭を下げてお礼を言われ、僕は首を横に振った。
だって、泣いているアヤさんを見てるのが辛くて、でも何もしてあげられなくて、ただ抱き付かれて抱き締め返す事しか出来なかったのに。
頭を撫でて背中をポンポンしたり、そんなの、気が付いたらやっちゃってただけだし。
だから、ちゃんと役に立ちたかったのに…
そのあまりの眩しさに目を細め、僕は何度か瞬きを繰り返してから、掌の上に乗っていた物をジッと見詰めた。
……細かく砕けた大小色とりどりの鋭利な金属片らしき物と、極細の謎の繊維が多数と、後は小石と小石っぽいナニカと、砂と粉?
掌の上で高さ2mm未満くらいの小山になっていた物の、パッと見た感じの印象は正にそんなで、思ってたよりも色んな物がたくさん身体の中に入ってた事に驚きつつ、僕は掌の上の物を眺めながら考え込んでしまった。
一個一個の破片の大きさが本当に小さくて細かい。
これ、きっと向こうの世界で全てを取り除こうとしても絶対に不可能だっただろうな…
「コレが全部私の身体に入ってたのかい?」
アヤさんが呆れたような声で僕に聞いてきた。
僕はコクリと頷くと、破片の乗った右手をアヤさんの方へと近付けて見せた。
「大き目の物を【鑑定】して見ると、龍の鱗や牙の欠片や折れたオルハリコンの剣の破片なんかが多いみたいだね。これは身体のあちこちに違和感も出る訳だよ…」
そう言って、アヤさんは僕が持っていた破片の小山を無限収納から取り出した瓶の中に詰めて仕舞うと、柔軟体操をするみたいに肘や膝や腰なんかの曲げ伸ばしを始めた。
小さくトントン跳んでみたり、勢いよく腕を振ってみたりして軽く動作確認をすると、嬉しそうに破顔して僕に抱き付いてきた。
何かを言おうとして言葉にならなかったのか、アヤさんは何度も大きく息を吐くと、身体を震わせながら僕の肩口に顔を埋めた。
僕はそんなアヤさんの背中を優しく撫でていると、やがて小さな嗚咽が聞こえてきて、胸がギュッと痛くなった僕はアヤさんの背中に両腕を回して強く抱き締めた。
そして僕が右手で頭を撫でながら、左手で背中をポンポンしていると、暫くしてアヤさんが恥ずかしそうに顔を上げた。
まだ長い睫毛や目の縁が涙で濡れていて、僕が人差し指で拭ってあげると、アヤさんは真っ赤になって無限収納から蒸しタオルを取り出し、大急ぎで顔をゴシゴシと拭いてしまった。
「あーーもう、大の大人が子供の前で何度も泣いちゃって情けないぃ~~」
アヤさんが叫びながら自分に治癒魔法を掛けて泣いていた痕跡を消してしまうと、僕はガッカリして肩を落とし、溜息を吐いた。
「え?何?どうしたの?」
「……たかった」
「え?」
「僕が治してあげたかったのに…」
ついそう小さく呟くと、アヤさんは照れた顔で心から嬉しそうに笑って僕の頭を撫でてくれた。
「もう腕輪の石が黄色になってるからね、今回は充分だよ。それよりも本当にありがとう」
改めて頭を下げてお礼を言われ、僕は首を横に振った。
だって、泣いているアヤさんを見てるのが辛くて、でも何もしてあげられなくて、ただ抱き付かれて抱き締め返す事しか出来なかったのに。
頭を撫でて背中をポンポンしたり、そんなの、気が付いたらやっちゃってただけだし。
だから、ちゃんと役に立ちたかったのに…
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