上 下
18 / 59

18話 マグロ様の解体ショー 1

しおりを挟む
 マグロ様は私達の視線の攻撃に晒せられ、非常に取り乱していた。

 私以外にもシグレ様やルック兄さま、ドレーク兄さまからの視線を浴びせられているのだから、仕方ないと言えると思う。それに加えて、自分の味方であるはずのシエナ令嬢からも敵対の視線を浴びせられているのだから……。


 シグレ様や兄さま達の質問に対して、真摯に向き合わなかった結果だから自業自得ね。


「マグロ殿……自らの婚約者のせいにしてしまうのは、人格を疑われても仕方ないと思うぞ?」

「し、しかし……シグレ王子殿下! これは紛れもない事実であって……!」


 周囲の視線は彼の言葉にさらに厳しくなっていく。まあ、当たり前ではあるんだけれどね。私も彼と婚約者であったことが信じられないというか、信じたくないっていう気持ちになっていくし……。ああ、大きな穴が開いていればすぐさま入ってしまいたい気分になっているわ……。


「事実とは言っても、シエナ嬢が言ったことはあくまでも提案の範疇なのだろう?」

「そ、それは……!!」


 シグレ様の鋭い突っ込みにマグロ様は、次の言葉が出て来ないようだった。ルック兄さまやドレーク兄さまは、計画通り! とばかりに含み笑いをしている。おそらくは私の為ではあるんだろうけれど、シグレ第五王子殿下でも利用するしたたかさは凄いものだった。

 ああ……でも、シグレ様が私のことを考えて行動してくれなければ、こんなことは起きなかったわけか。そう考えると、兄さま達はあくまでも誘導したに過ぎないのかもしれない。逆に言えば法律に触れないギリギリのところを攻めている感じ……やっぱり、兄さま達は怖いわ。


「シエナ嬢はどうなのだ?」

「はい……王子殿下。私はあくまでも第二夫人に彼女……レミーラ嬢を推薦しただけですわ。まあ、多少、強引に行った方が良いとは進言しましたが。あくまでもその後は、マグロの行動の範疇です」

「なるほど……そういうことらしいが、マグロ殿。何か言いたいことはあるか?」

「うっ……あ、ありません……確かに宮殿前で彼女に第二夫人になるよう強要したのは、事実であります……」


 マグロ様は自分のやったことに関して素直に認めているようね。なんだか、解体ショーを見ているような気がするけれど……周囲に居る関係ない貴族達も楽しんで聞き耳を立てているようだし。マグロ様は公爵様だし、今後の信頼関係に影響してくるかもしれないわね。

 私としてはシエナ令嬢が勝ち誇っているのは納得できないけれど……シグレ様はそこも見逃さなかった。

「シエナ嬢……まさかとは思うが、其方に罪がないなどと思っていないだろうな?」

「えっ、シグレ王子殿下……?」


 急な方向転換にシエナ令嬢は対応し切れていなかった。いや、まさか自分が無傷で済むと思っていたわけじゃないでしょう……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

ゼラニウムの花束をあなたに

ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

処理中です...