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憑き従われたその先に

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そんな日々が続く中、相変わらず外では妙な音が頭の中に響く。

ギー、ギー、ギー、ギー、ギー、ギー

それは昨夜もだった。
仕事で予定よりも帰りが遅くなり、時刻は二十一時を過ぎていた頃か。

ギー、ギー、ギー、ギー、ギー、ギー

駅からの帰り道に例の音が聞こえてきた。
しかも、いつもの様に頭の中に響くのではなく、明らかに外から聞こえる。
彼も音にはそれに慣れっこになってしまっていた。なんだかそのリズムに心地よさすら感じる。そして、その音に導かれるように歩いていく。

気づくと近所の公園にたどり着く。
辺りは暗く人の姿はない中を進んでいくと階段があった。その両脇には桜の木が並んでいる。

そのまま登っていくと目の前に。謎の輪っかが突然現れた。よくよく見ると桜の木からロープが垂れ下っている。輪っかはその先に作られたものだった。

そして、何故だろう。全く無意識にその輪っかに首を差し入れてしまう。
途端に、誰かに後ろから思いっきり突き飛ばされた。輪っかはそのまま首をきつく締めあげる。そして、

グッグッグッ………。

ゆっくり首が締まりっていき、そのまま意識が遠のいた。
そして気づけば病院のベッドで目を覚ましたのである。
何故そのようなことをしたのか、自分でも理解ができなかった。

なんだか夢の中の出来事のように現実感がない。
が、自分が病院に運び込まれたということと、首に残った違和感。
それらの事実が現実であることを証明していた・

「当分、入院生活か。いつ家に帰れるんだろう」
この状況になっても、彼の頭はリオナの事で一杯だった。

早く帰りたい。帰って彼女と話がしたい。
上手く声が出せないかもしれない。言葉が上手く届くかな。

「リオナ、君の声が聴きたいよ」

苦しい喉を押してそんなことを呟いてみる。すると、

「ねえ、聴こえる?」

彼は個室に寝ていたので部屋の中には他に誰もいない筈なのに、どこからか女性の声が聞こえてきた。

「え、だ、誰? ま、まさか」

聞き覚えがあるその声は彼が今まさに求めていたものだった。

「そうよ、私。良かった。聞こえてるのね。ねえ、来て」

声は扉の方から聞こえてくるようだった。
意識を取り戻したときに対応した医師には安静にするように言われている。看護師からも何かあったらナースコールを呼ぶように念を押されていた。が、
彼は声に導かれるように、部屋の扉にちかづく。すると、

「こっちよ、こっち」

廊下の方から導くように声が聞こえた。
躊躇いつつも彼は外へでた。そして、そのまま声を辿っていく。結果、見回りの看護師などにも突き当たることなく、するすると進んでしまう。結果着いた場所は屋上だった。

「こっちよ、こっち……」

更に声がする方へ行くと、屋上のヘリに設えられているフェンスの近く。
その向こうに黒い人影が目に付いた。

「わ、わざわざ会いに来てくれたのかい?」

「ええ。どうにかね。ただ、部屋を離れたから形を表すのが難しいの。こんな姿でごめんなさい」

「そ、そうか。うん、声だけでも聞けて嬉しいよ」
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