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  Blue Moon 5

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 ***


 教頭がタクシーを呼んでくれて、大急ぎで駅に向かう。

 平日だったのが幸いして、12:32分発の新幹線がまだ指定席が取れるとのことで慌てて券を買い、10分前にふたりホームに走り停車している新幹線に飛び乗る。

 流れる景色の速さが、まるであたしの心の動きのようだ。

 昨日N県に来る新幹線の中では、帰りは朱羽と一緒に帰れないかもしれないと憂い、プレッシャーだった任務をなんとか果たすことが出来た夜、朱羽への恋心を自覚して自分から朱羽に甘えた。翌る日に待っていたのは、実家は既になく、両親と妹、彼氏まで死んでいるという事実。記憶の齟齬。

 そしてどうやらあたしの高校時代は、結城と社長が関係しているという不明瞭ながらの確信と、突然の社長の重篤。

 目まぐるしい現実に、なにからどう考えていいのかわからない。

「少し寝てるといい。大変だったし、これからはまた寝不足が続くかもしれないから。着いたら、起こしてあげる」

 朱羽があたしの身体にコートを被せ、腕を抱くようにして引き寄せ、あたしの頭を彼の肩に凭れさせた。

 朱羽の香りに包まれて幸せなのに、どこか苦しい。

 あたしは幸せになってはいけない……そんな思いが、心に湧くのだ。

 守と千紗が事故に遭ったことに、あたしは無関係と言い切れるか。

 少なくとも両親が自殺したのは、あたしのせいだ。

 そんな親不孝娘は昔の辛い記憶を捨て、東京で罪の意識さえ抱かす過ごした。さらには恋のために満月を克服できると思ったあたしは、家族の死と結びついたものを過去の出来事として、前を向けるのか。

 罪深いあたしに関わった者達が死んだ。
 だから社長もきっと、いずれ朱羽も――。

 離れなきゃ。
 一緒に居てはいけない。

 それに――。

 ひとのいい朱羽も、もういい加減うんざりしたはずだ。
 面倒臭い思い女だと。

 朱羽に触れた頭を持ち上げようとした時、肩にある朱羽の手があたしの頭にあがり、強引にまた彼の肩に戻し、その上に顎まで乗せられる。

「おかしなこと考えているだろう、今」

「……っ」

「悲劇のヒロインぶるな。あなたに関係ない偶然までも、自己嫌悪で罪として背負うんじゃない。そのうち世界のすべての悪が自分のせいだと思うぞ」

 強い語気なのに、朱羽があたしの頭に落とす唇は優しくて。

「……でも、あたしに関わると……」

「はは。今更じゃないか」

「え?」

「それに……、本当に辛いのはここからかもしれない。後はあのひとの良心を信じるしか……」

「ごめん、聞こえなかった」

 朱羽はあたしの額に唇を押しつけた。

「何度言えばわかるんだよ、俺は嘘をついて裏切る男じゃないんだって。……と、言ったの」

「そ、そう? もっと長かったように思ったけど」

「気のせいだ。まだ俺のこと、信じられない? だから離れようと?」

「そ、それは……」

「なに、俺あなたに遊ばれてるわけ? そうか、あなたを気持ちよくさせるためだけの道具か。それ以外には必要ないんだ」

「ち、違う!!」

「俺、なんのために我慢してたんだろう。あなたが元々ブルームーンを俺と過ごす気がなかったの知らずに、凄く我慢してたなんて。俺ひとりでブルームーンを一緒に過ごせると楽しみにしてたんだ」

