上 下
10 / 59

10話 考え方がズレている公爵様 2

しおりを挟む
 何から伝えればいいのだろうか……私の頭は混乱すると同時に、猛烈に試行錯誤を繰り返していた。目の前に居るマグロ・フォルクス公爵に理解してもらえるように。


「シエナとの仲は、以前にも言った通り変えることができないんだ。その点については、本当に申し訳なく思っているよ」

「変えることが出来ないというか……確か、お二人は婚約がお済だったと伺っていますが……」


 正式に婚約成立しているかはともかくとして、そのような関係になるのは間違いないはず。先ほど彼は、第二夫人がどうとか言っていたように思えるけど……。


「そうなんだよ。彼女との仲は変えられない……つまり、シエナが第一夫人になることは変わらないんだ」

「はあ……それは、おめでとうございます……」


 どうでも良いことだけれど、とりあえず褒め言葉を述べておくとしよう。婚約から結婚自体はめでたいことではあるしね。

「ただ……僕の心情としては、この2か月の間、僕のことを想って苦しんでいた君を放っておくのは、あまりに心苦しいんだ……!」


 なんだか話が迷走しているような……なぜだか、私がマグロ様のことを想って悩み続けていることが前提の発言だし。マグロ様ってこんなに自身過剰な人だったかしら? もう少し謙虚なイメージだったのだけれど。なんだか、彼のイメージがどんどん悪くなっていくわね……。


「だから、レミーラ! 僕の第二夫人としての生を……共に歩んでほしい!!」

「ま、マグロ様……!」

「レミーラ……!!」


 感動的な会話のように聞こえるけれど、実際はそんなこと全然なくて……はい。


「謹んでお断り申し上げます、マグロ様」

「えっ……ど、どういうことだい……レミーラ?」


 マグロ様は意味が分からないといった表情になっていた。自分の告白が成功すると本気で思っていたのかしら? すだとするなら、とてもお気楽だとしか言いようがないわね。


「マグロ様……あなたはそれでも、公爵を引き継いだ身なのですかな?」

「レミーラの元婚約者のこんな情けない姿は見たくありませんでしたな……」

「あ、あなた方は……!?」


 私が乗るはずだった馬車から出て来たのは、ルック兄さまとドレーク兄さまが現れた。まったく過保護というかなんというか……心配だからという理由で付いて来てくれてたのよね。嬉しいけれど、恥ずかしくもある。

 位置取りとしては偶然なんだけれど、先ほどまでのマグロ様の言葉は全部兄さま達に筒抜けだったはず……マグロ様の顔中に現れた汗が、それを物語っていた。

 マグロ・フォルクス公爵様は完全に、兄さま達に恐怖していると言える状況だった……。相手は一応、公爵様だし、兄さま達が鉄拳制裁に訴えることは考えられないけれど、マグロ様は精神を保てない状態にされるのではないか。そんな予感が私の心の中をよぎっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

ゼラニウムの花束をあなたに

ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

処理中です...