公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

9話 考え方がズレている公爵様 1

【マグロ・フォルクス公爵視点】


「はっ……？　マグロ様、どういうことでしょうか……？」


　レミーラはかなり焦っているように感じられた。それは仕方ないことだろう、僕は公爵家……本来であれば、周りに護衛を初めとした付き人が居ないなんてあり得ないんだから。まず、そのことに彼女は驚いているんだと思う。


　今、僕は彼女に本気であることを伝える為に、付き人を遠ざけている。今、暗殺者に狙われようものなら僕は何も出来ずに死んでしまうだろう。僕は公爵だ……公爵を失った場合、我が王国に与える損害は相当なものになるだろう。

　当然、父上など、フォルクス家の人間が王家に直訴し、僕が死んでしまった状況を詳しく聞くはずだ。議会も本格的に動きだし、暗殺者に拷問を加え、首謀者を割り出すだろう。僕の死には国民を含め、たくさんの人達が参列し……国家は一丸となって、僕の仇を討つに決まっている。

　もしも首謀者が、他国の要人であった場合、事態はさらに大きく展開するだろう。下手をすれば、戦争にだってなるかもしれない……ああ、僕はそんな存在なんだ……。


「あの、マグロ様。大丈夫ですか……？」


　しまった、話がそれてしまったな。レミーラが心配したような表情で僕を見ている。急に彼女の馬車の前に現れたのは失礼かとは思ったが、レミーラの表情を見る限り、まだまだ僕への未練は残っているようだな。


　まあ、僕は王国を支えるフォルクス家の当主だからな。当然と言えるか……彼女もシエナとの関係を改めれば、婚約解消はしたくない、と言っていたくらいだし。

「あの……何かご用でございますか？」

「ああ、用件としては……さっきも言ったけど、君を迎えに来たんだよ」

「……」


　レミーラは無言になっている……僕の言葉が余程、衝撃的だったのかな？　シエナも確か言っていたな、多少は強引に言った方が良いって……そうだよな、彼女とは婚約関係にあったんだし、いきなり抱き着いてキスをするくらいは大丈夫か？　まあ、僕は公爵だし……よし、一気に試してみようかな。

「レミーラ！」

「あの……大声はやめてもらえませんか？　耳に響きますし……近所迷惑ですよ？」

「な、なに……？」


　なんだ……？　レミーラのこの他人を見るような目つきは……。僕は元婚約者なんだぞ？　もっと、嬉しがったり、再会の喜びで涙を流しても良いんじゃないのか……！？

「れ、レミーラ……何か、おかしくないかな……？」

「えっ？　何がですか……？」


　やっぱりおかしい……レミーラの態度は明らかにおかしかった。本当に他人に対する態度に見えるぞ……。やっぱり、強引にキスした方が良かったのかな？　ええと、シエナの助言は他に何があったっけ？