「だから違うってば!! あたしは朱羽とブルームーンを過ごしたいから、過去と向き合おうとしたんじゃない。あたしだって楽しみにしてたわよ」

「へー」

「朱羽っ!! 勘違いしないでよっ!!」

 あたしは朱羽の顔を見上げた。

「勘違い? だったらあなたは俺に抱かれたいの? 嫌なんじゃないの、すっごく俺傷ついたんだけど。ああ、俺もうお払い箱なんだと思ったら」

「だから勘違いだってば!! あたしは朱羽に抱かれたいの!! ブルームーンを一緒に過ごしたい、お払い箱なんかじゃないの!!」

「ふーん。あなたは俺に抱かれたいんだ」

「そうよ、抱かれたいわ」

「ブルームーンだけ?」

「だけじゃない、その後も朱羽に抱かれたい……」

 そして気づく。

 周囲からのわざとらしい咳払い。

 にやにやしている朱羽。


 ……やられた。

 
「陽菜」

「………」

「こっち向いて、陽菜」

 絶対そっち向くものか。

「いじっぱりな、陽菜」

 あたしは窓に張り付いている。

「俺とブルームーン過ごしたいなら、こっち見て」

「………」

「取り消し?」

 あたしは渋々と反対を向いて、頬を膨らます。

 すると朱羽は、憎らしいくらいに綺麗に笑うと、顔を傾けて尖った唇にキスをしてきた。

 何度も何度も啄むように。
 ……大丈夫だよと安心させるように。

 そして、最初のようにあたしの肩を抱き、頭を彼の肩に凭れさせた。また抵抗したら、なにかされる。同じ事はしてはいけないと、朱羽に対する教訓と学習能力はついた。

「ブルームーンがもう来ていたらよかったな」

 朱羽が呟く。

「そうしたら俺は言葉であなたを縛れる。だけど……約束を破れない今は、俺を信じてと言うしか出来ない」

 朱羽が手を握ってきて、指を絡ませた。

「ごめんね、俺、不器用だし女慣れしていないから、どうすればあなたを安心させられるのかよくわからない。今さらだけど、あんなところを見られて、あんなことしておいてなんだけど、俺……、誰にでも年中発情してる男じゃないから」

 朱羽の顔が赤く染まり、あたしはぷっと吹き出した。

「……笑うなよ」

 むくれた顔が向けられる。

「ご、ごめ……ぷ、ぷぷっ!」

 駄目だ、笑いが止まらない。

「あ、あたし……、そんなこと思ったこと…、ない、ぷぷっ」

「……だったらいいけど……、いい加減笑いをとめろよ」

 うわ、なにこの可愛い生き物。
 外観は大人びた、頼れる上司なのに。
 
 朱羽に睨まれながらも笑いを鎮めると、朱羽が言う。

「あなただけだよ」

「え?」

 目尻の涙を指で拭い取りながら聞き返した。

「あなただからだ。俺が我慢してるのも。だから自分を卑下しないで、優越感を持ってよ。あなたはそれだけの女なんだって。どんな過去も関係ない。俺と相対しているのは今のあなたなんだ」

「………」

「俺があなたの傍から離れないというのは、あなたにはなんの根拠もないかもしれないけれど、俺にはちゃんとした根拠がある。だから、俺のためとか言って離れようとするのはよして。そういう理由は、俺認めないよ。そんなことしたら、強硬手段をとらせて貰うから」

