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45話 国王陛下とマグロ様 1
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「マグロ殿は面白いことに、お父様……つまり、イオン・クエイルン国王陛下に会いたいと、シグレ兄さまにも言っているのよ。私のところにも来たわね」
「イオン様……クエイルン国王陛下への謁見を望んでいるんですか?」
「そういうことね、なかなか、勇気があると思わない?」
どうだろうか……マグロ様のその判断は果たして、勇気があると言える範疇なのだろうか? 単なる命知らず、無謀にしか思えないけれど。
「勇気があるというのはどうでしょうか。イオン国王陛下に会いたいなんて……色々と無謀なだけかと思います」
私と率直な意見にネルファ王女殿下は笑っていた。ルック兄さまも微笑んでいる。
「まず、国王陛下に会ったとしても、国王陛下の一存だけでは決められないことなのよね。フォルクス公爵家を監視すると決めたのは、別にお父様ではなくて、王家全体なのだし」
「そうですよね……」
「だから、私やシグレ兄さまは勿論、お父様に言ったところで意味がないわ。まあ、お父様が首を縦に振って全面的に協力してくれるのであれば、影響力は大きいけれど……マグロ殿の意見が通るとはとても思えないし」
確かに、ネルファ王女殿下の言う通りだ。イオン国王陛下が決定権を持っているわけではないし……味方に付けることが出来れば心強い味方ではあるだろうけれど、とてもマグロ様の味方になるとは思えなかった。
「ネルファ王女殿下、マグロ殿はそれでは……今頃は国王陛下に謁見をしている頃合いでしょうか?」
「そうですね、ルック様。時間的にもこの後、しばらくして謁見になると思われますわ」
「なるほど、そういうことですか。と、いうことだレミーラ。私達は生温かく見守るとしようじゃないか」
「ルック兄さま……そうですね……」
ネルファ王女殿下だけでなく、ルック兄さまもいたずら心丸出しの笑みを零していた。私は苦笑いしか出来ないけれど……マグロ様も大変ね。このアイデアもシエナ嬢のものなのかしら? いや、それはないか……。
--------------------
【マグロ・フォルクス公爵視点】
「マグロ・フォルクス公爵、こちらでお待ちください……国王陛下がお会いになられます」
「畏まりました、ヴァイス大臣」
ジトノール・ヴァイス大臣参謀はそう言って、僕を謁見の間の前で待機させていた。いよいよ、イオン国王陛下に謁見が叶うのだ……これもシグレ王子殿下の計らいだ。僕ほどの立場と言えども、王家の承諾がないと簡単に国王陛下には会えないからな。
それには色々な理由があったりするんだけど。その一つがイオン国王陛下は、レミーラや僕と同じくらい……いや、もっと幼く見えることが挙げられるだろう。威厳という意味合いで、イオン国王陛下は他国の貴族ともなかなか会わないことが多い。
そういう意味ではフォルクス家の当主である僕は特別待遇を受けているんだ……必ず、国王陛下を味方に付けてやる。そうすれば……僕が自由になれる可能性は飛躍的に高まると言えるだろう。
謁見の時……緊張の一瞬の幕開けであった。
「イオン様……クエイルン国王陛下への謁見を望んでいるんですか?」
「そういうことね、なかなか、勇気があると思わない?」
どうだろうか……マグロ様のその判断は果たして、勇気があると言える範疇なのだろうか? 単なる命知らず、無謀にしか思えないけれど。
「勇気があるというのはどうでしょうか。イオン国王陛下に会いたいなんて……色々と無謀なだけかと思います」
私と率直な意見にネルファ王女殿下は笑っていた。ルック兄さまも微笑んでいる。
「まず、国王陛下に会ったとしても、国王陛下の一存だけでは決められないことなのよね。フォルクス公爵家を監視すると決めたのは、別にお父様ではなくて、王家全体なのだし」
「そうですよね……」
「だから、私やシグレ兄さまは勿論、お父様に言ったところで意味がないわ。まあ、お父様が首を縦に振って全面的に協力してくれるのであれば、影響力は大きいけれど……マグロ殿の意見が通るとはとても思えないし」
確かに、ネルファ王女殿下の言う通りだ。イオン国王陛下が決定権を持っているわけではないし……味方に付けることが出来れば心強い味方ではあるだろうけれど、とてもマグロ様の味方になるとは思えなかった。
「ネルファ王女殿下、マグロ殿はそれでは……今頃は国王陛下に謁見をしている頃合いでしょうか?」
「そうですね、ルック様。時間的にもこの後、しばらくして謁見になると思われますわ」
「なるほど、そういうことですか。と、いうことだレミーラ。私達は生温かく見守るとしようじゃないか」
「ルック兄さま……そうですね……」
ネルファ王女殿下だけでなく、ルック兄さまもいたずら心丸出しの笑みを零していた。私は苦笑いしか出来ないけれど……マグロ様も大変ね。このアイデアもシエナ嬢のものなのかしら? いや、それはないか……。
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【マグロ・フォルクス公爵視点】
「マグロ・フォルクス公爵、こちらでお待ちください……国王陛下がお会いになられます」
「畏まりました、ヴァイス大臣」
ジトノール・ヴァイス大臣参謀はそう言って、僕を謁見の間の前で待機させていた。いよいよ、イオン国王陛下に謁見が叶うのだ……これもシグレ王子殿下の計らいだ。僕ほどの立場と言えども、王家の承諾がないと簡単に国王陛下には会えないからな。
それには色々な理由があったりするんだけど。その一つがイオン国王陛下は、レミーラや僕と同じくらい……いや、もっと幼く見えることが挙げられるだろう。威厳という意味合いで、イオン国王陛下は他国の貴族ともなかなか会わないことが多い。
そういう意味ではフォルクス家の当主である僕は特別待遇を受けているんだ……必ず、国王陛下を味方に付けてやる。そうすれば……僕が自由になれる可能性は飛躍的に高まると言えるだろう。
謁見の時……緊張の一瞬の幕開けであった。
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