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私から彼女達に話した内容は

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「…………」
 一瞬教室の中が静寂に包まれる。が、すぐに滝田さんは明るい声を張り上げて言った。
「あらー。凄いわね、二人共超優秀なんじゃない」
「はい、彼女はとっても優秀でした。だからこそとっても残念です」
 その言葉を発したと同時に突然悲しみが込み上げてきた。今の今まで私は彼女の死に対して実感を持てなかった。でも、彼女の学校での振る舞いや実績などを振り返るにつけてじわじわと哀しさや寂しさが膨れ上がってきて涙が一滴こぼれ落ちる。
 それに気付いたのか滝田さんがハンカチを取り出して差し出してくれた。
「ごめんなさい。ちょっと無神経な事を聞いたわ」
 先ほどまでとは打って変わってその口調はシリアスだった。私はハンカチを有難く拝借するとそれを目に当てて、ほんの数秒ぐっと押さえつける。それによって涙も悲しみの感情も押さえつけるように。
「いえ。大丈夫です。お話続けますね。確かに成績の上では彼女の方が少し上でしたが、それで彼女をライバル視してたという事はありません」
 別に成績がどうでもいいとは思わない。でも、私自身は順位自体にあまりこだわりはないというのも事実だ。自分で設けたラインに落ちてなければそれで十分。その為に予習復習もやっている。因みにエリナは授業を聞くだけでもテストで点が取れるらしい。それを羨ましいとは思うが、だからといって彼女を亡き者にした所で得にはならない。
 寧ろ、勉強法などに悩んだ時は私が助言してもらったこともあるくらいなのに。
「そうなのね……。因みに、三位の生徒って誰だったのかしら」
「浜野しょうこっていう子です」
「浜野さんって、秋田ひなさんのグループの子じゃない? へ~、大したものね。彼女達の写真は一応手に入れてるんだけど、一番派手目な子よね」
「はい、確かに目立つ格好をしてる子ですね」
 確かに彼女の言う通り、浜野しょうこはひなのグループの中でも見た目が一番派手目な女の子だった。髪はまっキンキンの金髪。化粧も濃い。年上の彼氏がいて夜遊び歩いているのを見たなんていう噂も聞いている。
「そういう見た目だからこそ、変な色メガネで見られたくないって思うものなのかもね」
「そう、ですね」
 実はそうじゃないことを私はしっていた。でも、これ以上クラスメイトの個人情報を漏らすのも何だか後ろめたい感じがもたげてきたので、それは言わないことにする。滝田さんもそれ以上は彼女について触れず、
「後は、心当たりないかな」と聞いてきた。
「エリナを殺そうという人物ですよね。ありません」
 これは既に何度かしたやりとり。私としては首を振る以外ない。しかし、それに対して滝田さんは更に思いがけない質問をぶつけてきた。
「そう。じゃあ逆に、彼女が殺したい程恨んでいる相手。殺意を抱いている相手って心当たりないかな」
「え……」
 一瞬、同じことを聞かれたかと想って一瞬いらつきかけた。彼女【を】殺したい人物についての質問には、思い当たらないと答えを返したじゃないか、と想った。でも違う。滝田さんの質問は即ちこうだ。
 【二見エリナが殺したいと思っていた人物はいなかったか】という事だったのだ。
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