「……っ」 

「どんな理由でも逃しはしないよ。……可哀想な陽菜。俺とブルームーンを過ごしたいなんて言ったばっかりに、俺につけ上がられて」

 あたしを過去ではなく、現在の鹿沼陽菜に固定させようとしているのが痛いほどよくわかった。

「ありがとう……」

「別に礼を言われることしてないよ。礼なら……ブルームーンが明けた朝に言って」

 朱羽はあたしの耳に唇を近づけて言う。

「"ありがとう、こんなに気持ちよくしてくれて。また挿れて?"」

「朱羽っ!」

「あはははは」

 あたしが怒ると、朱羽は端麗な顔を綻ばせて笑う。

 彼は外見上は落ち着いた……冷静沈着な雰囲気に見えるけれど、時にこうして子供ような無邪気な笑いを見せてくる。

「陽菜、大丈夫だよ」

「え?」

 笑いをやめたその顔は、哀愁が漂うもので。

「なにも変わらない」

「………」

「社長も頑張っているんだ。死ぬなんて思うのは失礼だ。俺達が信じなきゃ」

「……うん」

「聞きたいことがあるだろう、あなたには。結城さんにも」

 あたしは大きく頷いた。
 
「ねぇ、朱羽はいつからあたしの家族が死んでいたと思ってたの?」

「……満月の話を聞いた時。家族の話題をあなたが無意識に避けている気がしたから、もしも、と思った。家族と連絡を取らないのではなく、取れないのではないかと」

「そんな早くに……」

「あなたがただ思い出したくないだけかと思ったけれど、そこに精神科医……御堂医師だっけ? それが実際あなたを診ているというのなら、あなたの記憶の欠如は彼の介入があることは間違いないだろう。まさかそこからもう、結城さん……いや月代社長からの繋がりだとは思っていなかったけれど」

「あたし、あのふたりには本当にお世話になってたんだね」

「それは、忘れちゃいけないよ、陽菜」

 朱羽が言い聞かせるように言う。

「たとえ、他にまだなにかあったとしても、あなたは彼らに助けられていたことを」

「……そうだね」

 昔の結城とどんなことがあったとしても、あたしにとっての結城は、今の結城だから。
 満月に泣きながら助けにきてくれた結城を、あたしは信じたい。

「朱羽は、他のことも予想しているんだ」

「……なんとなくだけど、状況的に」

「状況?」

「あなたは男友達の方が多かったわけでもないのに、家にそんなに多くの男子を呼んでいたという点がひっかかる。たとえ彼氏の友達だとしてもだ。恐らくは両親が居ない時に来たんだろうけど、そんな不良じみた異性が集団で押しかけることにあなたも千紗ちゃんもなんで受容していたか」

「え……? どういう……」

「これ以上は内緒」

「ケチ」

「ふふふ」
 
 朱羽が核心を言わなかったことにどこかほっとしてしまったあたしは、なんとなくわかっている。

 朱羽が言いたがらないのは、それはあたしか結城か、或いは両方かにとって暴かれて貰いたくないことだろうということに。

 それを証拠に朱羽の横顔は厳しい。

 今も朱羽は思い至ったそれに、思いを馳せているのだろう。

 あたしはそっと目を閉じた。


 瞼の裏に映る映像が意味を持たなくなってしまった頃、あたしは夢の中に居た。

 乳白色の霧に包まれた中、足音がする。

 あたしの苦手な昔の結城が、崩した学ランを着て真向かいで足を止めた。

 凄みある顔で威嚇しているのに、瞳が澱んでいる。

 触ったら切られそうなほどに鋭利な空気を纏っているのに、同時に彼は、脆弱な悲壮感を漂わせていた。

 彼は口を動かした。


『うるせぇ。永遠なんてねぇんだよ』


 今の結城の声音で、あたりに反響する。


『壊してやる』


 憎しみが込められたような結城の声が、どこまでもどこまでも響き渡った。
 どこまでも……、あたしが封印していた、あたしの記憶の深層までも。


   ・
   ・
   ・
  
   ・

 うなされたらしく、朱羽に起こされてから、タブレットに連動したスマホにメールが入る。

 木島くんが差出人だ。よく見れば何度も社長や会社の様子を伝えたメールをくれている。

 結構彼、ガタイに似合わずマメ男なのかもしれない。マネージャーだったというのが、なんだかよくわかる。

 今病室には、結城と衣里が必ずいるかと思いきや、結城は予定通り営業に回り、衣里の分を他の営業社員と手分けし、衣里が急病ということで都内を駆け回っているらしい。

 今のうちの会社には、"また"という言葉がない。なにがなんでも仕事をとらないといけない戦場のまっただ中にいるのだ。

 その戦場に、結城が自ら身を投じたことで、営業連中の志気が高まっている。そう、結城は仕事を投げ出して親の傍に居続けることは出来ないのだ。

 結城――。

 いつもの通りに、普通にしていないといけない。過去はどうであれ、今の結城への信頼を無くしたくない。あの笑顔は本当のものだと信じたいから。

 ……そう必死に思うのは、不安の裏返し。

 社長の容態が落ち着いたら結城と話したいと思うけれど、出来るならば逃げていたいと思うのも本音。

 いい過去が出てくる気がしないから。

 嫌な過去に、結城が居て欲しくないの――。


 "壊してやる"

