上 下
8 / 59

8話 突然の再会 2

しおりを挟む
「マグロ・フォルクス公爵……!? どうしてここに……?」


 私は驚きの余り、マグロ様に対して叫んでいた。信じられない……いえ、宮殿の入り口に立っているのも驚きだけれど、私の馬車の陰に隠れるようにして立っているのが、どこか不気味だったのだ。彼は一体、こんなところで何をしているのだろう……?

 見たところ、付き人が居るようにも見えないし……離れるように命令しているのかな?


「マグロ・フォルクス公爵なんて、随分と他人行儀じゃないかレミーラ。2か月くらい前までは婚約関係だったのにさ」

「そ、それはそうかもしれませんが……」

「そうだよ、僕と君は婚約関係にあったんだから。そんな他人行儀にしなくてもいいだろう? 前みたいにマグロと呼んで欲しいな」

「は、はい……マグロ様……」

「ああ、良い響きだ……」


 何か一人で感動しているように思える。一体、何がしたいのかしら……やっぱり不気味だわ。


「それで、一体何の御用でしょうか?」

「ああ、済まない。用件を言うのを忘れていたな……レミーラがこの2か月間、非常に苦しんでいたのではないかと思ってな」

「悲しむ……それって、つまり……」


 婚約解消をした私が、マグロ様を想い続けて悲しみ続けている、ということを意味しているのかしら? まあ、確かに最初の方は間違いではなかったけれど……。

 マグロ様がシエナ公爵令嬢を優先していることは非常に残念だったし、あれから彼女と別れたとも聞いていない。それどころか、二人は婚約関係になるという情報まであるくらいだ。それに伴って、私とマグロ様の婚約解消は貴族の間で悪い噂として流れてしまっているし。

 マグロ様は公爵という立場だから、直接的な噂話の対象にはならないけれど、伯爵令嬢でしかない私はそうはいかなかった。この2か月間のパーティーへの出席はなるべく自粛する必要が出て来るほどだったのだし。目の前に居る彼はそんなことは気付いていないのだろう……なんだか、そんな気がしてしまう。

「レミーラ! 君の悲しみを享受できなかった僕を許してくれ……! 君の悲しみに、僕を想う気持ちがどれだけ強いのか、気付けなかった……本当に僕は最低だよっ……!」

「は、はあ……?」


 マグロ様はテンションが高くなっている。その状態に私は付いて行くことが出来なかった。彼は一体、何が言いたいのだろうか? 私がこの2か月間、彼のことを想い続けて悲しみに暮れていた……そんな風に思っているのかしら? まさかとは思いたいけれど、マグロ様の態度はそんな風に見えてしまう。

「あの、マグロ様? ご用件をお伺いしてもよろしいですか……?」


 私はかなり引き気味で訪ねた。相手は元婚約者と言っても公爵様だ。あまり無下には出来なかった。


「君を迎えに来たんだ……僕は君を第二夫人に迎えようと思っているんだ!」

「はっ……?」


 第二夫人……? 聞き間違えかしら……彼は何を言ってるんだろうか……。
しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

【完結】大好きな貴方、婚約を解消しましょう

凛蓮月
恋愛
大好きな貴方、婚約を解消しましょう。 私は、恋に夢中で何も見えていなかった。 だから、貴方に手を振り払われるまで、嫌われていることさえ気付か なかったの。 ※この作品は「小説家になろう」内の「名も無き恋の物語【短編集】」「君と甘い一日を」より抜粋したものです。 2022/9/5 隣国の王太子の話【王太子は、婚約者の愛を得られるか】完結しました。 お見かけの際はよろしくお願いしますm(_ _ )m

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

処理中です...