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29話 レミーラとマグロ様 2
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【シエナ公爵令嬢視点】
部屋の隅で待機していたところ、マグロと私のところに近づいて来る人物の姿があった。レミーラ嬢とその兄の賢人ルック殿だ。近づいて来る意味合いは分かるけれど、どうせロクなことにはならないのが分かっている。早々に挨拶だけして帰った方が良さそうね。
最悪、誕生日プレゼントだけは後で送っておけば問題ないだろうし。メッセージカードを添えてね。
「れ、レミーラじゃないか……!」
「マグロ様……本日は誕生パーティーに参加いただき、誠にありがとうございます」
「い、いや、こちらこそ……誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
「こ、これで、君も18歳になったんだね! いやぁ、月日が経つのは本当に早いな~!」
「そうでございますね」
まるでどこかで発掘された古代兵器が話しているかのような口ぶり……つまり機械的過ぎて、全然感情が籠っていなかった。必死で明るさをアピールしているマグロとは違って、レミーラ嬢は完全に冷めているみたいだ。彼女もさっさとマグロとの会話を切り上げたいのだろう。
じゃあ、さっさと向こうに行ってくれないかしら……さっきから、他の貴族の視線が痛すぎるんだけど。今回は、ヒュンケル家に懇意な貴族ばかりということもあってか、前のパーティーよりもはるかに視線が厳しく感じる。
マグロはこの視線に気付いているのかは分からないけれど、婚約者なら、さっさと帰りたい私の気持ちに気付いて欲しいものだわ!
「シエナ令嬢、少しそわそわと落ち着きがないようですが……大丈夫ですか?」
「ルック様……ええ、大丈夫ですわ。お気になさらずに。レミーラ嬢へのプレゼントに関しては後日、お送りさせていただきますね」
「それはありがとうございます。我が妹も喜ぶことでしょう」
「ありがとうございます、シエナ様」
「い、いいえ……お気になさらずに……」
この無駄に丁寧なやり取りが、私の神経を逆撫でしていた。思わず眉をひそめて歯ぎしりしてしまいそうになる。二人はおそらく、私達の態度を見て楽しんでいるのだろう。性格の悪いことだわ……マグロは一体、どんな思いなのかしら?
「よし……後はしっかりと告白をすれば、大丈夫だ。僕の心はレミーラの中に刻まれる……」
「マグロ……?」
「えっ、シエナ? なんだい?」
「いえ、なんでもないわ……」
なにやらブツブツと言っていたようだけれど……とても気持ちの悪いことを考えていると感じたのは気のせいかしら? なんだかマグロがとても危険なことを言い出さないか不安になってきた……。
「あっ、シグレ様!」
「えっ……?」
そんな時、まさかのシグレ王子殿下が大食堂内に現れた。真っ先に声を掛けたのはレミーラ嬢だ。見たところ、他の王族もいらっしゃるし、早急に帰るわけにはいかなくなった……頼むからマグロ、こんな状態で突拍子もない発言だけはしないでよね……お願いだから。
部屋の隅で待機していたところ、マグロと私のところに近づいて来る人物の姿があった。レミーラ嬢とその兄の賢人ルック殿だ。近づいて来る意味合いは分かるけれど、どうせロクなことにはならないのが分かっている。早々に挨拶だけして帰った方が良さそうね。
最悪、誕生日プレゼントだけは後で送っておけば問題ないだろうし。メッセージカードを添えてね。
「れ、レミーラじゃないか……!」
「マグロ様……本日は誕生パーティーに参加いただき、誠にありがとうございます」
「い、いや、こちらこそ……誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます」
「こ、これで、君も18歳になったんだね! いやぁ、月日が経つのは本当に早いな~!」
「そうでございますね」
まるでどこかで発掘された古代兵器が話しているかのような口ぶり……つまり機械的過ぎて、全然感情が籠っていなかった。必死で明るさをアピールしているマグロとは違って、レミーラ嬢は完全に冷めているみたいだ。彼女もさっさとマグロとの会話を切り上げたいのだろう。
じゃあ、さっさと向こうに行ってくれないかしら……さっきから、他の貴族の視線が痛すぎるんだけど。今回は、ヒュンケル家に懇意な貴族ばかりということもあってか、前のパーティーよりもはるかに視線が厳しく感じる。
マグロはこの視線に気付いているのかは分からないけれど、婚約者なら、さっさと帰りたい私の気持ちに気付いて欲しいものだわ!
「シエナ令嬢、少しそわそわと落ち着きがないようですが……大丈夫ですか?」
「ルック様……ええ、大丈夫ですわ。お気になさらずに。レミーラ嬢へのプレゼントに関しては後日、お送りさせていただきますね」
「それはありがとうございます。我が妹も喜ぶことでしょう」
「ありがとうございます、シエナ様」
「い、いいえ……お気になさらずに……」
この無駄に丁寧なやり取りが、私の神経を逆撫でしていた。思わず眉をひそめて歯ぎしりしてしまいそうになる。二人はおそらく、私達の態度を見て楽しんでいるのだろう。性格の悪いことだわ……マグロは一体、どんな思いなのかしら?
「よし……後はしっかりと告白をすれば、大丈夫だ。僕の心はレミーラの中に刻まれる……」
「マグロ……?」
「えっ、シエナ? なんだい?」
「いえ、なんでもないわ……」
なにやらブツブツと言っていたようだけれど……とても気持ちの悪いことを考えていると感じたのは気のせいかしら? なんだかマグロがとても危険なことを言い出さないか不安になってきた……。
「あっ、シグレ様!」
「えっ……?」
そんな時、まさかのシグレ王子殿下が大食堂内に現れた。真っ先に声を掛けたのはレミーラ嬢だ。見たところ、他の王族もいらっしゃるし、早急に帰るわけにはいかなくなった……頼むからマグロ、こんな状態で突拍子もない発言だけはしないでよね……お願いだから。
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