 ねぇ、それはあたしの家族が死んだことに繋がっているの? それとも別のこと? ……あたしになにかをしたの?

 夢の中の結城の言葉が、あたしの遠い記憶にもあった。

 同時にぽろぽろとこぼれ落ちた記憶の断片。
 最初の夢にもそれは関わってきて、それが本当かどうか、結城に確認するのが無性に怖いの――。


 東京駅にもうすぐというところで、またもや木島くんからメール。

 木島くんは会社で作業があるくせに、杏奈に会社から追い出されて、社員は勿論のこと、結城やあたし達への報告係としてのミッションを課せられ、衣里と病室にいるようだ。

 木島くんの報告によると、結城が営業の合間に病室に来てすぐに、社長は自発的な呼吸が困難になってきたらしく、ピーピー機械音がうるさい中で人工呼吸に切り替えたとのこと。これで社長の容態が回復しなければ、あたしは社長と話すことが出来ないことになる。

――お~い、カワウソ~。

 最初からなにかと構ってきたやる気のない社長。
 だけど、会社の危機に誰もが頼った有能な社長。

 忍月コーポレーションから独立して、結城の父親で。宮坂専務も矢島社長をも魅了した、人望ある月代社長。

 お願いだから、こっちに戻って来て。

 逝くのは早すぎる。
 まだまだあたしは、聞きたいことがたくさんあるというのに。




 東京駅から、タクシーで東大付属病院へと急ぎ、社長の入院している特別室に駆け込んだ。

 ドアを開こうとしたら、自動ドアのように勝手に開いて、電気ポットを手にした木島くんが現れた。

「ひゃっ!」

 危うく木島くんとちゅうしそうなところで、そこから先はスローモーション。朱羽の手が前に出てきて、あたしの首に巻き付いた。ぐえっと仰け反りながら後退れば、危機一髪。

「うおっ、驚いた。お帰りだったんですね。課長、主任お疲れ様っす! せっかく昨日皆でお祝いしようとしてたのに、災難でしたっすね~。だけどいちゃつけたっすか? しゅうしゅう~」

 にやにやの木島くん、あたしとちゅうの危機に気づいていないようだ。

 しゅうしゅう息を吐いて、ちょっと触れただけで吸い付いて離れないような唇なんかいらないよ。あたし、まだ生きていたいよ。

「留守をお任せしてすみません。社長はいかがですか?」

 朱羽は涼しい顔をして、木島くんの戯れ言に乗らない。

 凄い勢いで首を絞められたけれど、それを見せずにいられるとは、うん、さすがの鉄仮面。 
 

「今は落ち着いているっす。人工呼吸にしたら最期だって真下さんは泣いて拒んでたんっすが、回復させるための処置だと言われ、数値的には安定はしてきてるみたいっすが、峠が今夜なのはまだ変わらないから、覚悟だけしていてくれって」

 あたしの顔が引き締まった。

「今、木島くんの他に誰かいるの? 衣里だけ?」
 
「十分前くらいに、営業の合間に寄られた結城さんがついてるっす。宮坂専務も来たっすが、会議があるからとちょっと前に帰られたっす。ちょっと今、お湯を沸かしますから、先に中にどうぞ。温かいお茶入れるっす! 吾川さんから貰ったお菓子もつけるっす!」

