3 / 19
3話 幼馴染の元へ 2
しおりを挟む
弟のランバーの提案を受け、私は幼馴染でもあるローレック様に連絡を取ってみた。公爵令息という身である為に、流石にすぐには会えないと踏んでいたのだけれど……。
「久しぶりだな、エルミナ……こうして会えるのは何時以来だろうか」
「お久しぶりでございます、ローレック様……詳しい期間は不明ですが、年単位になるかと存じます」
「そうか……もう、そんなになるのだな」
「左様でございますね」
意外なほど簡単にローレック様に会うことが出来た。彼は昔と変わらない態度で私と接してくれている。立場上、私が敬語を話すことにはなっているけれど。
「突然の訪問、失礼致しました……お受けいただき感謝いたします」
「やめてくれ、エルミナ。私と君の仲じゃないか」
「そう言っていただき、光栄でございます」
ハミルトン家に私はお邪魔させていただいているけれど、ローレック様は本当に歓迎してくれていた。これだけでも涙が出そうな程に嬉しい。提案してくれたランバーには感謝しないといけないわね。
「それで……本日の用件としては、どういったことだろうか? 単に幼馴染の顔を拝見しに来た……というわけではなさそうだが」
「さ、左様でございますね……ええと……」
用件を事前に伝えてはいなかったけれど、ローレック様は私の顔色については看破しているようだった。彼の前では嘘は吐けそうもないわね。
「ローレック様は私が婚約をしていたことはご存知でいらっしゃいますか?」
「ああ、そういえば……確か、侯爵家と婚約を果たしたのは聞いているが。嬉しかった反面、残念な気持ちも生まれていたよ」
「あ、ありがとうございます……ローレック様……」
おそらくは深い意味はないのだろうけれど、今の私は上手く流すことが出来ないでいた。真面目に捉えてしまい、恥ずかしさが込み上げてくる。まったく……私って駄目ね……まあいいわ。
「ええと……オデッセイ・ルインバーグ侯爵令息と婚約をしておりました」
「ほう、なるほど……オデッセイ殿とか」
「はい、子爵令嬢でしかない私との縁談を受けていただき、本当に感謝の言葉もありませんでしたが……」
「ふむ、過去形になっているということは、つまりはそういうことか」
私は涙が出て来るのを必死で堪えながら頷いた。
「はい……婚約破棄をされてしまいまして……」
「婚約破棄だと……?」
予想外の言葉が出て来たと感じたのか、ローレック様は「婚約破棄」という言葉に強く反応していた。関係のない彼に話すのは気が引けることではあるけれど……今の私はそのくらい追い詰められていたのだ。ランバーの提案を無駄にするわけにもいかないしね。
「実は……」
私は自分の身に起こったことの全てを、ローレック様に話した。彼は冷静に聞いているような素振りだったけれど、私が話し終える頃には明らかに表情を変化させていた。眉間のしわがその感情を示しているようだ。
「久しぶりだな、エルミナ……こうして会えるのは何時以来だろうか」
「お久しぶりでございます、ローレック様……詳しい期間は不明ですが、年単位になるかと存じます」
「そうか……もう、そんなになるのだな」
「左様でございますね」
意外なほど簡単にローレック様に会うことが出来た。彼は昔と変わらない態度で私と接してくれている。立場上、私が敬語を話すことにはなっているけれど。
「突然の訪問、失礼致しました……お受けいただき感謝いたします」
「やめてくれ、エルミナ。私と君の仲じゃないか」
「そう言っていただき、光栄でございます」
ハミルトン家に私はお邪魔させていただいているけれど、ローレック様は本当に歓迎してくれていた。これだけでも涙が出そうな程に嬉しい。提案してくれたランバーには感謝しないといけないわね。
「それで……本日の用件としては、どういったことだろうか? 単に幼馴染の顔を拝見しに来た……というわけではなさそうだが」
「さ、左様でございますね……ええと……」
用件を事前に伝えてはいなかったけれど、ローレック様は私の顔色については看破しているようだった。彼の前では嘘は吐けそうもないわね。
「ローレック様は私が婚約をしていたことはご存知でいらっしゃいますか?」
「ああ、そういえば……確か、侯爵家と婚約を果たしたのは聞いているが。嬉しかった反面、残念な気持ちも生まれていたよ」
「あ、ありがとうございます……ローレック様……」
おそらくは深い意味はないのだろうけれど、今の私は上手く流すことが出来ないでいた。真面目に捉えてしまい、恥ずかしさが込み上げてくる。まったく……私って駄目ね……まあいいわ。
「ええと……オデッセイ・ルインバーグ侯爵令息と婚約をしておりました」
「ほう、なるほど……オデッセイ殿とか」
「はい、子爵令嬢でしかない私との縁談を受けていただき、本当に感謝の言葉もありませんでしたが……」
「ふむ、過去形になっているということは、つまりはそういうことか」
私は涙が出て来るのを必死で堪えながら頷いた。
「はい……婚約破棄をされてしまいまして……」
「婚約破棄だと……?」
予想外の言葉が出て来たと感じたのか、ローレック様は「婚約破棄」という言葉に強く反応していた。関係のない彼に話すのは気が引けることではあるけれど……今の私はそのくらい追い詰められていたのだ。ランバーの提案を無駄にするわけにもいかないしね。
「実は……」
私は自分の身に起こったことの全てを、ローレック様に話した。彼は冷静に聞いているような素振りだったけれど、私が話し終える頃には明らかに表情を変化させていた。眉間のしわがその感情を示しているようだ。
0
お気に入りに追加
2,630
あなたにおすすめの小説
パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います
みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」
ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。
何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。
私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。
パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。
設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m
婚約者が私の弟と旅行に行くというので私は婚約破棄を告げる。後悔しても遅いわよ。旅行先で婚約破棄した後元婚約者はあっけなく死んだ。ざまぁwww
甘いからあげ
ファンタジー
「婚約破棄するわよ。後で後悔しても遅いのよ」
「ああ、それでも行きたい」
婚約者が私の弟と旅行に行くと言うので止めたけれど、止まりやしない。
婚約破棄を持ち掛けてもなんのその。婚約者は止まらない。
結局家族全員で行く事に。
旅行先で婚約破棄した後、あっけなく死んだ元婚約者。
弟も家族も殺され、恨みを持ったまま死んだ私はチートスキルチートステータスを得て生き返る。
小細工なしのチートスキル結界無効・気力魔力100倍・全攻撃魔法適正Sランクの圧倒的殲滅
チートスキルチートステータスでクソ外道どもに復讐する。
一人残らず殺してやるわ、覚悟なんてできなくても構わないわよ。泣いて叫んでも殺すんだから。
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜
秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』
◆◆◆
*『お姉様って、本当に醜いわ』
幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。
◆◆◆
侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。
こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。
そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。
それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる