上 下
7 / 19

7話 話し合い 1

しおりを挟む
「オデッセイ様、お久しぶりでございますね」

「おお、エルミナ……久しぶりだな。元気そうで何よりだ」


 私は応接室に入り、オデッセイ様と向き合った。ランバーを同席させるわけにはいかないので、彼は外で待機させている。部屋に戻るように言ったけれど断られたから。ちなみに、お父様も応接室に入っている。


「オデッセイ様……本日はお越しいただき、誠にありがとうございます」

「ああ、挨拶はそのくらいでいいだろう、ザラス・ジョウストン子爵。無駄話をしに来たのではないのだ。それよりも……私の用件については、ちゃんとエルミナに伝わっているのか?」

「は、はい……! もちろんでございます!」

「なら良い」

「……」


 オデッセイ様に「エルミナ」と呼び捨てにされる謂れはなかった。もう、何の関係もない存在なのだから……イリヤ姉さまと付き合っているとは言っても、私からすれば他人と変わらない。彼に呼び捨てにされるだけでも腹が立ってしまう。でも、その感情は出来る限り見せないように振る舞った。


「用件は聞いているな? エルミナ。早速で悪いが実は、お前の姉のイリヤとの関係性が悪くなっているのだ」

「はい、伺っておりますが……それがどうかしたのですか?」

「どうかしたのか、だと? エルミナ……本気で言っているのか?」

「本気も何も……オデッセイ様がどのような回答を望んでいる望んでいるのか分からないのですが……」


 本当に分からない……彼は一体、何を望んでいるんだろう? オデッセイ様は私の返答に舌打ちをしていた。

「ちっ、エルミナ……イリヤのあの強欲振りはどういうことだ? 私は聞いていないぞ」

「強欲振り……? まあ、確かに姉のイリヤはわがままなところがあると思ってはいましたが……」


 そんなに強欲なのかしら? その辺りは定かではないけれど、オデッセイ様と婚約することになって、本性を現したのかもしれないわね。

「なるほど、オデッセイ様。そういった理由で、イリヤとの仲が悪くなっているということですな? これは、大変申し訳ないことでございます!」

「お父様……?」


 お父様は信じられないことに、オデッセイ様に謝罪を開始したのだ。そんなことをすれば、向こうの思うつぼなのに……。

「謝罪するのは良いことだ、ザラス殿。それでは、貴殿はどうすべきか……分かっているな?」

「は、はい……ただちに、イリヤに是正するように厳しく伝えますので……!」

「そうではないだろう」

「はい……? で、では、どのようにしろとおっしゃるのですか?」


 お父様の質問に、オデッセイ様は即答した。

「もう一度、エルミナと婚約をしてやる。あんなに強欲な女よりは、エルミナの方がまだマシだからな。まったく……子爵令嬢にはまともな女は居ないのか」

「も、申し訳ありません……オデッセイ様……!」

「えっ、えっ?」


 まったく意味の分からない会話に、私は反論することも出来なかった。一体、目の前では何が起こっているのだろうか? 私がそんなことを考えていると、応接室の扉が開かれた……中に入って来る人物が一人。

「姉さま……」

「ランバー……?」


 応接室の中に入って来たのは、弟のランバーだった。タイミング的に考えて、中での会話は全て外に漏れていたでしょうね……何かを思って入って来たのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います

みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」 ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。 何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。 私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。 パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。 設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m

努力をしらぬもの、ゆえに婚約破棄であったとある記録

志位斗 茂家波
ファンタジー
それは起きてしまった。 相手の努力を知らぬ愚か者の手によって。 だが、どうすることもできず、ここに記すのみ。 ……よくある婚約破棄物。大まかに分かりやすく、テンプレ形式です。興味があればぜひどうぞ。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる

黒木  鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました

小倉みち
恋愛
 公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。  周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。  婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。  家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。  どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。  代わりに、彼らの味方をする者は大勢。  へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。  そんなある日、ふと思った。  もう嫌だ。  すべてが嫌になった。  何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。  表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。  当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。  誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。  こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。  

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

婚約者が私の弟と旅行に行くというので私は婚約破棄を告げる。後悔しても遅いわよ。旅行先で婚約破棄した後元婚約者はあっけなく死んだ。ざまぁwww

甘いからあげ
ファンタジー
 「婚約破棄するわよ。後で後悔しても遅いのよ」  「ああ、それでも行きたい」  婚約者が私の弟と旅行に行くと言うので止めたけれど、止まりやしない。  婚約破棄を持ち掛けてもなんのその。婚約者は止まらない。  結局家族全員で行く事に。  旅行先で婚約破棄した後、あっけなく死んだ元婚約者。  弟も家族も殺され、恨みを持ったまま死んだ私はチートスキルチートステータスを得て生き返る。  小細工なしのチートスキル結界無効・気力魔力100倍・全攻撃魔法適正Sランクの圧倒的殲滅 チートスキルチートステータスでクソ外道どもに復讐する。  一人残らず殺してやるわ、覚悟なんてできなくても構わないわよ。泣いて叫んでも殺すんだから。

処理中です...