 おお、至れり尽くせりの木島くん。

 もしかして、あたしより女子力高いのかもしれない。

「木島マネージャー、ありがとっす」

「どう致しまして……って、あれ?」 

 首を傾げる木島くんの横を擦り抜けて、社長の下に行く。

「雅さん、ねぇ戻ってきてよ、雅さん」

 衣里の悲痛な鳴声が響き渡っている。

 社長を挟んで両側に、衣里と結城が居た。

 以前のように管と機械をつけられて、ベッドに横たわる社長――。

 顔色は紫色に近く、それだけでもう唇が戦慄く。さらに今は……社長の喉奥へと差し込まれた人工呼吸器がつけられており、その痛々しさに涙が出てくる。

「遅くなった! 今帰った!」

 衣里の傍に駆け寄ると、泣き腫らした顔をした衣里があたしを見た。

「陽菜、陽菜~っ!!」

 衣里あたしに抱きついてきて、声をあげて泣いた。あたしも涙を流して衣里を抱きしめる。

「雅さんが、雅さんがっ」

 社長と呼んでいないところに、彼女なりの動揺を感じた。

「大丈夫だよ、衣里。社長は強いんだから。だから、絶対また帰ってくる。衣里を残して逝っちゃわないから!」

「……陽菜っ」

「だから、だから。衣里、頑張ろう。諦めないで。ね?」

「う、うん、うんっ、私も……諦め、ないっ」

 こんな末期患者のように様々な器具により"生かされている"凄惨な場面を見せられて、それでも大丈夫だと信じられる人間はいるのだろうか。

 信じたいと思う心は、視覚が伝える現実に呑み込まれて行きそうだ。
  
 社長の手を握り、片手では衣里の頭を撫でながら、小さく声をかける。

「社長。あたしは色々……お礼を言いたいんです。あたしをムーンに入れてくれたのは、偶然じゃなかったんですね……と、衣里!?」

 衣里があたしの手にのしかかるようにして、気を失った。

 人間、意識がなくなった途端に凄まじい重さになる。両手を使ってもよろけるあたしを救ってくれたのは、背広姿の結城だった。

「あ、ありがとう」

 あたしが難儀した衣里をすっと両手で抱いて、客間に運ぶ。

「なあ、鹿沼」

 背中を向けたまま、結城が尋ねた。

「……俺の顔見ないのはどうして?」

「べ、別に……。衣里で手一杯で……」

「親父に、お前が会社に入ったのは偶然じゃなかったって、なに」

「そ、それは……」

 小さく言ったつもりだったのに。
 結城はあたしの変化に気づいている。


「N県で、なにか……、思い出したのか?」


 ……そう、そんなこともわかるくらい、あたしと結城は近くに居た。

 
「……っ」

 違うと言えなかったことを、是と受け取ったのだろう。

「鹿沼、後でちょっと話そうか」

 抑揚ないその声はどこまでも固く。

「俺これから、仕事二件入ってるんだわ。七時には帰れるとは思うけど。お前今日はどうする?」

「ここに泊まる」

「……だったら、夜でいい? お前、色々俺に言いたいことがあると思うけど。それまで待って貰えるか?」

 ねぇ、なんで。
 なんでそんなに冷ややかな声を出すの。

 あたし、結城の敵側に居る人間なのかな。
 やっぱりあたしは憎まれているのかな。

 今まであんなに仲良くやって来たじゃない。

 結城は、それをナシにしようとしてる?
 だから弁解もしないで、そんな声を出すの?

 ……確かに、このままじゃいけないね。


「わかった」

 
 逃げてはいられない。


「香月、ちょっと手伝ってくれるか。それと仕事の話もしたい」 

「……わかりました」


 ねぇ、朱羽。
 結城はどんな顔をしているの?

 困った顔? 怒った顔? 悔やんでいる顔?

 いつものように気軽に声をかけられないあたしは、それでも普通でいたつもりだったあたしは、どうしていいのかわからず、唇を噛みしめた。


――壊してやる。


 ナイフより鋭い……あの頃の結城の目が、あまりにも痛すぎて。

 
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